4 / 5
4話
しおりを挟む
◆◇◆◇◆◇
広い広い廊下をスタスタと進むテラー。通り道にはいくつもの部屋や中庭がある。…………。この廊下だけで孤児院の何倍あるんだろう……。
「あ~。テラ~」
頭上からのほほんとした声が聞こえてくる。……ん?頭上?
「わぁっ……!」
──人が……浮いてる………。
「はぁ。……トト、怖がらせないでください。」
テラーが落ち着かせるようにトントンとキキの背中を叩く。
「ごめんて~。……てゆーか珍しいねぇ。てらーが人に触れるどころか、抱っこだなんて」
「………ふん」
「ねえねぇ。お名前なんて言うのー?僕はトト。よろしくねぇ。」
キキと同い年くらいの男の子だ。テラーと同じように色白で、薄紫の髪と瞳。タレ目で涙ボクロがある。
───「わたし、キキです……。」
「…、!キキ!トトと似てるねぇ。可愛いねぇ。」
キキに触れようとした手をテラーが振り払う。一瞬むすっとしたトトだったが、すぐにのほほんとした顔に戻る。
───「あ、そう言えば……。アイルは緊急で外いっちゃったよぉ」
「……緊急?」
テラーの冷たい声で、周りの空気がピリつく
「やだなぁ大した用じゃないよー?またアマザル達が荒れてるみたいー」
───「……ふぅ。仕方ない。今日は会えそうもないのでお風呂とご飯にしましょうか。疲れてるでしょう?」
「…ん!それなら僕に任せてよぉ。」
トトが不意をついてキキに触れると、大きなシャボン玉がキキを取り囲んだ。
「な、なに…!?」
ぷかぷかと浮かぶキキをみて、テラーはトトを睨む。このシャボン玉の中に入れてしまえば、テラーでも簡単にはキキに触れられなくなる。
「まあまあ心配しないでよぉ。僕に任せてっ」
にやっと笑うトトは、言い終わらないうちに浴場へと移動し始めた。キキの入ったシャボン玉は、ぷかぷかと自動でトトの後ろにつく。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「さあさあ。まずはお風呂だねぇ。そこの人達、キキをよろしくねぇ。」
浴場につくと、すでに数人のメイドさんが集まっていた。
彼女たちはトトが外に出たのを確認し、手際よくキキの湯浴みを始めた。
鳥の巣のように絡まっていた髪はいつの間にかさらっさらに変わり、かさかさして汚れていた肌はつるっつるになっていた。
………魔法だ。これはもう魔法だ……。こわい…すごい…。
─────キキが気づいた頃には、自分はぴかぴかの状態で湯船に浸かっていた。
◇◆◇◆◇◇◆◇
───「な……なんだこれ……」
湯船から上がったキキは綺麗に体を拭いてもらい、髪もオイルまでつけてさらさらに乾かしてもらった。
………そこまではよかった。ほんとうにそこまでは。それはそれは素晴らしかった。
─────「……んーーー。着ぐるみ?」
私に用意されていた部屋着は、少しぶかぶかでもこもこした、くまのお洋服だった。
いや、正確に言えばその服だけではなかったよ?他にも種類はあった。あったよ?でも……
「くま、うさぎ、ペンギン、しろくま、ひつじ、りす、ねこ………」
「普通のはないんかいっ」
ずらっと並べられた多種類の動物達を見ていくうちに頭が痛くなり、結局無難なくまを選んだ。
歩きにくい服でぺたぺたと外に出る。………これペンギンが1番合ってたんかも……。
◆◇◆◇◆◇
───「あぁ~!かあいいねぇ…!なんてかわいいんだろ……。天使……。」
外に出た瞬間、トトがぎゅっと抱きついてきた。……うぅ、苦しい。
「ご飯食べに行こうねぇ。ぺたぺた歩いてるの可愛かったし、今度は歩いて行こうかぁ~」
………み、見られてたのか…。てか絶対この人セレクトだなこれ……。
ひつじバージョンでお出迎えしてきたトトに冷たい視線を送るキキ。
「背も同じくらいだし~僕達双子みたいでかあいいねぇ」
「……はぁ。」
ぺたぺたと歩きながら、キキは考える事をやめた。
広い広い廊下をスタスタと進むテラー。通り道にはいくつもの部屋や中庭がある。…………。この廊下だけで孤児院の何倍あるんだろう……。
「あ~。テラ~」
頭上からのほほんとした声が聞こえてくる。……ん?頭上?
「わぁっ……!」
──人が……浮いてる………。
「はぁ。……トト、怖がらせないでください。」
テラーが落ち着かせるようにトントンとキキの背中を叩く。
「ごめんて~。……てゆーか珍しいねぇ。てらーが人に触れるどころか、抱っこだなんて」
「………ふん」
「ねえねぇ。お名前なんて言うのー?僕はトト。よろしくねぇ。」
キキと同い年くらいの男の子だ。テラーと同じように色白で、薄紫の髪と瞳。タレ目で涙ボクロがある。
───「わたし、キキです……。」
「…、!キキ!トトと似てるねぇ。可愛いねぇ。」
キキに触れようとした手をテラーが振り払う。一瞬むすっとしたトトだったが、すぐにのほほんとした顔に戻る。
───「あ、そう言えば……。アイルは緊急で外いっちゃったよぉ」
「……緊急?」
テラーの冷たい声で、周りの空気がピリつく
「やだなぁ大した用じゃないよー?またアマザル達が荒れてるみたいー」
───「……ふぅ。仕方ない。今日は会えそうもないのでお風呂とご飯にしましょうか。疲れてるでしょう?」
「…ん!それなら僕に任せてよぉ。」
トトが不意をついてキキに触れると、大きなシャボン玉がキキを取り囲んだ。
「な、なに…!?」
ぷかぷかと浮かぶキキをみて、テラーはトトを睨む。このシャボン玉の中に入れてしまえば、テラーでも簡単にはキキに触れられなくなる。
「まあまあ心配しないでよぉ。僕に任せてっ」
にやっと笑うトトは、言い終わらないうちに浴場へと移動し始めた。キキの入ったシャボン玉は、ぷかぷかと自動でトトの後ろにつく。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「さあさあ。まずはお風呂だねぇ。そこの人達、キキをよろしくねぇ。」
浴場につくと、すでに数人のメイドさんが集まっていた。
彼女たちはトトが外に出たのを確認し、手際よくキキの湯浴みを始めた。
鳥の巣のように絡まっていた髪はいつの間にかさらっさらに変わり、かさかさして汚れていた肌はつるっつるになっていた。
………魔法だ。これはもう魔法だ……。こわい…すごい…。
─────キキが気づいた頃には、自分はぴかぴかの状態で湯船に浸かっていた。
◇◆◇◆◇◇◆◇
───「な……なんだこれ……」
湯船から上がったキキは綺麗に体を拭いてもらい、髪もオイルまでつけてさらさらに乾かしてもらった。
………そこまではよかった。ほんとうにそこまでは。それはそれは素晴らしかった。
─────「……んーーー。着ぐるみ?」
私に用意されていた部屋着は、少しぶかぶかでもこもこした、くまのお洋服だった。
いや、正確に言えばその服だけではなかったよ?他にも種類はあった。あったよ?でも……
「くま、うさぎ、ペンギン、しろくま、ひつじ、りす、ねこ………」
「普通のはないんかいっ」
ずらっと並べられた多種類の動物達を見ていくうちに頭が痛くなり、結局無難なくまを選んだ。
歩きにくい服でぺたぺたと外に出る。………これペンギンが1番合ってたんかも……。
◆◇◆◇◆◇
───「あぁ~!かあいいねぇ…!なんてかわいいんだろ……。天使……。」
外に出た瞬間、トトがぎゅっと抱きついてきた。……うぅ、苦しい。
「ご飯食べに行こうねぇ。ぺたぺた歩いてるの可愛かったし、今度は歩いて行こうかぁ~」
………み、見られてたのか…。てか絶対この人セレクトだなこれ……。
ひつじバージョンでお出迎えしてきたトトに冷たい視線を送るキキ。
「背も同じくらいだし~僕達双子みたいでかあいいねぇ」
「……はぁ。」
ぺたぺたと歩きながら、キキは考える事をやめた。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~
月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。
「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。
そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。
『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。
その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。
スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。
※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。)
※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。
貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
異種の魔道具使い《ゼノマジックアティライザー》
一ノ瀬 レン
ファンタジー
孤児であるカイは身分やその体質からひどい扱いを受けるものの、同じ孤児であるメルと一生懸命に生きていた。だが、ダンジョン探索中に貴族の身勝手な行動によりピンチに、カイは囮にされ死に掛ける。ダンジョンマスターの手助けもあり一命を取り留めたものの、その体は魔道具で構成された魔道具人間になってしまう。
元の体を取り戻すため、そしてメルのために、辿り着けばどんな願いも叶うとされる"終極の地"を目指し彼は旅に出る。
そんなカイの波乱万丈な物語。
*小説家になろう様でも投稿しています*
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる