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ケート村にて
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時々休憩を入れながら北に向かい、明け方ごろ村に着きました。
私はあまり地理は詳しくなかったのですが、イルゼ様によるとここはケート村というところで、2、3か月前に領主が変わったとのことでした。
馬を村の端につないでおき、村の中に入るとケンカする声が。
声のする方へ行くと、二人の成人男性が口喧嘩をしているようです。
おひとりは40代くらい、もう一人は70代くらいでしょうか。
「俺の農作物を育たないようにしただろう!」
「そんなことはしていないって言っているだろう」
あまり状況が理解できませんでしたが、40代の男性が農具のようなもので相手を殴ろうとしたとき、イルゼがその腕をつかみました。
「イテテテテ……! なにするんだよ」
「それでは相手がケガをしてしまいます」
男性はイルゼを見て、力でかなわないと思ったのか、手を離された後は農具を手放し、去っていきました。
「少しお話を聞かせていただけませんか?」
残った男性にお話を聞かせてもらうと、領主が変わってからなんだかみんな殺気立っているっていうのです。
「今の領主も悪い人ではないんだ。でも何か村の雰囲気が変わってしまったというか」
「そうなのですね。ここらへんでお祈りができる場所はありますか?」
「祈っても仕方ないだろうけど、教会が村の真ん中にあるよ」
聖女は一般の方にはあまり知られていないので、聖女のお祈りのことはあまりご存知ないようです。
しかし教えられた教会へ行くと、牧師さんは私を見てすぐにわかったようでした。
「聖女様がこのような村に来てくださるなんて!」
「身を隠して行動しておりますので、このことは他の人には内緒にしてくださいね」
そう伝え、お祈りをします。
お祈りすることで、トラブルになっていること、なりそうな物のイメージがわきそれをみなさんに伝えることでよりよい場所にしていきます。
『質素だけど身なりが良い男性、川のイメージ、そして、黒』
お祈りが終わり、部屋から出てくると、イルゼは教会から戻ってくるところでした。
「ユリアーネ様、さきほど」
「ユリアーネ」
私もまだ「イルゼ様」と言いそうになるけれど、なんとか呼ぶときは「イルゼ」と言えてる。
なにごとも最初が肝心ですわよね。
「それはいいとして」
「よくないですわ」
にこっとほほ笑んで名前が呼ばれるのを待ちます。
こんなとき、体も大きくて立派な方が困ったように照れるのを見るのもなんだか楽しかったりするのです。
「ユリアーネ」
イルゼに名前を呼ばれると、きゅんとするのも、呼んでほしい理由の一つです。
「ありがとうございます。続きをお願いします」
「どうやら先代の領主は川をこの村まで引っ張っていき、農作業が楽になるようにしていたところ、ご病気で急逝されて中断しているようです」
それで川のイメージと亡くなったため、黒のイメージが思い浮かんだのね。
「では今の領主様にお会いして、イメージしたことをお伝えしましょう」
牧師さんがつないでくれ、領主様にすぐにお会いできることに。
大きくはないけれど、丁寧に手入れされたお屋敷で、人の良さそうな領主様が出てきました。
「聖女様にお会いできるとは! いやぁ、うれしい」
握手を求められ、家の中に入れてもらいました。
私とイルゼ、領主様と牧師さんで、私の見たイメージを伝え、どうするかの話し合い。
「先代の領主様の悔やむ気持ちがこの村に残っていると思われますわ」
「川のことは知っていましたが、人でが足りずどうしたらよいかと困っていたんです。聖女様のご主人にもお手伝いしていただいてよろしいでしょうか」
ご主人?
領主様の視線の先には、イルゼ。
イルゼも、自分のことかと気づき慌てた様子です。
「いえ、私は、夫ではなく、えーと」
「大切なパートナーのイルゼですわ」
「そうだったんですね。イルゼさんも力仕事をお頼みしたい」
「承知しました」
イルゼの慌てっぷりはスルーされて、やるべきことを決めていきました。
「村が良くなるまで、私のお屋敷でお食事とお部屋をご用意いたします」
領主様にそう言っていただきました。
今日は村の様子を一通り見たりして一日が終了しました。
お食事が終わり、お部屋に戻ります。お部屋はイルゼと別々で用意してくださりました。
昨日の夜からあまり眠っていないので、さすがに眠気が来ます。
早めに寝ようかしら、と思っていると、ノックして入ってきたのはイルゼ。
「少しだけお話、よろしいでしょうか?」
「もちろん、大丈夫ですわ」
イルゼは入ってきて、立ったままだったので、ソファに座ってもらいました。
そんなに広くないお部屋なので、ソファとベッドのみしかありません。
「私もソファにすわってよろしいでしょうか?」
「え? あ、はい」
座る前は何も思わなかったけれど、ソファに横並びに座りすぐ近くにイルゼの存在を感じると急に緊張してきました。
「今日、大切なパートナーといってくださってありがとうございました」
「それを言いに来たの? だって大切なパートナー以外の表現が思いつきませんでしたもの」
「勝手についてきたから、迷惑をおかけしているのではないかと思っていて」
「お城にいたときもいろいろ助けてくださりましたし、今回も一人だとどこをどう歩いていいのかもわからなかったので、一緒にいてありがたかったです」
「それを聞けてよかった」
イルゼは安堵したような、やらかい笑顔をむけてくれました。
お城にいるときは無表情と思っていたけれど、案外いろいろな表情をしてくれる方なのかも。
一緒にいてありがたいのは本当。
聖女ともいえど、一人で旅するのは心細かったので、隣にイルゼがいてくれるだけで安心感が違います。
なんてことを考えていると、再び眠気が……。
あぁ、ふわふわ浮かんでて気持ちい。
支えてくれる腕も暖かくて安心して身を任せられますわ。
……身を任せられる?
先ほど寝たと思っていましたが、窓の外からの陽の光で目が覚めました。
「イルゼ?」
起き上がるとイルゼの姿はなく、私はベッドの上できちんと布団をかけて寝ていました。
昨日はソファで寝てしまったはず。
すぐに着替えてイルゼのお部屋へ向かいます。
イルゼもすでに着替えていて、爽やかな笑顔で挨拶してくれました。
「おはようございます」
「昨日私をベッドまで運んでくださいました?」
「はい、お疲れのところお話を聞いていただきありがとうございました」
「いえ、こちらこそ、ベッドまで運んでいただきありがとうございます」
「そんなこと。お安いごようです」
知れば知るほどイルゼって良い方ですわ。
一緒に朝食をとったあとは、私はお祈り、イルゼは領主様や村人たちと出かけていきました。
お祈りをすると、少し黒かった村のイメージが落ち着いているようです。
お祈りの成果もありますが、やはり川から水を引く準備が整ったことも大きいようです。
お祈りが終わると、村の広場で一緒に昼食をとる約束をしていました。
広場では牧師様や村の人たちも何人か一緒に食べていました。
「あら、イルゼはどこでしょう?」
牧師様に聞いてみると、すでに昼食を食べ終えて子どもたちと森の方にいるとのことでした。
子どもたちの声の方に行ってみると、子どもたちを腕に3人ほど持ち上げて遊ぶイルゼの姿が。
子どもたちもキャーキャーと喜んで、他の子も「僕もやってー」と、順番待ちをしています。
イルゼはほんと、たくさんの顔を持っています。
私に気づくと、照れたように笑顔を向けてくれました。
子どもたちのジャマをしては悪いので、手を振ってその場を離れました。
昼食をとりながら村の人たちと話していると、みなさん良い笑顔です。
「昨日までのうつうつとした気分が全然ちがってねー」
「ほんと、急に心の霧が晴れたっていうか、不思議だなぁ」
みなさんの心も変化しているようで良かったです。
このように1ヶ月ほど私はお祈り、イルゼたちは川から水を引いたり畑を耕したりして過ごしました。
元々みなさん優しい方ばっかりだったようで、1ヶ月経つ頃にはケンカもほとんどなくなり、みなさん仲良く過ごすようになりました。
「ユリアーネ様、イルゼ様、本当にありがとうございました。これからも村の人たちと協力してよりよい村にしていきます。できればお二人にずっとここにいていただきたいんですけどね」
領主様も素敵な人で、これからはお祈りがなくても大丈夫でしょう。
「今回ケート村に来たことで、みなさん良い人ばかりでも少しのきっかけで関係が悪化することがあるというのを学びました。
そういったところを回って、少しでも改善のお手伝いをしたいんです」
イルゼとも話し合って決めていましたので、領主様も納得してくださいました。
「またぜひ遊びに来てください」
「はい、ぜひ」
村を出る日、たくさんの方が見送りに来てくださいました。
一人ひとりに挨拶をしていると、一人の少年が私とイルゼのところへ。
「ねぇねぇ、イルゼとユリアーネは結婚してるんでしょ」
二人でよく一緒にいるからか、多くの方に夫婦と間違えられました。
最初の方こそいちいち訂正していましたが、だんだん面倒くさくなり否定も肯定もしなかったので結婚していると思っている人もいるらしく、この少年、グレグもそのようです。
「あのね、僕のお姉ちゃんも結婚しているんだけど、最近全然帰ってこないの。お手紙も来なくなったってお父さんお母さんがかなしんでいるんだ」
「お姉さんはどこにいらっしゃるの?」
「アンステア国」
「イルゼ、ご存知?」
「多分、ここから北西にある国だと思います」
正しい位置を領主様に教えてもらい、次はアンステア国を目指すことに。
「あそこの国も領主の伯爵家は良い人らしいんですが、急に治安が悪くなったと聞いています」
去り際に領主様が教えてくださいました。
短期間ではあったけれど、良い人たちと過ごせてよかった。
馬に乗りながら、ふと思ったことをイルゼに聞いてみた。
「私たち、夫婦に見えるのかしら」
「えっ?! さ、さぁ。ど、どうでしょう」
声が裏返ったイルゼがおもしろくて思わず笑ってしまいました。
「なにがおかしいんですか」
「すみません。なんでもないです」
さぁ、次のアンステア国はどのようなところかしら。
私はあまり地理は詳しくなかったのですが、イルゼ様によるとここはケート村というところで、2、3か月前に領主が変わったとのことでした。
馬を村の端につないでおき、村の中に入るとケンカする声が。
声のする方へ行くと、二人の成人男性が口喧嘩をしているようです。
おひとりは40代くらい、もう一人は70代くらいでしょうか。
「俺の農作物を育たないようにしただろう!」
「そんなことはしていないって言っているだろう」
あまり状況が理解できませんでしたが、40代の男性が農具のようなもので相手を殴ろうとしたとき、イルゼがその腕をつかみました。
「イテテテテ……! なにするんだよ」
「それでは相手がケガをしてしまいます」
男性はイルゼを見て、力でかなわないと思ったのか、手を離された後は農具を手放し、去っていきました。
「少しお話を聞かせていただけませんか?」
残った男性にお話を聞かせてもらうと、領主が変わってからなんだかみんな殺気立っているっていうのです。
「今の領主も悪い人ではないんだ。でも何か村の雰囲気が変わってしまったというか」
「そうなのですね。ここらへんでお祈りができる場所はありますか?」
「祈っても仕方ないだろうけど、教会が村の真ん中にあるよ」
聖女は一般の方にはあまり知られていないので、聖女のお祈りのことはあまりご存知ないようです。
しかし教えられた教会へ行くと、牧師さんは私を見てすぐにわかったようでした。
「聖女様がこのような村に来てくださるなんて!」
「身を隠して行動しておりますので、このことは他の人には内緒にしてくださいね」
そう伝え、お祈りをします。
お祈りすることで、トラブルになっていること、なりそうな物のイメージがわきそれをみなさんに伝えることでよりよい場所にしていきます。
『質素だけど身なりが良い男性、川のイメージ、そして、黒』
お祈りが終わり、部屋から出てくると、イルゼは教会から戻ってくるところでした。
「ユリアーネ様、さきほど」
「ユリアーネ」
私もまだ「イルゼ様」と言いそうになるけれど、なんとか呼ぶときは「イルゼ」と言えてる。
なにごとも最初が肝心ですわよね。
「それはいいとして」
「よくないですわ」
にこっとほほ笑んで名前が呼ばれるのを待ちます。
こんなとき、体も大きくて立派な方が困ったように照れるのを見るのもなんだか楽しかったりするのです。
「ユリアーネ」
イルゼに名前を呼ばれると、きゅんとするのも、呼んでほしい理由の一つです。
「ありがとうございます。続きをお願いします」
「どうやら先代の領主は川をこの村まで引っ張っていき、農作業が楽になるようにしていたところ、ご病気で急逝されて中断しているようです」
それで川のイメージと亡くなったため、黒のイメージが思い浮かんだのね。
「では今の領主様にお会いして、イメージしたことをお伝えしましょう」
牧師さんがつないでくれ、領主様にすぐにお会いできることに。
大きくはないけれど、丁寧に手入れされたお屋敷で、人の良さそうな領主様が出てきました。
「聖女様にお会いできるとは! いやぁ、うれしい」
握手を求められ、家の中に入れてもらいました。
私とイルゼ、領主様と牧師さんで、私の見たイメージを伝え、どうするかの話し合い。
「先代の領主様の悔やむ気持ちがこの村に残っていると思われますわ」
「川のことは知っていましたが、人でが足りずどうしたらよいかと困っていたんです。聖女様のご主人にもお手伝いしていただいてよろしいでしょうか」
ご主人?
領主様の視線の先には、イルゼ。
イルゼも、自分のことかと気づき慌てた様子です。
「いえ、私は、夫ではなく、えーと」
「大切なパートナーのイルゼですわ」
「そうだったんですね。イルゼさんも力仕事をお頼みしたい」
「承知しました」
イルゼの慌てっぷりはスルーされて、やるべきことを決めていきました。
「村が良くなるまで、私のお屋敷でお食事とお部屋をご用意いたします」
領主様にそう言っていただきました。
今日は村の様子を一通り見たりして一日が終了しました。
お食事が終わり、お部屋に戻ります。お部屋はイルゼと別々で用意してくださりました。
昨日の夜からあまり眠っていないので、さすがに眠気が来ます。
早めに寝ようかしら、と思っていると、ノックして入ってきたのはイルゼ。
「少しだけお話、よろしいでしょうか?」
「もちろん、大丈夫ですわ」
イルゼは入ってきて、立ったままだったので、ソファに座ってもらいました。
そんなに広くないお部屋なので、ソファとベッドのみしかありません。
「私もソファにすわってよろしいでしょうか?」
「え? あ、はい」
座る前は何も思わなかったけれど、ソファに横並びに座りすぐ近くにイルゼの存在を感じると急に緊張してきました。
「今日、大切なパートナーといってくださってありがとうございました」
「それを言いに来たの? だって大切なパートナー以外の表現が思いつきませんでしたもの」
「勝手についてきたから、迷惑をおかけしているのではないかと思っていて」
「お城にいたときもいろいろ助けてくださりましたし、今回も一人だとどこをどう歩いていいのかもわからなかったので、一緒にいてありがたかったです」
「それを聞けてよかった」
イルゼは安堵したような、やらかい笑顔をむけてくれました。
お城にいるときは無表情と思っていたけれど、案外いろいろな表情をしてくれる方なのかも。
一緒にいてありがたいのは本当。
聖女ともいえど、一人で旅するのは心細かったので、隣にイルゼがいてくれるだけで安心感が違います。
なんてことを考えていると、再び眠気が……。
あぁ、ふわふわ浮かんでて気持ちい。
支えてくれる腕も暖かくて安心して身を任せられますわ。
……身を任せられる?
先ほど寝たと思っていましたが、窓の外からの陽の光で目が覚めました。
「イルゼ?」
起き上がるとイルゼの姿はなく、私はベッドの上できちんと布団をかけて寝ていました。
昨日はソファで寝てしまったはず。
すぐに着替えてイルゼのお部屋へ向かいます。
イルゼもすでに着替えていて、爽やかな笑顔で挨拶してくれました。
「おはようございます」
「昨日私をベッドまで運んでくださいました?」
「はい、お疲れのところお話を聞いていただきありがとうございました」
「いえ、こちらこそ、ベッドまで運んでいただきありがとうございます」
「そんなこと。お安いごようです」
知れば知るほどイルゼって良い方ですわ。
一緒に朝食をとったあとは、私はお祈り、イルゼは領主様や村人たちと出かけていきました。
お祈りをすると、少し黒かった村のイメージが落ち着いているようです。
お祈りの成果もありますが、やはり川から水を引く準備が整ったことも大きいようです。
お祈りが終わると、村の広場で一緒に昼食をとる約束をしていました。
広場では牧師様や村の人たちも何人か一緒に食べていました。
「あら、イルゼはどこでしょう?」
牧師様に聞いてみると、すでに昼食を食べ終えて子どもたちと森の方にいるとのことでした。
子どもたちの声の方に行ってみると、子どもたちを腕に3人ほど持ち上げて遊ぶイルゼの姿が。
子どもたちもキャーキャーと喜んで、他の子も「僕もやってー」と、順番待ちをしています。
イルゼはほんと、たくさんの顔を持っています。
私に気づくと、照れたように笑顔を向けてくれました。
子どもたちのジャマをしては悪いので、手を振ってその場を離れました。
昼食をとりながら村の人たちと話していると、みなさん良い笑顔です。
「昨日までのうつうつとした気分が全然ちがってねー」
「ほんと、急に心の霧が晴れたっていうか、不思議だなぁ」
みなさんの心も変化しているようで良かったです。
このように1ヶ月ほど私はお祈り、イルゼたちは川から水を引いたり畑を耕したりして過ごしました。
元々みなさん優しい方ばっかりだったようで、1ヶ月経つ頃にはケンカもほとんどなくなり、みなさん仲良く過ごすようになりました。
「ユリアーネ様、イルゼ様、本当にありがとうございました。これからも村の人たちと協力してよりよい村にしていきます。できればお二人にずっとここにいていただきたいんですけどね」
領主様も素敵な人で、これからはお祈りがなくても大丈夫でしょう。
「今回ケート村に来たことで、みなさん良い人ばかりでも少しのきっかけで関係が悪化することがあるというのを学びました。
そういったところを回って、少しでも改善のお手伝いをしたいんです」
イルゼとも話し合って決めていましたので、領主様も納得してくださいました。
「またぜひ遊びに来てください」
「はい、ぜひ」
村を出る日、たくさんの方が見送りに来てくださいました。
一人ひとりに挨拶をしていると、一人の少年が私とイルゼのところへ。
「ねぇねぇ、イルゼとユリアーネは結婚してるんでしょ」
二人でよく一緒にいるからか、多くの方に夫婦と間違えられました。
最初の方こそいちいち訂正していましたが、だんだん面倒くさくなり否定も肯定もしなかったので結婚していると思っている人もいるらしく、この少年、グレグもそのようです。
「あのね、僕のお姉ちゃんも結婚しているんだけど、最近全然帰ってこないの。お手紙も来なくなったってお父さんお母さんがかなしんでいるんだ」
「お姉さんはどこにいらっしゃるの?」
「アンステア国」
「イルゼ、ご存知?」
「多分、ここから北西にある国だと思います」
正しい位置を領主様に教えてもらい、次はアンステア国を目指すことに。
「あそこの国も領主の伯爵家は良い人らしいんですが、急に治安が悪くなったと聞いています」
去り際に領主様が教えてくださいました。
短期間ではあったけれど、良い人たちと過ごせてよかった。
馬に乗りながら、ふと思ったことをイルゼに聞いてみた。
「私たち、夫婦に見えるのかしら」
「えっ?! さ、さぁ。ど、どうでしょう」
声が裏返ったイルゼがおもしろくて思わず笑ってしまいました。
「なにがおかしいんですか」
「すみません。なんでもないです」
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