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第二十四話 キングオーガ
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「そういえば大我さん、俺達は村でただ戦うだけでいいんですか?そこまで離れているわけではありませんが、騒ぎが届かなかった場合どうするんですか?」
「それなら問題ない。れんちゃんもいるしね」
「どういうことですか?」
「あの子は人より感覚が優れてるんだ。この距離でも彼女なら問題ないさ」
「・・・れんにそんな長所が・・」
移動の途中、ふと出た疑問を大我にぶつけた。作戦としては諒達が村で暴れてオーガたちを村の方に集め、その隙に恭介達が村民を避難させるというものだ。
そのためには騒ぎをある程度恭介達の方が認知する必要がある。諒にはただ戦うということしか知らされていないが、本当に大丈夫かと疑問だった。
それに返事をした大我の言葉は意外なものだったが、確かに思い当たるところは多い。れんはモンスターに対して非常に敏感で、索敵の際はいつも諒や琴音より早く探知に成功している。
それが彼女の五感の鋭さによるものだとは、納得するのと同時になぜ大我がそれを知っているのかという疑問が代わりに浮かんで来た。
「大我さんはれんのことを何か知ってるんですか?」
「・・・彼女は何か僕のことを言ってましたか?」
「いえ、俺は何も聞いていませんが」
「そうですか。なら僕が何かを語るのはやめておきます。ですが、確かに僕と彼女はあなたと出会う前から互いに面識がある、それだけはお伝えしておきましょう」
れんの異変の原因は大我にあったらしい。騎士団の方だと考えていたが、思い返すとギルドで既にその話題は出ていた。そこで何もれんが反応を示さなかったところを見ると、騎士団そのものには問題はないだろう。
一体どんな関係なのだろう。れんの反応はかなり妙だった。明らかに大我のことを避けている様子だったが、おそらく嫌っているものではない。ただ他の何らかの理由で顔をあわせたくないと言った方がいい。
大我からはれんに対する特別な感情は今のところ見えなかったが、彼女のことを話すこの瞬間、彼の表情に悲しみの色が映ったのを諒はかすかに感じていた。
しかしそれ以上大我は何かを話そうとはしなかった。あくまでれんの方に聞いてくれというスタンスでいるようだ。
諒もそれ以上深入りすることはしなかった。話したくないのもあるだろうが、何となく「触れられたくない」という思いを感じた。やはり彼女が話したくなるまでは気長に待つしかないだろう。
「それと、当然のようにこっちに志願しましたけど、大我さんは戦力に数えてもいいんですか?」
「もちろんです。親衛隊は街の外に出て任務をこなすことも多いのでモンスターに対しても対処は可能です。期待していただいてもいいですよ?」
「それなら大丈夫です。言葉通り期待してますよ」
どうやら親衛隊というのは比較的冒険者と近い組織のようだ。意外にもモンスターに対する戦闘経験は豊富らしい。実力の詳しい程はまだわからないが、諒と同等かそれ以上なのは間違いない。それはあの時感じた気迫からも想像がつく。
オーガの群れやキングオーガに対しても十分やれるだろう。それが分かれば後はやるだけだ。そう簡単に倒れる男ではない。不思議とその安心感はこの男にはあった。
「そろそろ村に入ります。すぐ戦闘になるでしょうから、どこから襲われてもいいよう警戒は忘れないようにしてください」
「ああ、わかってる」
大我が諒に声をかけるとすぐに村の門が見えてきた。モンスターの侵入を防ぐものだろうが、それは無惨にも破壊されていた。Cランクあたりの奴なら効果はあっただろうが、さすがにAランクの怪物相手にはこれでは耐えきれなかったらしい。
「オーガと言えどもここまで群れるとゾクゾクするな。これだけならBランクくらいの依頼で出されても文句ないぞ」
「ええ、僕もこの量のモンスターの群れは初めてです。壮観ですね」
門から見える村の光景はまさに地獄絵図だ。村を行きかう人々という普通の情景が全てオーガに入れ替わったらこんなにすさまじいことになるのか。あまりの光景に二人は思わず足を止める。
だが二人はすぐ正気に戻った。オーガどもも二人のことを発見して調子のいい雄たけびをあげる。餌でも来たと思っているのだろう。
そう思っているのなら随分舐められたものだ。
「村の中央を目指そう。そこまで行けばボスも見つけやすいはずだ」
「わかりました。そうしましょう」
二人を得物を抜いて臨戦態勢をとる。村の端でチマチマやっても埒が明かない。
まずはオーガの群れを薙ぎ払いボスであるキングオーガを探す。キングオーガの「呼びかけ」はかなりの効果がある。多少なりともダメージを与えてそれを使わせれば森中のオーガが集中するはず、そこまで出来れば恭介たちの避難もより楽になるだろう。
そう判断すると二人は同時に走り出す。
大我の早さは予想を超えてすさまじいものだった。風に乗るような軽やかな動きで一気に距離を詰める。
しかし諒も負けじと速度を上げる。すぐに大我と並び刀を体と並行に構える。
「竜剣技・鋭角『旋風』!」
諒は速度のままオーガたちに突っ込む。貫通力に特化した突進技は門の前に立ちはだかっていたオーガを貫き、勢いのまま村に侵入する。
「天の型・壱式『疾空』!」
大我も負けじと剣を構えなおすと足に力を入れオーガの頭上にまで跳躍する。慣性に任せて宙を舞いながらも無駄のない動作で彼を叩き落そうとするオーガの首を次々と撥ねる。
まとめて数体のオーガを光に変え、そこで大我も着地した。
これが彼の実力、そして騎士団に伝わる剣技だ。
騎士団には天と地の二つの型が存在している。大我の使う天の型は攻めの型。障害の無い空を自由に舞うように動き、立ちはだかる壁は全て薙ぎ払うことを目的とした剣技である。
対して地の型は守りの型。大地のようにすべてを受け入れ、そしてはね返すカウンター等の相手の力を利用した戦術を得意としている。
どちらも中々お目にかかれないものだ。騎士団はもちろん訓練されているが、それを外で発揮する機会は中々ないからだ。それを存分に振るえて少し大我も嬉しそうだ。こういう戦いは嫌いではないらしい。
「一気に進むよ、諒君」
「ああ、任せておけ」
二人はお互いを邪魔しないように少し距離を離しながらもほぼ並行して村の中央目指してまっすぐ突き進む。
「あそこが中心だ!」
「わかった。一度止まって周囲を確認しよう」
すさまじい二人のスピードであっという間に中央の広場が見えてきた。
二人はそこで一度止まり、ボスを探すために未だ数が減った様子の無いオーガに応戦しながら様子を伺う。
「天の型・弐式『風車』!」
「竜剣技・鞭尾『草薙』!」
中央は壁がないため四方八方からオーガが襲ってくるが、二人はそれをものともせずはね返していく。
オーガたちも負けじと数で叩こうとどんどん襲い掛かってくる。
だが何度目かの同じような光景が繰り返された時、ふとオーガたちの動きが止まった。
「ようやくお出ましか」
「話に聞いた通りのでかさだ」
オーガの群れを縫うようにひと際大きな個体が諒達の前に姿を現す。
間違いなくこいつがキングオーガだ。まさかこんなに早く出会えるとは、まだ消耗も浅い。頃合いとしては上々だろう。
「ここからが本番だ。気合入れろよ」
「それはこっちのセリフですね。そっちこそ頼みますよ」
二人の剣に全く臆することなくキングオーガは面白そうにこん棒を構える。
まさかこうもAランクと相手することになるとは、わずかな感慨もすぐに振り払い、二人は地面を蹴った。
「それなら問題ない。れんちゃんもいるしね」
「どういうことですか?」
「あの子は人より感覚が優れてるんだ。この距離でも彼女なら問題ないさ」
「・・・れんにそんな長所が・・」
移動の途中、ふと出た疑問を大我にぶつけた。作戦としては諒達が村で暴れてオーガたちを村の方に集め、その隙に恭介達が村民を避難させるというものだ。
そのためには騒ぎをある程度恭介達の方が認知する必要がある。諒にはただ戦うということしか知らされていないが、本当に大丈夫かと疑問だった。
それに返事をした大我の言葉は意外なものだったが、確かに思い当たるところは多い。れんはモンスターに対して非常に敏感で、索敵の際はいつも諒や琴音より早く探知に成功している。
それが彼女の五感の鋭さによるものだとは、納得するのと同時になぜ大我がそれを知っているのかという疑問が代わりに浮かんで来た。
「大我さんはれんのことを何か知ってるんですか?」
「・・・彼女は何か僕のことを言ってましたか?」
「いえ、俺は何も聞いていませんが」
「そうですか。なら僕が何かを語るのはやめておきます。ですが、確かに僕と彼女はあなたと出会う前から互いに面識がある、それだけはお伝えしておきましょう」
れんの異変の原因は大我にあったらしい。騎士団の方だと考えていたが、思い返すとギルドで既にその話題は出ていた。そこで何もれんが反応を示さなかったところを見ると、騎士団そのものには問題はないだろう。
一体どんな関係なのだろう。れんの反応はかなり妙だった。明らかに大我のことを避けている様子だったが、おそらく嫌っているものではない。ただ他の何らかの理由で顔をあわせたくないと言った方がいい。
大我からはれんに対する特別な感情は今のところ見えなかったが、彼女のことを話すこの瞬間、彼の表情に悲しみの色が映ったのを諒はかすかに感じていた。
しかしそれ以上大我は何かを話そうとはしなかった。あくまでれんの方に聞いてくれというスタンスでいるようだ。
諒もそれ以上深入りすることはしなかった。話したくないのもあるだろうが、何となく「触れられたくない」という思いを感じた。やはり彼女が話したくなるまでは気長に待つしかないだろう。
「それと、当然のようにこっちに志願しましたけど、大我さんは戦力に数えてもいいんですか?」
「もちろんです。親衛隊は街の外に出て任務をこなすことも多いのでモンスターに対しても対処は可能です。期待していただいてもいいですよ?」
「それなら大丈夫です。言葉通り期待してますよ」
どうやら親衛隊というのは比較的冒険者と近い組織のようだ。意外にもモンスターに対する戦闘経験は豊富らしい。実力の詳しい程はまだわからないが、諒と同等かそれ以上なのは間違いない。それはあの時感じた気迫からも想像がつく。
オーガの群れやキングオーガに対しても十分やれるだろう。それが分かれば後はやるだけだ。そう簡単に倒れる男ではない。不思議とその安心感はこの男にはあった。
「そろそろ村に入ります。すぐ戦闘になるでしょうから、どこから襲われてもいいよう警戒は忘れないようにしてください」
「ああ、わかってる」
大我が諒に声をかけるとすぐに村の門が見えてきた。モンスターの侵入を防ぐものだろうが、それは無惨にも破壊されていた。Cランクあたりの奴なら効果はあっただろうが、さすがにAランクの怪物相手にはこれでは耐えきれなかったらしい。
「オーガと言えどもここまで群れるとゾクゾクするな。これだけならBランクくらいの依頼で出されても文句ないぞ」
「ええ、僕もこの量のモンスターの群れは初めてです。壮観ですね」
門から見える村の光景はまさに地獄絵図だ。村を行きかう人々という普通の情景が全てオーガに入れ替わったらこんなにすさまじいことになるのか。あまりの光景に二人は思わず足を止める。
だが二人はすぐ正気に戻った。オーガどもも二人のことを発見して調子のいい雄たけびをあげる。餌でも来たと思っているのだろう。
そう思っているのなら随分舐められたものだ。
「村の中央を目指そう。そこまで行けばボスも見つけやすいはずだ」
「わかりました。そうしましょう」
二人を得物を抜いて臨戦態勢をとる。村の端でチマチマやっても埒が明かない。
まずはオーガの群れを薙ぎ払いボスであるキングオーガを探す。キングオーガの「呼びかけ」はかなりの効果がある。多少なりともダメージを与えてそれを使わせれば森中のオーガが集中するはず、そこまで出来れば恭介たちの避難もより楽になるだろう。
そう判断すると二人は同時に走り出す。
大我の早さは予想を超えてすさまじいものだった。風に乗るような軽やかな動きで一気に距離を詰める。
しかし諒も負けじと速度を上げる。すぐに大我と並び刀を体と並行に構える。
「竜剣技・鋭角『旋風』!」
諒は速度のままオーガたちに突っ込む。貫通力に特化した突進技は門の前に立ちはだかっていたオーガを貫き、勢いのまま村に侵入する。
「天の型・壱式『疾空』!」
大我も負けじと剣を構えなおすと足に力を入れオーガの頭上にまで跳躍する。慣性に任せて宙を舞いながらも無駄のない動作で彼を叩き落そうとするオーガの首を次々と撥ねる。
まとめて数体のオーガを光に変え、そこで大我も着地した。
これが彼の実力、そして騎士団に伝わる剣技だ。
騎士団には天と地の二つの型が存在している。大我の使う天の型は攻めの型。障害の無い空を自由に舞うように動き、立ちはだかる壁は全て薙ぎ払うことを目的とした剣技である。
対して地の型は守りの型。大地のようにすべてを受け入れ、そしてはね返すカウンター等の相手の力を利用した戦術を得意としている。
どちらも中々お目にかかれないものだ。騎士団はもちろん訓練されているが、それを外で発揮する機会は中々ないからだ。それを存分に振るえて少し大我も嬉しそうだ。こういう戦いは嫌いではないらしい。
「一気に進むよ、諒君」
「ああ、任せておけ」
二人はお互いを邪魔しないように少し距離を離しながらもほぼ並行して村の中央目指してまっすぐ突き進む。
「あそこが中心だ!」
「わかった。一度止まって周囲を確認しよう」
すさまじい二人のスピードであっという間に中央の広場が見えてきた。
二人はそこで一度止まり、ボスを探すために未だ数が減った様子の無いオーガに応戦しながら様子を伺う。
「天の型・弐式『風車』!」
「竜剣技・鞭尾『草薙』!」
中央は壁がないため四方八方からオーガが襲ってくるが、二人はそれをものともせずはね返していく。
オーガたちも負けじと数で叩こうとどんどん襲い掛かってくる。
だが何度目かの同じような光景が繰り返された時、ふとオーガたちの動きが止まった。
「ようやくお出ましか」
「話に聞いた通りのでかさだ」
オーガの群れを縫うようにひと際大きな個体が諒達の前に姿を現す。
間違いなくこいつがキングオーガだ。まさかこんなに早く出会えるとは、まだ消耗も浅い。頃合いとしては上々だろう。
「ここからが本番だ。気合入れろよ」
「それはこっちのセリフですね。そっちこそ頼みますよ」
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