俺の眼鏡を返して

kozu

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5、眼鏡は魔法檻の中に入ったまま Ⅱ

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ルーフェス Side

人間のかわいさにたまらず顔がにやけてしまう。
人間を飼うにあたって買わなければいけない物を忘れていたため人間を一人家に置いて買い物に来た。
愛読書である人間の飼い方が書かれている本より得た知識であるが、食事は成人であれば同じものを食べるためで問題ないと書いてあった。服はだいたいのサイズで問題ないだろう。あとは魔法でどうにでもなるし、買いに行けるので問題ない。
最低でも人間が食べるものは気を使いたい。
すぐ近くにあるスーパーに着いた。入り口に重ねられているカゴを取り、店内を進む。自宅からスーパーの移動は魔法を使う必要ないくらい近いので立地は満足だ。
買うのはもちろん、人間が食べる食品だ。
米はあるので問題はないが、おかずがまだ決まらない。
ハンバーグ、コロッケ、エビフライ、野菜炒め、マーボー豆腐、鮭の塩焼き、ハムエッグ、揚げ出し豆腐…
参考にお惣菜コーナーを見る。海老天が大きくて旨そうだ。海老天が中心の天ぷらの盛り合わせを想像した。すぐにその他の材料をカゴにどんどん入れいていく。椎茸を選んでいた時、野菜コーナーの近くにいた親子の会話が聞こえてきた。

「ねぇ、ママ!きょうのごはんのおかずはなぁに?」
「なににしようか?何が食べたい?」
「あのね!あのね!じゃあね!ママのつくる にくじゃががせかいいちおいしいからつくってほしいの!」
「そっか! じゃあ、今日は肉じゃがだ!お腹いっぱい食べさせてあげるからね!」
「やったぁ!」


普段なら気にも留めない会話だが、先ほどの会話から今日はなぜだか肉じゃがを人間に食べさせたい。あの人間に食べてもらいたい欲が湧いてきた。
肉、にんじんは自宅にあったはずだ。追加でじゃがいもと玉ねぎをカゴに入れ、会計する。
レジはない。カゴにはあらかじめ金額カウンターがついており、商品をカゴに入れていくとカウンターが増えていき、カゴに魔力を込めて、金額カウンターと魔力が同じになるとカウンターは会計済みと表示されそのまま店を出ることが可能だ。
スーパーを出てすぐに先ほど買った食材は魔法で自宅の冷蔵庫に入れた。

次に人間の服だが、スーパーから目と鼻の先のカジュアルで気軽に買えるファッションの店に足を運んだ。
服のことはあまり詳しくはないのだが、人間サイズであろうTシャツと下着、7分丈のゆったりめのパンツのそれぞれ白と黒の2色を選びカゴに入れる。モノクロが一番無難な気がする…モノクロにハズレがないのがいままでの経験則だ。

スーパーの時と同じようにカゴに魔力を込め会計を済ませる。
この系列の店は会計を済ませるとカゴが紙袋に代わり、紙袋の柄が毎回違うため面白くてよく使う。
ある程度バリエーションも豊富のため全身がこの店の商品で完成していることも珍しくない。

店を出てから、10歩も歩かない内に魔法で煙草を取り出し、口に咥え、火を付ける。
店内では禁煙だが、歩き煙草は規制されていないためどこでも吸いたいときに吸える。煙草の煙や灰を気にするのであれば”自身の周りに””煙草の煙と灰を””避ける”魔法をかければいい。
一本吸い終わる頃には自宅に着いた。煙草を捨てた。地面に触れる前には消し炭になる魔法を忘れずに。
人間に肉じゃがを食べてもらうために張り切って玄関のドアを開けた。


人間がいる部屋は玄関から最も遠い。
人間のための服は風呂上がり使うため脱衣所に置いた。
様子を見に魔法檻を置いた部屋に入ると人間は起きていた。魔法檻の中をしきりに動いている。
天井部分を触ったり、横になろうにも狭いのか何やら落ち着きがない。どうやら出たいようだ。

まだ、食事の準備が済むまではドジっぽいこの人間を魔法檻から目が離せないため急いで食事の準備をする。
キッチンに、炊き立てごはんにわかめと豆腐の味噌汁、ホウレン草のおひたし、おおきなエビの天ぷら盛り合わせとメインの肉じゃがを作る魔法をかけた。
魔法をかけ終わったため、部屋に戻り人間を魔法檻から解放する。

解放するといっても驚かせないようにまず、天井部分のみ魔法檻を開放する。
”自分の周りに””気配を””消す”魔法をかけて観察する。

人間は天井部分が解放されたことを理解したのか、ゆっくりした動きで辺りを見回しながらではあるが、魔法檻から出てきた。おどおどしていてかわいい。
ゆっくりと周りを見ている。何か興味があるのがあったのかダイニングテーブルに向かって足早に歩きだした。
とっさにドジな人間がダイニングテーブルとぶつからないように、腕を伸ばし、抱える形でダイニングテーブルとの衝突を避けた。手を伸ばした時に気配を消す魔法は解けたが、それよりも、危険なことになる前に未然に防げてよかった。
本来ならきちんと叱って教えるべきだろうが、口から出た第一声は

『かわいい~~~!!』

魔法檻の中にいるときからキョロキョロする仕草からおどおどしながら魔法檻から出てくるときはもうニヤニヤが止まらないし、気になったものに向かって一直線に向かおうとするのはいいことだがドジっぽいところがあるのがたまらない。そういった部分も含めて、全体的にかわいい。

『お前かわいいなぁ!!ああ、もうっ!めっちゃかわいい。でもダイニングテーブルは遊び道具じゃないからな。机だぞ。わかったか?』

言い聞かせたところで言葉は通じないが、ちょっとはわかって欲しいため軽く地面から両足を浮かせるくらい持ち上げた。持ち上げたときに人間の腹から小さく「クゥ」と鳴った。腹が減っているときの音なことはすぐに分かった。

『お?腹減ってる?ちょうどいいな。これから飯にするからな。メインのおかずは肉じゃがだぞ!』

先ほどから反応がない。ダイニングテーブルの件を反省したのだろうか。先ほどまでと違い静かになった。アクティブな時とのギャップがかわいい。
ダイニングテーブルで食事しようと考えていたが、叱られた嫌な思い出というのはこれからの生活にも影響が出ると考え、今回はローテーブルで食事にするため抱えたままソファに移動した。
キッチンから盛り付けまで完了の合図があった。
このままもう少し抱きしめていたかったが、人間が腹を空かせているんだし、出来たばかりで食べるばかりの食事を取り上げる訳にもいかないため、自分でも大袈裟なほど大きなため息を吐き、食事を持ってくるためひとまず人間をソファの上におろした。

キッチンには2人分のお盆に炊き立てのごはん、わかめと豆腐の味噌汁、ホウレン草のおひたし、おおきなエビの天ぷら盛り合わせとメインの肉じゃがが用意してあった。
人間用に一応、箸とフォーク、スプーンにナイフをお盆に用意する。

もうすでに使った調理器具の後片付けする魔法もかけてあるため最後まで何もしなくていい。
食後に緑茶を持ってくる魔法もかけた。
2人分のお盆を持ってローテーブルに置くと、人間は匂いに反応したのか顔はお盆に向いている。

一緒に食事をとるため脇に手を入れ人間を抱え、隣同士並ぶことはせず、ローテーブルと床に座った体のスペースに人間を置いた。

さすがに、お盆に乗ったままでは食べにくいため人間のお盆はそのまま、自分の食べる分の器を左右に並べる。並べ終わるまで人間の腹に手を当てると相当腹が減っているのか、静かにしている。食べる準備が整った。
箸を持ち食べるかというとき、人間が視線を上げた。箸に視線が来ている。そのまま食事を取りつつ人間の様子を見ていると、今度はお盆を注視し始めた。
箸を持った。が、一口目を食べない。
心配になって食べるのを止め、人間を後ろから見ていた。食べてもいいよと声をかけようとしたが、ごはん茶碗を持ち食べ始めた。
どうやら、何から食べようか迷っていただけなようだ。

人間は全部を一口ずつ食べていった。味を確認したのかどんどん食べ進めていった。
食べ終わったタイミングでキッチンから緑茶が来た。
緑茶を飲んでいる間は食べるのに集中してる人間がかわいくて人間が食べ終わるまで、ずっと見つめていた。

箸を使って食べるのもかわいいし、多分どんなものを食べてもかわいいのだろう。
第一にメインである肉じゃがを食べたことがかわいい。肉じゃがにしてよかったと思う。残さず全部食べてくれた。


人間にも緑茶をすすめたが手を付けない。
熱い嫌なのだろうか。次からは冷たい麦茶を食後に出そう。



人間が食事を取り終わり、リラックスできたところで風呂の準備をするために立ち上がる。
すると人間も立ち上がり、2人分の使った食器を重ね、お盆を一つになるように工夫し、持って後ろを追いかけるようについてきた。片付けも同様に魔法を使うため普段はしないが、片付けまでする行為がかわいくて人間の持ってきたお盆を片手で持ち上げた。

『片付けするなんて、えらいなぁ』

言葉は通じていないが実際えらいし、かなりかわいいため声が出てしまった。

キッチンに持っていくだけで後は魔法が全部やってくれる。
後片付けのついでに風呂に湯をはる魔法をかけた。
キッチンから人間のいる部屋へと戻ったら人間はダイニングテーブルに置いていた小さな魔法檻を抱えて立っていた。


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補足:
トウマの入れられている魔法檻は特別な仕様です。内側からは暗く、光や音等を遮断します。
外側からは中の様子は透明で何をやっているかわかります。
特別製の魔法檻は柔軟性を併せ持ってます。
今回はトウマが入っていた布袋と入れられていた魔法檻が特別性となります。

オークション会場では同じ名前の魔法檻とありましたが別物です
オークション会場のは内と外関係なく見えます、何もないようにトウマは見えてます。
特別製の魔法檻はとはかなり強度が違います。今回はオークション会場で使われているものと、トウマの眼鏡が入れられている小さな魔法檻がこちらになります。


説明不足で申し訳ありません
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