俺の眼鏡を返して

２、眼鏡は衝撃で落ちた Ⅱ

ルーフェス　Side

場内アナウンスが流れ、次の商品「人間」が間もなく競りにかけられると聞こえてきた。
人間は弱くて、小さくて…　言葉が通じない。人魚の人気とはかなりの差がある。
会場に到着すると人間の次に出品される人魚を競り落とそうと多くの客がもうすでに席についている。

席について一息ついた時だった。司会者が人間の紹介を始めた。
黒毛、雄、成体という基本情報。
次に商品がステージに現れる。
人間が逃げ出さないため、高さのある魔法檻に放り込まれる。
今回出品される人間はちょっと鈍くさいようだ。背中から落下した。その衝撃で動けないでいる。
ようやく動いたかと思えば、もぞもぞと動き立ち上がり、あたりをキョロキョロ見回し、顔が青ざめていくのが分かる。
少しして見回さなくなり、一点を見つめていた人間がいきなりステージの裏手側の舞台袖に向かって走り出した。

とはいってもその行動は魔法檻で阻まれた。座っている10列目まで魔法檻と人間の頭のぶつかった鈍い音にちょっと引いた。
人間のいる床の近くに穴が2つ開いているような、ひょろ長い変なのが転がっているのが気になった。
だが、すぐにステージには倒れた人間を隠すように幕が張られ、人間を満足に見れなかった。
残念だが仕方ない。

開催運営に購入する旨を示す用紙を服のポケットから取り出し、「人間を」、「持ち帰りに」「希望購入金額で買う」ために用紙に購入希望金額まで魔力を入れた。
魔力を希望購入金額まで注ぐと、火の玉状になり運営本部に向かい伝えられる仕組みになっている。

席を立ち、会場を離れるとすぐにさっきまでいた会場が大いに盛り上がり始めた。人魚さまのお出ましだろうと予想はつく。
今回は幸い人気のない人間であることと、ドジな点が表れていて（背中から転げ落ち、魔法檻から逃げ出すように頭から向かっていくようなドジっぽい人間だと誰も欲しがらない）ましてや、人魚との同時出品においてはあらゆる商品が安く手に入るというもの。

会場内の喫煙スペースで吸いながら少し考えている間に落札結果が出たようだ。先ほど魔力を注いだ火の玉が戻ってきて「落札しました」の結果と共に商品受け取りホールの案内図もついてきた。

商品受け取りホールはなかなか広く火の玉が道案内してくれる。
人間を受け取るために向かうスピードが速くなっていることは誰も気に留めない。