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魔法省人事録(12)
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ドラゴン。その存在は学者達を大いに悩ませる存在の一つであった。魔法においては魔法の根源など原初から考えられたことと同様に魔物、強いてはドラゴンの存在について深く言及する者がいる。
始祖は魔族、魔族の根源とされた地下空間から派生し、生まれたという説。竜人種が野生化もしくは突然変異し、長年を得て今の様々な形のドラゴンに生まれ変わった説など多岐にわたる。
というか訳の分からないことだらけのことが多すぎる。どのくらいかで言えば天文学くらいである。
「ポイズンドラゴンかー、の中でも上位種っぽいのだね」
「ただのポイズンドラゴンじゃなさそうね」
ロベルトとメアリーはいち早く、目の前に相対するドラゴンが只者でないことに気づいていた。
「ま、あの空飛ぶ狼よりは幾分かマシかなあ、一発でも攻撃が当たったら即落ちするけど」
何もマシじゃねえ。俺は心の中でそう呟いた。
さて、目の前にいるドラゴンの特徴はと言うと、鎌脚状の四足で歩みを進め、一対の羽、緑色の鎧のような皮膚を纏った大型のドラゴンである。
ただ、何かおかしいのはそういう姿をしているということだけは分かる。分かるのだがはっきりと居場所が掴めない感覚に何故か陥るのだ。
「ボヤケてんな」
「多分幻影よ。私もよく姿を把握できない」
メアリーでさえもはっきりと姿は見れないらしい。どうやら視界を紛らわす幻影があのドラゴンにはあるらしい。
「気をつけて、あれがイェラネヒウドラゴンなら鎌爪には毒がある」
「え、なんて?」
「鎌爪には毒がある」
「いやその前、何ドラゴン?」
「イェラネヒウドラゴン!なんで一回で聞き取れないわけ!?」
…超発音しにくいドラゴンだってことは分かった。あとそんな怒らなくてもよくない?
「あのですね、お二人さんお二人さん、来ますよ?」
その瞬間、鎌爪がすぐ手前まで来ていることに気づいた。足元を掬う形で攻撃してくる。
「ヒャア」
ロベルトが間の抜けた声でサラリと避けていく。というより透過して攻撃を避けている。多分魔法の力だろう。
メアリーも空を飛んで避けた。道具なしで魔法が使える人間だからこそできる臨機応変。それはロベルトにも言えることだが。
じゃあ俺はと言うと、本である。まだこちとら異空間収納から取り出せてすらいないんだぞ!
「……」
俺は複雑な内心そのままに飛んで避けようとする。なんてことはない。足元を掬ってきているのだから飛べば避けれる。若干靴に掠りそうだが。
「ちなみにその鎌って毒以外にも強酸性が含まれてるらしいから注意ね」
「おい」
遅いねん。もう靴掠ったねん。ジュワジュワ行ってんねん。
「……」
俺は黙って本を取り出し、魔法で靴の腐敗を消した。
「さてさて、ポイズンドラゴン系統の弱点は大体氷です。だから極点にこいつはいないって言うね…………」
ロベルトが訳の分からないことを言っているが、とりあえず氷が弱点らしい。
「なら、話が早いわ」
そう言うとメアリーは空を飛んだ状態のまま、ドラゴンを取り囲むように氷の石柱を出現させる。
「…もうあいつ一人でいいんじゃないかな?」
どっかで聞いたことのあるような台詞をロベルトが吐いた時、氷の石柱は地面に突き刺され、そこから無数の氷塊となってドラゴン一直線に向かって爆散していく。
グオオオオオ!!!!!!
ここで初めてドラゴンが悲鳴を上げた。その悲鳴は周囲一帯を木霊させる。
「よし、このまま一気に…!」
「待て!待つんだ!若いの!」
その時だった。視界の端のほうかは急ぎ足でこちらへと向かってきた人物に気づいた。
「お婆さん!?」
「待て…駄目じゃ…」
お婆さん…ヨモ婆は息をゼイゼイ切らしながらも待てと言ってくる。この状態で待つのはこのドラゴンを倒すこと以外存在しないように思えるがどういうことだ…
「そいつ…そいつは…ドラゴンではない…」
「へ…?」
いやどこからどう見てもドラゴンですよと言おうとしたその矢先、ヨモ婆は言った。
「そいつは竜人だ」
「…へ」
「そいつは今暴走しておる…竜人は竜の力を解放し、竜そのものに変化できる。今そやつは変化した後の存在なんじゃよ…」
「…メアリー!」
「え、う、うん…」
メアリーはすぐさま魔法のこれ以上の発動を止めた。
やがて氷塊の中から人の手のような物が出てきたのはまた後の話である。
始祖は魔族、魔族の根源とされた地下空間から派生し、生まれたという説。竜人種が野生化もしくは突然変異し、長年を得て今の様々な形のドラゴンに生まれ変わった説など多岐にわたる。
というか訳の分からないことだらけのことが多すぎる。どのくらいかで言えば天文学くらいである。
「ポイズンドラゴンかー、の中でも上位種っぽいのだね」
「ただのポイズンドラゴンじゃなさそうね」
ロベルトとメアリーはいち早く、目の前に相対するドラゴンが只者でないことに気づいていた。
「ま、あの空飛ぶ狼よりは幾分かマシかなあ、一発でも攻撃が当たったら即落ちするけど」
何もマシじゃねえ。俺は心の中でそう呟いた。
さて、目の前にいるドラゴンの特徴はと言うと、鎌脚状の四足で歩みを進め、一対の羽、緑色の鎧のような皮膚を纏った大型のドラゴンである。
ただ、何かおかしいのはそういう姿をしているということだけは分かる。分かるのだがはっきりと居場所が掴めない感覚に何故か陥るのだ。
「ボヤケてんな」
「多分幻影よ。私もよく姿を把握できない」
メアリーでさえもはっきりと姿は見れないらしい。どうやら視界を紛らわす幻影があのドラゴンにはあるらしい。
「気をつけて、あれがイェラネヒウドラゴンなら鎌爪には毒がある」
「え、なんて?」
「鎌爪には毒がある」
「いやその前、何ドラゴン?」
「イェラネヒウドラゴン!なんで一回で聞き取れないわけ!?」
…超発音しにくいドラゴンだってことは分かった。あとそんな怒らなくてもよくない?
「あのですね、お二人さんお二人さん、来ますよ?」
その瞬間、鎌爪がすぐ手前まで来ていることに気づいた。足元を掬う形で攻撃してくる。
「ヒャア」
ロベルトが間の抜けた声でサラリと避けていく。というより透過して攻撃を避けている。多分魔法の力だろう。
メアリーも空を飛んで避けた。道具なしで魔法が使える人間だからこそできる臨機応変。それはロベルトにも言えることだが。
じゃあ俺はと言うと、本である。まだこちとら異空間収納から取り出せてすらいないんだぞ!
「……」
俺は複雑な内心そのままに飛んで避けようとする。なんてことはない。足元を掬ってきているのだから飛べば避けれる。若干靴に掠りそうだが。
「ちなみにその鎌って毒以外にも強酸性が含まれてるらしいから注意ね」
「おい」
遅いねん。もう靴掠ったねん。ジュワジュワ行ってんねん。
「……」
俺は黙って本を取り出し、魔法で靴の腐敗を消した。
「さてさて、ポイズンドラゴン系統の弱点は大体氷です。だから極点にこいつはいないって言うね…………」
ロベルトが訳の分からないことを言っているが、とりあえず氷が弱点らしい。
「なら、話が早いわ」
そう言うとメアリーは空を飛んだ状態のまま、ドラゴンを取り囲むように氷の石柱を出現させる。
「…もうあいつ一人でいいんじゃないかな?」
どっかで聞いたことのあるような台詞をロベルトが吐いた時、氷の石柱は地面に突き刺され、そこから無数の氷塊となってドラゴン一直線に向かって爆散していく。
グオオオオオ!!!!!!
ここで初めてドラゴンが悲鳴を上げた。その悲鳴は周囲一帯を木霊させる。
「よし、このまま一気に…!」
「待て!待つんだ!若いの!」
その時だった。視界の端のほうかは急ぎ足でこちらへと向かってきた人物に気づいた。
「お婆さん!?」
「待て…駄目じゃ…」
お婆さん…ヨモ婆は息をゼイゼイ切らしながらも待てと言ってくる。この状態で待つのはこのドラゴンを倒すこと以外存在しないように思えるがどういうことだ…
「そいつ…そいつは…ドラゴンではない…」
「へ…?」
いやどこからどう見てもドラゴンですよと言おうとしたその矢先、ヨモ婆は言った。
「そいつは竜人だ」
「…へ」
「そいつは今暴走しておる…竜人は竜の力を解放し、竜そのものに変化できる。今そやつは変化した後の存在なんじゃよ…」
「…メアリー!」
「え、う、うん…」
メアリーはすぐさま魔法のこれ以上の発動を止めた。
やがて氷塊の中から人の手のような物が出てきたのはまた後の話である。
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