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魔法省人事録(11)
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かくしてやって来た3匹の巨大花は俺の手で灰燼と化すこととなった。
そして微妙な空気が漂う中、ある異変に気づく。
「あの…案内役だったお爺さんは?」
メアリーのこの一言でお爺さんを放置していたことに思い当たる。急いでさっきまでいた場所に戻ると、まだお爺さんは膝をついていた。
「一体どんな出来事があったら、あの花でこんなにな…………」
それは俺がお爺さんの肩を抱えようとした瞬間、お爺さんはバタリと地面倒れ、苦しそうに目を瞑っていた。よく見たらゼイゼイと息を切らしている。
「へ……」
____________________
「…まさかあんたも病気が感染っていたとはね」
「へ、このザマになっちゃあもう動けねえや」
お爺さんをなんとか抱えて、村まで帰ってくると残りはお婆さんが看病からを引き受けてくれた。
「あんた達が森からここまで運んでくれたのかい?」
「はい…それで…その…ごめんなさい!」
メアリーがバツの悪いような表情を浮かべた後、頭を下げる。続けて俺も。ロベルトは…ほぼ会釈だ。
「別にあんた達が謝る必要はないだろう」
「でも、私達がずっと一緒にいて、それに膝を付いたのに長い間放置して…」
よくよく考えなくてもあれは間違いだった。なんかギャグで膝を付いたと思い、全員放置していた。
しかしそれが間違いだった。あれ程汗を掻いていたのは病気のせいだとも気づけなかった。
お婆さんは私達を少しの間見据えた後
「頭を上げな。むしろあんた達には感謝しないと。あいつが病人と分かっても運んでくれたんだろう?自分達が感染ることも顧みずに」
運んだのはロベルトだ。意外にも積極的に彼が動いた。俺はお爺さんが持ってきた鍬を持って帰って来ただけ。
「あいつは大体無茶なことをしてたんだよ。村の見回りがいないからってあんな状態になるまで…まあいいさ。あんた達も疲れただろう。この辺の果物で良けりゃあ家にある。良かったら食べな」
「…………」
その後は微妙な空気が流れた。ひとまずはお婆さんの家に入れてもらった。それすらも失礼だと俺は思っていたが。
「…そんなにシンミリしなくてもいいんだよ。まだ死んだわけじゃあるまいし」
「でも…」
「ほら、果物だよ。たんと食べな。遠慮はいらないよ」
メアリーは頭を下げながらも出された果物の切り分けた物を取ろうとする。出された物は食べたほうがいいという信念は俺にもある。だから俺もメアリーと同じように果物を取ろうとした時だった。
「…食べる前に一ついいです?」
ロベルトがそう言ったのは。
「なんだい?」
「この村の生計ってどうやって立てているんですか?」
「え?」
「ほとんど自給自足ですか?」
「まあ、そうだね。足りない分は近くの街から送ってもらったり」
「この村の物はこの村で消費していたと」
「そうだよ。人口も少ないからね。持って行くにも金と人がいる。ここの老人共は魔法の一つ使えるかも怪しい…それがどうしたんだい?」
「…ある要塞はとても強固で中々陥落しませんでした。強力な結界と魔力で強化されたバリスタとカタパルトがその進軍を防いでいました」
「は…ロベルト?」
「人間を効率的に殺す魔法も効果は結界のせいか、イマイチでした。そこである人は考えました。何も剣や魔法で殺す必要はないと」
「お主…?」
俺とお婆さんは突然のロベルトの語りを不審がった。急にどうしたと言うんだ。
「次の日、その要塞の人間は全員死んでました。さて、何ででしょうか」
「どうしたの急に…気持ち悪いよ…」
メアリーの辛辣な言葉に胸を抑えるロベルト。
「うん辛辣ほんと。まあ答えなんだけどね」
そして答える間もなく答えを語ろうとした。
「水は魔法で出せる。けど野菜、魚、肉などの食物は出せない。同じ無機物でも出せるものと出せないものがある。でも水は無限に出せるわけじゃない。だから自然の水も利用する」
「…何が言いたい?」
「貯水池に毒を入れたんだよ。その水が魔法で出された綺麗な水と皆疑わなかったから。だって魔法で水ができたから」
「…お主まさか」
「病気、もっと言えば毒はこの村の水から来てる」
「じゃあもしかして…この果物にも毒があるって言いたいの?」
「この果物をこの村の水で育ててるなら、これは毒物になる」
「な…水に毒…じゃと…」
お婆さんは目を見開かせ、驚いていた。というか俺達も驚いていた。
だってこれは明らかに病気の症状だ。魔法学で魔法では防げない一部の病気、その一例に類似しすぎではないか。
「…あーあ、だからさ、最初から病気だって決めつけちゃいけないんだよ。そもそも病気だったらこんなんじゃ済まないよ」
ロベルトは意気揚々と語っている。お婆さんは驚きながらロベルトに確認した。
「本当なのかそれは?」
「間違いないよ。森に行くついでに水質見たら真っ黒に近い反応だったよ。今分かったけど」
「どうして分かったんじゃ…?」
「んー、まあ秘密かな。そういうのが分かるってことしか」
その直後だろうか。ズシン!という大きな音が響いたのは。
「この感じ…ドラゴンか…速いなしかも」
魔力探知の第六感がかなり強い魔物だと示していた。
「よし、聞いた話だとポイズンドラゴン、つまり諸悪の根源が高いって話だな。冒険者に代わって討伐させてもらうか」
「まあ多少の越権くらいはいいわ。私達もお爺さんをもっと早く助けれなかったわけだし、ここて取り戻さないと」
俺とメアリーの意見が珍しく一致した。
「あのね、僕が全部ここまで導き出したんだよ。ねえそれとも疑ってる?まだ話は終わってな…」
ロベルトが最後まで言い終える前に外に出た。
そして微妙な空気が漂う中、ある異変に気づく。
「あの…案内役だったお爺さんは?」
メアリーのこの一言でお爺さんを放置していたことに思い当たる。急いでさっきまでいた場所に戻ると、まだお爺さんは膝をついていた。
「一体どんな出来事があったら、あの花でこんなにな…………」
それは俺がお爺さんの肩を抱えようとした瞬間、お爺さんはバタリと地面倒れ、苦しそうに目を瞑っていた。よく見たらゼイゼイと息を切らしている。
「へ……」
____________________
「…まさかあんたも病気が感染っていたとはね」
「へ、このザマになっちゃあもう動けねえや」
お爺さんをなんとか抱えて、村まで帰ってくると残りはお婆さんが看病からを引き受けてくれた。
「あんた達が森からここまで運んでくれたのかい?」
「はい…それで…その…ごめんなさい!」
メアリーがバツの悪いような表情を浮かべた後、頭を下げる。続けて俺も。ロベルトは…ほぼ会釈だ。
「別にあんた達が謝る必要はないだろう」
「でも、私達がずっと一緒にいて、それに膝を付いたのに長い間放置して…」
よくよく考えなくてもあれは間違いだった。なんかギャグで膝を付いたと思い、全員放置していた。
しかしそれが間違いだった。あれ程汗を掻いていたのは病気のせいだとも気づけなかった。
お婆さんは私達を少しの間見据えた後
「頭を上げな。むしろあんた達には感謝しないと。あいつが病人と分かっても運んでくれたんだろう?自分達が感染ることも顧みずに」
運んだのはロベルトだ。意外にも積極的に彼が動いた。俺はお爺さんが持ってきた鍬を持って帰って来ただけ。
「あいつは大体無茶なことをしてたんだよ。村の見回りがいないからってあんな状態になるまで…まあいいさ。あんた達も疲れただろう。この辺の果物で良けりゃあ家にある。良かったら食べな」
「…………」
その後は微妙な空気が流れた。ひとまずはお婆さんの家に入れてもらった。それすらも失礼だと俺は思っていたが。
「…そんなにシンミリしなくてもいいんだよ。まだ死んだわけじゃあるまいし」
「でも…」
「ほら、果物だよ。たんと食べな。遠慮はいらないよ」
メアリーは頭を下げながらも出された果物の切り分けた物を取ろうとする。出された物は食べたほうがいいという信念は俺にもある。だから俺もメアリーと同じように果物を取ろうとした時だった。
「…食べる前に一ついいです?」
ロベルトがそう言ったのは。
「なんだい?」
「この村の生計ってどうやって立てているんですか?」
「え?」
「ほとんど自給自足ですか?」
「まあ、そうだね。足りない分は近くの街から送ってもらったり」
「この村の物はこの村で消費していたと」
「そうだよ。人口も少ないからね。持って行くにも金と人がいる。ここの老人共は魔法の一つ使えるかも怪しい…それがどうしたんだい?」
「…ある要塞はとても強固で中々陥落しませんでした。強力な結界と魔力で強化されたバリスタとカタパルトがその進軍を防いでいました」
「は…ロベルト?」
「人間を効率的に殺す魔法も効果は結界のせいか、イマイチでした。そこである人は考えました。何も剣や魔法で殺す必要はないと」
「お主…?」
俺とお婆さんは突然のロベルトの語りを不審がった。急にどうしたと言うんだ。
「次の日、その要塞の人間は全員死んでました。さて、何ででしょうか」
「どうしたの急に…気持ち悪いよ…」
メアリーの辛辣な言葉に胸を抑えるロベルト。
「うん辛辣ほんと。まあ答えなんだけどね」
そして答える間もなく答えを語ろうとした。
「水は魔法で出せる。けど野菜、魚、肉などの食物は出せない。同じ無機物でも出せるものと出せないものがある。でも水は無限に出せるわけじゃない。だから自然の水も利用する」
「…何が言いたい?」
「貯水池に毒を入れたんだよ。その水が魔法で出された綺麗な水と皆疑わなかったから。だって魔法で水ができたから」
「…お主まさか」
「病気、もっと言えば毒はこの村の水から来てる」
「じゃあもしかして…この果物にも毒があるって言いたいの?」
「この果物をこの村の水で育ててるなら、これは毒物になる」
「な…水に毒…じゃと…」
お婆さんは目を見開かせ、驚いていた。というか俺達も驚いていた。
だってこれは明らかに病気の症状だ。魔法学で魔法では防げない一部の病気、その一例に類似しすぎではないか。
「…あーあ、だからさ、最初から病気だって決めつけちゃいけないんだよ。そもそも病気だったらこんなんじゃ済まないよ」
ロベルトは意気揚々と語っている。お婆さんは驚きながらロベルトに確認した。
「本当なのかそれは?」
「間違いないよ。森に行くついでに水質見たら真っ黒に近い反応だったよ。今分かったけど」
「どうして分かったんじゃ…?」
「んー、まあ秘密かな。そういうのが分かるってことしか」
その直後だろうか。ズシン!という大きな音が響いたのは。
「この感じ…ドラゴンか…速いなしかも」
魔力探知の第六感がかなり強い魔物だと示していた。
「よし、聞いた話だとポイズンドラゴン、つまり諸悪の根源が高いって話だな。冒険者に代わって討伐させてもらうか」
「まあ多少の越権くらいはいいわ。私達もお爺さんをもっと早く助けれなかったわけだし、ここて取り戻さないと」
俺とメアリーの意見が珍しく一致した。
「あのね、僕が全部ここまで導き出したんだよ。ねえそれとも疑ってる?まだ話は終わってな…」
ロベルトが最後まで言い終える前に外に出た。
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