222 / 237
第197話 テロリスト首謀者
しおりを挟む
大統領車列の襲撃。この大きな仕事を任され、まとめ役のなった彼は貰い受けた野蛮人を引き連れ、カリフォルニアへと上陸した。
彼は今、隣にいたその野蛮人が撃ち抜かれたことをすぐに理解した。私以外の全ては撃ち抜かれていた。
ただ一人、私だけが無事だった。狙われなかったのか、生かされたのか、いやもしかしたら銃弾が掠めた可能性だってある。
私は右で死んだ彼を無下にするかのようにバン!とドアを開け、彼を盾とした。
「逃がすな。足くらいなら撃って構わん」
冷酷な声が聞こえた。暖かみの欠片もなかった。それを言ったのは多分、後ろ目に見た黒コート姿の男、CIAのような風貌の奴だろう。奴だけが武装した特殊部隊とは違っていた。
私は逃げた。今は名もなき者となり、このような様になったのは何故かを思い返しながら…
(やはりアメリカはクソったれだ。何もかもクソったれだ…)
____________________
-2004年 アフガニスタン クンドゥーズ州-
2004年、米軍によるアフガニスタン侵攻から3年。全ての始まりはあの日からである。
2001年9月11日
アメリカ合衆国ニューヨークの世界貿易センタービル。
バージニア州アーリントンの国防総省本庁舎。
ペンシルベニア州シャンクスビル
以上3つの場所に合計4機の飛行機が突入あるいは墜落し、2977人死亡、25000人以上の負傷、100億ドルのインフラ被害と物的被害を出すという最悪のテロ事件。
後に9.11同時多発テロと呼ばれるこの事件をきっかけに当時のアメリカ政府はテロを実行に移したテロ組織の温床であるアフガニスタンへの侵攻を開始。
アフガニスタン紛争と呼ばれるこの先20年続く紛争の始まりである。
足を踏み入れたこの地で私達アメリカ海兵隊は政府が求めるままに行動した。
だがその報いはこれである。ある日私達の小隊は一般車に偽装した車に乗って、言い渡された任務を遂行しようとしていた。
ゲリラのような戦法、当時はそれを行うつもりであった。体裁を整えるためかあくまで極秘という付箋を貼って。
政府は何としてでもテロの首謀者を捕まえ、いや排除しようとあらゆる手を使っているのが見て取れた。無論私達も多数のアメリカ国民の命を奪ったあの事件に激しい怒りを覚えた。
しかし空を飛行機の影が覆い、そこから一般車ましてや戦車すらも貫く弾丸が放たれるのは10秒もかからなかった。
何分か気を失い、ひっくり返り、炎上する車やら、道に大きく外れ、露出した岩肌にぶつかる車、そこから必死に這いずるように出てくる兵士達。
炎と鉄屑、そして血と死骸の地獄へとその場を一気に変えた。
上空を見上げ、心底驚いたのはその飛行機は間違いなく米軍のものだったからだ。
後に聞いた話では、海兵隊本部が実行しようとしていた作戦は空軍には上手く伝わっていなかった。念の為の偵察衛星が私達の上空を旋回していたらしいが、上官がそれを一蹴し、すぐ様地上を跡形もなく消し去ったということらしい。
私は当時若く、まだ伍長という階級の低い立場だった。だが国のために働こうとしたこの想いは国によって打ち砕かれた。
私はあの事故以降文字が読めなくなっていた。
彼は今、隣にいたその野蛮人が撃ち抜かれたことをすぐに理解した。私以外の全ては撃ち抜かれていた。
ただ一人、私だけが無事だった。狙われなかったのか、生かされたのか、いやもしかしたら銃弾が掠めた可能性だってある。
私は右で死んだ彼を無下にするかのようにバン!とドアを開け、彼を盾とした。
「逃がすな。足くらいなら撃って構わん」
冷酷な声が聞こえた。暖かみの欠片もなかった。それを言ったのは多分、後ろ目に見た黒コート姿の男、CIAのような風貌の奴だろう。奴だけが武装した特殊部隊とは違っていた。
私は逃げた。今は名もなき者となり、このような様になったのは何故かを思い返しながら…
(やはりアメリカはクソったれだ。何もかもクソったれだ…)
____________________
-2004年 アフガニスタン クンドゥーズ州-
2004年、米軍によるアフガニスタン侵攻から3年。全ての始まりはあの日からである。
2001年9月11日
アメリカ合衆国ニューヨークの世界貿易センタービル。
バージニア州アーリントンの国防総省本庁舎。
ペンシルベニア州シャンクスビル
以上3つの場所に合計4機の飛行機が突入あるいは墜落し、2977人死亡、25000人以上の負傷、100億ドルのインフラ被害と物的被害を出すという最悪のテロ事件。
後に9.11同時多発テロと呼ばれるこの事件をきっかけに当時のアメリカ政府はテロを実行に移したテロ組織の温床であるアフガニスタンへの侵攻を開始。
アフガニスタン紛争と呼ばれるこの先20年続く紛争の始まりである。
足を踏み入れたこの地で私達アメリカ海兵隊は政府が求めるままに行動した。
だがその報いはこれである。ある日私達の小隊は一般車に偽装した車に乗って、言い渡された任務を遂行しようとしていた。
ゲリラのような戦法、当時はそれを行うつもりであった。体裁を整えるためかあくまで極秘という付箋を貼って。
政府は何としてでもテロの首謀者を捕まえ、いや排除しようとあらゆる手を使っているのが見て取れた。無論私達も多数のアメリカ国民の命を奪ったあの事件に激しい怒りを覚えた。
しかし空を飛行機の影が覆い、そこから一般車ましてや戦車すらも貫く弾丸が放たれるのは10秒もかからなかった。
何分か気を失い、ひっくり返り、炎上する車やら、道に大きく外れ、露出した岩肌にぶつかる車、そこから必死に這いずるように出てくる兵士達。
炎と鉄屑、そして血と死骸の地獄へとその場を一気に変えた。
上空を見上げ、心底驚いたのはその飛行機は間違いなく米軍のものだったからだ。
後に聞いた話では、海兵隊本部が実行しようとしていた作戦は空軍には上手く伝わっていなかった。念の為の偵察衛星が私達の上空を旋回していたらしいが、上官がそれを一蹴し、すぐ様地上を跡形もなく消し去ったということらしい。
私は当時若く、まだ伍長という階級の低い立場だった。だが国のために働こうとしたこの想いは国によって打ち砕かれた。
私はあの事故以降文字が読めなくなっていた。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説

玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~
やみのよからす
ファンタジー
病院で病死したはずの月島玲子二十五歳大学研究職。目を覚ますと、そこに広がるは広大な森林原野、後ろに控えるは赤いドラゴン(ニヤニヤ)、そんな自分は十歳の体に(材料が足りませんでした?!)。
時は、自分が死んでからなんと三千万年。舞台は太陽系から離れて二百二十五光年の一惑星。新しく作られた超科学なミラクルボディーに生前の記憶を再生され、地球で言うところの中世後半くらいの王国で生きていくことになりました。
べつに、言ってはいけないこと、やってはいけないことは決まっていません。ドラゴンからは、好きに生きて良いよとお墨付き。実現するのは、はたは理想の社会かデストピアか?。
月島玲子、自重はしません!。…とは思いつつ、小市民な私では、そんな世界でも暮らしていく内に周囲にいろいろ絆されていくわけで。スーパー玲子の明日はどっちだ?
カクヨムにて一週間ほど先行投稿しています。
書き溜めは100話越えてます…

怠惰の魔王
sasina
ファンタジー
年齢一桁で異世界転移してしまった天月 鈴。
運良く拾ってもらい、10年間育てられる。
ある日、この異世界イデアが違う世界と繋がってしまい、その繋がってしまった世界と言うのが10年前の地球だった。
折角、繋がったので懐かしの地球に行ってみると、世界の強制力か、体も10年前の姿に戻ってしまった。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

異世界から帰ってきた勇者は既に擦り切れている。
暁月ライト
ファンタジー
魔王を倒し、邪神を滅ぼし、五年の冒険の果てに役割を終えた勇者は地球へと帰還する。 しかし、遂に帰還した地球では何故か三十年が過ぎており……しかも、何故か普通に魔術が使われており……とはいえ最強な勇者がちょっとおかしな現代日本で無双するお話です。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
やっと買ったマイホームの半分だけ異世界に転移してしまった
ぽてゆき
ファンタジー
涼坂直樹は可愛い妻と2人の子供のため、頑張って働いた結果ついにマイホームを手に入れた。
しかし、まさかその半分が異世界に転移してしまうとは……。
リビングの窓を開けて外に飛び出せば、そこはもう魔法やダンジョンが存在するファンタジーな異世界。
現代のごくありふれた4人(+猫1匹)家族と、異世界の住人との交流を描いたハートフルアドベンチャー物語!

催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~
山田 武
ファンタジー
テンプレのように異世界にクラスごと召喚された主人公──イム。
与えられた力は面倒臭がりな彼に合った能力──睡眠に関するもの……そして催眠魔法。
そんな力を使いこなし、のらりくらりと異世界を生きていく。
「──誰か、養ってくれない?」
この物語は催眠の力をR18指定……ではなく自身の自堕落ライフのために使う、一人の少年の引き籠もり譚。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる