219 / 237
第194話 大統領と車列とTSA(8)
しおりを挟む
2022年9月16日 現地標準時
午後2時30分
アメリカ合衆国 カリフォルニア州
ロングビーチハイウェイ
____________________
ババババとブラックホークが機体下に広がる高速道路の真上で滞空する。
その様子をテロリスト、あるいは生き残り、応戦するSPと警察官の目を惹き付けることとなった。
「ブラックホークだと…」
テロリストのリーダー的な存在はそう言った。彼は元米軍兵士でとある事情でアメリカ政府とアメリカという国家自体に嫌気が差し、この作戦に積極的に参加した。
その心にはアメリカ国民と国土を守るという元兵士としての意向や忠義は既に完全になく、今はただ危険なテロリストとして存在した。
彼は自分が考える作戦にはこんなのなかったはずだと考えた。
SPの武器兵器は兵士時代の伝手で全て把握した。更にはこちらへとやって来るであろうロサンゼルス市警の予想勢力とそれを撃退できるであろう銃、爆弾、弾薬、そして優秀な人員も用意した。
だが彼は察した。この場を任せてくれた真のリーダーには悪いが、あれは軍用ヘリコプターであり、そこからラペリング降下で下へと降り立つ兵士は正しく洗練された部隊だった。あれと相手すればこちらが負ける。その前に撤退しなければ…
彼は急いで大統領の息の根を完全に止めることを決意し、大統領がいるであろうビースト目掛けてC4爆弾が入った最後のバッグをそこに投げた。
既にこのバッグを三回、ビーストに直撃させている。そしておそらくビーストの耐爆性能を考えるに、これで大統領は完全に爆殺を…
「ッッ!」
だが彼は最後の最後でしくじった。
爆弾バッグを投げようとしたその右肩は銃弾で撃ち抜かれていた。
そのせいでコントロールを失い、爆弾はあらぬ方向に投げられ、そして
ドガァァァンン!!!!
爆炎を起こした。彼はそのまま右膝をついた。彼の周りのテロリストはすぐにそれに気づき、彼を助けようと近づく。
またM2重機関銃でそれまで弾薬をばら撒いていたテロリストはすぐにヘリコプターを落とそうとその矛先をヘリコプターに向けた……まではよかった。
次の瞬間、そのテロリストの体は間違いなく蜂の巣へと変わったのだ。そしてM2重機関銃を撃つ暇もなく、バタリとピックアップトラックの荷台から落ちる。
ブラックホークのGAU-19は彼の体を一瞬にして、蜂の巣にした。
「なっ…」
他のテロリストは突然の出来事の多さに戸惑い、すぐさまするべき行動ができなかった。
GAU-19はその間に上から見下ろす形で銃撃していたテロリストに向かって、風が木々を薙ぎ倒すように次々と銃弾をばら撒いていく。
「がっ!」
「げっ!」
「ぐは!」
次々と死んでいくテロリスト、容赦のない銃撃、そして地上に降り立った特殊部隊は混乱に乗じ、次々テロリストを倒していく。
彼らは逃げるしかなかった。すぐさま乗ってきた車へと向かおうとしていた。
一瞬にして、戦場の優位性は変わった。それをトーマス フォードはただ見ることしかできなかった。
ただ、彼は自身の願いが無事に届いたことに強く感謝した。
「エレナ…助かった…」
彼は感謝した。
午後2時30分
アメリカ合衆国 カリフォルニア州
ロングビーチハイウェイ
____________________
ババババとブラックホークが機体下に広がる高速道路の真上で滞空する。
その様子をテロリスト、あるいは生き残り、応戦するSPと警察官の目を惹き付けることとなった。
「ブラックホークだと…」
テロリストのリーダー的な存在はそう言った。彼は元米軍兵士でとある事情でアメリカ政府とアメリカという国家自体に嫌気が差し、この作戦に積極的に参加した。
その心にはアメリカ国民と国土を守るという元兵士としての意向や忠義は既に完全になく、今はただ危険なテロリストとして存在した。
彼は自分が考える作戦にはこんなのなかったはずだと考えた。
SPの武器兵器は兵士時代の伝手で全て把握した。更にはこちらへとやって来るであろうロサンゼルス市警の予想勢力とそれを撃退できるであろう銃、爆弾、弾薬、そして優秀な人員も用意した。
だが彼は察した。この場を任せてくれた真のリーダーには悪いが、あれは軍用ヘリコプターであり、そこからラペリング降下で下へと降り立つ兵士は正しく洗練された部隊だった。あれと相手すればこちらが負ける。その前に撤退しなければ…
彼は急いで大統領の息の根を完全に止めることを決意し、大統領がいるであろうビースト目掛けてC4爆弾が入った最後のバッグをそこに投げた。
既にこのバッグを三回、ビーストに直撃させている。そしておそらくビーストの耐爆性能を考えるに、これで大統領は完全に爆殺を…
「ッッ!」
だが彼は最後の最後でしくじった。
爆弾バッグを投げようとしたその右肩は銃弾で撃ち抜かれていた。
そのせいでコントロールを失い、爆弾はあらぬ方向に投げられ、そして
ドガァァァンン!!!!
爆炎を起こした。彼はそのまま右膝をついた。彼の周りのテロリストはすぐにそれに気づき、彼を助けようと近づく。
またM2重機関銃でそれまで弾薬をばら撒いていたテロリストはすぐにヘリコプターを落とそうとその矛先をヘリコプターに向けた……まではよかった。
次の瞬間、そのテロリストの体は間違いなく蜂の巣へと変わったのだ。そしてM2重機関銃を撃つ暇もなく、バタリとピックアップトラックの荷台から落ちる。
ブラックホークのGAU-19は彼の体を一瞬にして、蜂の巣にした。
「なっ…」
他のテロリストは突然の出来事の多さに戸惑い、すぐさまするべき行動ができなかった。
GAU-19はその間に上から見下ろす形で銃撃していたテロリストに向かって、風が木々を薙ぎ倒すように次々と銃弾をばら撒いていく。
「がっ!」
「げっ!」
「ぐは!」
次々と死んでいくテロリスト、容赦のない銃撃、そして地上に降り立った特殊部隊は混乱に乗じ、次々テロリストを倒していく。
彼らは逃げるしかなかった。すぐさま乗ってきた車へと向かおうとしていた。
一瞬にして、戦場の優位性は変わった。それをトーマス フォードはただ見ることしかできなかった。
ただ、彼は自身の願いが無事に届いたことに強く感謝した。
「エレナ…助かった…」
彼は感謝した。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
実の妹が前世の嫁だったらしいのだが(困惑)
七三 一二十
ファンタジー
ある朝、俺は突然、前世で異世界の勇者だったことを思い出した。
勇者には聖女の恋人がいた。たおやかで美しい彼女の面影を思い浮かべるほど、現世でもみかけた気がしてくる俺。
頭を抱えているとドタドタ足音をたてて、妹が部屋に駆け込んできた。
「にいちゃんっ!」
翡翠色の瞳に輝くような金髪、これまで意識しなかったけど超整った顔立ち…俺の懸念は的中した。妹は前世の恋人、”光の聖女”の転生体だったのだ。しかも俺と同時に、前世の記憶を取り戻していた。
気まずさに懊悩する俺をよそに、アホアホな妹は躊躇なく俺にキスを迫ってくる!
「せっかく記憶が戻ったんだから、ちいさいこと気にするのはなしにしよーよ。ギブミーキース、ギブミーキース…」
「戦後か!」
前世の恋人兼聖女の妹から、元勇者な俺は貞節とモラルと世間体を守れるのだろうか…というか記憶が戻った途端、妹が可愛くみえてしょうがねーな、ちくしょー!(血涙)
※不定期更新となります。どうかご了承のほどを。
※本作は小説家になろう様にも掲載しております。
本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。
なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。
しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。
探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。
だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。
――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。
Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。
Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。
それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。
失意の内に意識を失った一馬の脳裏に
――チュートリアルが完了しました。
と、いうシステムメッセージが流れる。
それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
アレク・プランタン
かえるまる
ファンタジー
長く辛い闘病が終わった
と‥‥転生となった
剣と魔法が織りなす世界へ
チートも特典も何もないまま
ただ前世の記憶だけを頼りに
俺は精一杯やってみる
毎日更新中!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
高校からの帰り道、錬金術が使えるようになりました。
マーチ・メイ
ファンタジー
女子校に通う高校2年生の橘優奈は学校からの帰り道、突然『【職業】錬金術師になりました』と声が聞こえた。
空耳かと思い家に入り試しにステータスオープンと唱えるとステータスが表示された。
しばらく高校生活を楽しみつつ家で錬金術を試してみることに 。
すると今度はダンジョンが出現して知らない外国の人の名前が称号欄に現れた。
緩やかに日常に溶け込んでいく黎明期メインのダンジョン物です。
小説家になろう、カクヨムでも掲載しております。
スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜
櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。
パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。
車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。
ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!!
相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム!
けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!!
パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!
一番モテないヒロインに転生しましたが、なぜかモテてます
Teko
ファンタジー
ある日私は、男の子4人、女の子4人の幼なじみ達が出てくる乙女ゲームを買った。
魔法の世界が舞台のファンタジーゲームで、プレーヤーは4人の女の子の中から1人好きなヒロインを選ぶ事ができる。
・可愛くて女の子らしい、守ってあげたくなるようなヒロイン「マイヤ」
・スポーツ、勉強と何でもできるオールマイティーなヒロイン「セレス」
・クールでキレイな顔立ち、笑顔でまわりを虜にしてしまうヒロイン「ルナ」
・顔立ちは悪くないけど、他の3人が飛び抜けている所為か平凡に見られがちなヒロイン「アリア」
4人目のヒロイン「アリア」を選択する事はないな……と思っていたら、いつの間にか乙女ゲームの世界に転生していた!
しかも、よりにもよって一番モテないヒロインの「アリア」に!!
モテないキャラらしく恋愛なんて諦めて、魔法を使い楽しく生きよう! と割り切っていたら……?
本編の話が長くなってきました。
1話から読むのが大変……という方は、「子どもの頃(入学前)」編 、「中等部」編をすっと飛ばして「第1部まとめ」、「登場人物紹介」、「第2部まとめ」、「第3部まとめ」からどうぞ!
※「登場人物紹介」はイメージ画像ありがございます。
※自分の中のイメージを大切にしたい方は、通常の「登場人物紹介」の主要キャラ、サブキャラのみご覧ください。
※長期連載作品になります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる