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第191話 大統領と車列とTSA(5)
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一発の銃声が表すことは何か。
オートマティックの銃の場合、引き金を少ししか引かなくとも銃弾は一発のみならず何十発と出てくる。
つまり一発というのは単発の銃が発砲した音だ。トーマス フォードは見事に勝利し、相手の眉間を撃ち抜くことができた。
こうして私に接近していた三人を倒すことはできた。
「くっ…」
だがやはり援護射撃に徹していた後方の二人が車の影から出たことでいい的となった私を撃ち抜こうとしてくる。
(あの距離では拳銃で倒しきれない。何より車が障害物となって邪魔だ)
その時だった。
「行け行け行け!!!」
私と残った銃撃者二人の射線を遮るように、SPの特殊部隊が間に入ってくる。
見える限り6人で黒のボディアーマーとヘルメットにM4を装備した彼らは後方の銃撃者二人に銃を撃たせる隙を与えない。
やがて銃撃者の一人がM4の5.56m弾に倒れ、残った一人もやがては撃たれる。
「奥のほうでまだ戦闘が起きてる!我々が横っ腹を突くぞ!」
特殊部隊の隊長らしき男はそう言ったあと、私に近づく。
「あんたのおかげで打開策ができた。感謝するよ」
「…大統領の方に人手は行ったのか?」
「別動隊として動いてもらってる。俺達で対向車線側の奴らを潰しにかかる」
「分かった…」
私が了解という意味で少し頷くと、隊長はすぐに前へ前へと進み出す。
「できるだけ一般車に銃弾を当てるな!不要な爆発を防げ!」
そして今特殊部隊と大統領車列襲撃者との全面的な銃撃戦が始まった。
「敵数5名!全員自動小銃を所持している模様!」
一人の隊員がそう言った時、また他の隊員がそれを遮るように大きい声で叫ぶ。
「グレネード!グレネード!」
その声に私と隊員合わせて全員が一般車の影に隠れる。程なくしてドカン!という爆発と共に破片が飛び散る。
「手榴弾…!」
私怨を込めながらそう言い放った。あれで私の同僚は先程死んでいったのだ。
「上にいる奴らの注意が逸れてる。前進するぞ!」
上にいる奴らというのはサン・ディエゴフリーウェイに入るための道から撃ってる奴らのことだろう。
大統領が乗るビーストまではもう少しだと言うところだった。
サン・ディエゴフリーウェイから逆走する形で上から射撃する銃撃者達がいる道へと入って行く車を目にした。
その車は白のピックアップトラック、いわば大きくした軽トラみたいな物だがその車は我々からの銃撃を阻むように道路沿いに止まった。
特異なことは荷台部分に何か緑色の布みたいな物を縄で固定し、被せていたことだ。
(なんだ…あの車…まさか…)
嫌な予感、というより銃撃戦で投入されたあの車に何もないわけがない。間違いなくあのトラックの荷台には武器もしくは兵器が載っている。
そしてトラックの荷台の布はバサリと取られる。やはりというか何か黒い銃身のような物が固定されているのが遠くからでもよく見て取れた。
その黒い銃身の大きさ、そして形状はよく記憶している物だった。主に古くから米軍に愛された…
「M2…重機関銃…まずい!全員M2だ!物陰に隠れろ!」
私の言葉にSPの特殊部隊全員に戦慄が走った。そして…
ガギャギャギャダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ
ピシュンピシュンという着弾音、衝撃で凹んでいく一般車、割れて飛び散る車両の窓ガラスとカーブミラー。
「M2だ!薙ぎ倒されるぞ!」
特殊部隊の前進は完全に止まってしまった。
「別動隊のニ名が被弾ッァ…」
ドカァァンン!!!!
M2重機関銃によってガソリンが引火したのか一般車が炎を上げながら爆発する。
「まずいぞ!爆破の連鎖がここまで…!」
我々は今車両で埋め尽くされた車道にいた。しかも…
「奴ら…SPの人間だけじゃなくて車のエンジン部分を狙って撃ってやがる…」
M2重機関銃は一般車のエンジン部分またはガソリンの給油口を撃って誘爆をさせようとしていた。
(おそらく私と一緒にいる特殊部隊より前にいたSPや警察官はほぼ後退したか全滅なのだろう、あの重機関銃を前に…)
私はさすがに重機関銃の弾幕には手出しのしようがなく、ただ少しでも銃弾を避けるようにと止まってあったトラックを盾に、身を潜めるしかなかった。
_________________
「サン・ディエゴフリーウェイから民間人を連れてこい!」
「M2の弾幕を止めさせるな!手榴弾で敵をバラバラにさせろ!」
「C4バッグはまだ残ってるか?残ってるなら後から来る警察共に使え!」
大統領車列の襲撃者の士気は高かった。ほぼ即席で作った部隊とは思えないほどに。
「しかし良かったんですか?このM2は後の追手撃退用のために使うんじゃあ…」
「弾はいくらでもあるからな。ここで秘密兵器を投入しても問題はない。それに…」
「それに…?」
「俺達は軍隊だ。アイルランドを取り返す軍隊、軍隊らしい武器兵器は使わないとな」
オートマティックの銃の場合、引き金を少ししか引かなくとも銃弾は一発のみならず何十発と出てくる。
つまり一発というのは単発の銃が発砲した音だ。トーマス フォードは見事に勝利し、相手の眉間を撃ち抜くことができた。
こうして私に接近していた三人を倒すことはできた。
「くっ…」
だがやはり援護射撃に徹していた後方の二人が車の影から出たことでいい的となった私を撃ち抜こうとしてくる。
(あの距離では拳銃で倒しきれない。何より車が障害物となって邪魔だ)
その時だった。
「行け行け行け!!!」
私と残った銃撃者二人の射線を遮るように、SPの特殊部隊が間に入ってくる。
見える限り6人で黒のボディアーマーとヘルメットにM4を装備した彼らは後方の銃撃者二人に銃を撃たせる隙を与えない。
やがて銃撃者の一人がM4の5.56m弾に倒れ、残った一人もやがては撃たれる。
「奥のほうでまだ戦闘が起きてる!我々が横っ腹を突くぞ!」
特殊部隊の隊長らしき男はそう言ったあと、私に近づく。
「あんたのおかげで打開策ができた。感謝するよ」
「…大統領の方に人手は行ったのか?」
「別動隊として動いてもらってる。俺達で対向車線側の奴らを潰しにかかる」
「分かった…」
私が了解という意味で少し頷くと、隊長はすぐに前へ前へと進み出す。
「できるだけ一般車に銃弾を当てるな!不要な爆発を防げ!」
そして今特殊部隊と大統領車列襲撃者との全面的な銃撃戦が始まった。
「敵数5名!全員自動小銃を所持している模様!」
一人の隊員がそう言った時、また他の隊員がそれを遮るように大きい声で叫ぶ。
「グレネード!グレネード!」
その声に私と隊員合わせて全員が一般車の影に隠れる。程なくしてドカン!という爆発と共に破片が飛び散る。
「手榴弾…!」
私怨を込めながらそう言い放った。あれで私の同僚は先程死んでいったのだ。
「上にいる奴らの注意が逸れてる。前進するぞ!」
上にいる奴らというのはサン・ディエゴフリーウェイに入るための道から撃ってる奴らのことだろう。
大統領が乗るビーストまではもう少しだと言うところだった。
サン・ディエゴフリーウェイから逆走する形で上から射撃する銃撃者達がいる道へと入って行く車を目にした。
その車は白のピックアップトラック、いわば大きくした軽トラみたいな物だがその車は我々からの銃撃を阻むように道路沿いに止まった。
特異なことは荷台部分に何か緑色の布みたいな物を縄で固定し、被せていたことだ。
(なんだ…あの車…まさか…)
嫌な予感、というより銃撃戦で投入されたあの車に何もないわけがない。間違いなくあのトラックの荷台には武器もしくは兵器が載っている。
そしてトラックの荷台の布はバサリと取られる。やはりというか何か黒い銃身のような物が固定されているのが遠くからでもよく見て取れた。
その黒い銃身の大きさ、そして形状はよく記憶している物だった。主に古くから米軍に愛された…
「M2…重機関銃…まずい!全員M2だ!物陰に隠れろ!」
私の言葉にSPの特殊部隊全員に戦慄が走った。そして…
ガギャギャギャダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ
ピシュンピシュンという着弾音、衝撃で凹んでいく一般車、割れて飛び散る車両の窓ガラスとカーブミラー。
「M2だ!薙ぎ倒されるぞ!」
特殊部隊の前進は完全に止まってしまった。
「別動隊のニ名が被弾ッァ…」
ドカァァンン!!!!
M2重機関銃によってガソリンが引火したのか一般車が炎を上げながら爆発する。
「まずいぞ!爆破の連鎖がここまで…!」
我々は今車両で埋め尽くされた車道にいた。しかも…
「奴ら…SPの人間だけじゃなくて車のエンジン部分を狙って撃ってやがる…」
M2重機関銃は一般車のエンジン部分またはガソリンの給油口を撃って誘爆をさせようとしていた。
(おそらく私と一緒にいる特殊部隊より前にいたSPや警察官はほぼ後退したか全滅なのだろう、あの重機関銃を前に…)
私はさすがに重機関銃の弾幕には手出しのしようがなく、ただ少しでも銃弾を避けるようにと止まってあったトラックを盾に、身を潜めるしかなかった。
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「サン・ディエゴフリーウェイから民間人を連れてこい!」
「M2の弾幕を止めさせるな!手榴弾で敵をバラバラにさせろ!」
「C4バッグはまだ残ってるか?残ってるなら後から来る警察共に使え!」
大統領車列の襲撃者の士気は高かった。ほぼ即席で作った部隊とは思えないほどに。
「しかし良かったんですか?このM2は後の追手撃退用のために使うんじゃあ…」
「弾はいくらでもあるからな。ここで秘密兵器を投入しても問題はない。それに…」
「それに…?」
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