現代転生 _その日世界は変わった_

胚芽米

文字の大きさ
上 下
210 / 237

第185話 世界を変える者達(3)

しおりを挟む
2022年 9月16日 日本標準時
午後10時4分
日本 神奈川県川崎市
_________________
事件が起きてから1日と半日が経過した。日は沈み、既に街中には夜の明かりが付いている時間。だが混乱はいまや収まるどころか神奈川、埼玉、茨城にまで広がり、既に南関東は混乱の渦に包まれた最中であった。

「…TSAは彼らの管理を俺とお前に一任してるんだってさ」

「好都合じゃないか、彼らが警戒する必要もなくなる」

「そういう問題じゃないだろ…なぁ、田村、これからどうするつもりだ?」

神奈川県川崎市内のビジネスホテル、現在彼らはそこに泊まっている。彼ら少年少女も警戒こそしたが、すんなりと受け入れてくれた。

田村雅功と中谷俊哉はそんな彼ら、ひと括りに言えば異世界人の集団を管理することになった。現状の人員はこの二人しかいない。一度は逃してしまったこのエージェント二人がまた異世界人を捕えた…と上層部は見るだろう。今のところ双方協力関係ということになっている。

「しばらくはこのままになるだろう。現状は落ち着いて彼らもここにいるわけだし」

「彼らのことじゃない。話だと別の異世界人も来てるらしいぞ。それが問題だ、アメリカ、ドイツ、中国、日本がその別の奴らの手で侵略を受けかけた。これを説明したら現状彼らの保護観察が即時殺害になる可能性もある。彼らがこうしてホテルにいることができているのは…」

「利害関係の調べと威力偵察、彼らの力の源が知りたいってことなんだろ?もう試したじゃないか、ワシントンDCで」

「あれにはいくつもおかしい点がある…米陸軍が…」

「アメリカの話はいい、それより敵対的な生命体の情報は何かないのか?」

「…中部航空警戒管制団のレーダーに正体不明の接近物を感知した。空自のF-15Jが小松からスクランブル発進したが、既にレーダーからは消えて、変わりにいくつもの洞穴があった。そして…その洞穴から多種多様な生命体が確認されたらしい。どれも陸自の一部勢力で片付いて、その洞穴は陸自含む我々が調査してることだ」

「…なるほどな、要はあのダンジョンなるもののかたはついたわけか」

田村は歩道と車道の間にあるガードレールに寄りかかる。中谷は同じようにガードレールに寄っかかると後ろを一般車が通り過ぎる。

「振り幅縦に約20m、推定の平均面積は約735m、高低差がある迷路に近いらしい。ゴールには大物がいる、な」

「この国はどうなるもんか…無事に済むといいんだが…」

それはTSAという組織に入っている者全員が思っていることだろう。

10年に1回あるかないかで出現したはずの異次元的地球外生命体はいまや1年のうちに5回、それもまだ年を越してないからまだ際限なく、増えるという可能性も秘めている。

「…無事に年を越したいもんだ~、2023年に」

中谷はそうポツリと呟いたが、それは心からそう願っているように見えた。

…いや当たり前だろう。誰しもが無事にいたいというのは。

「とにかく新しい情報を…」

「田村!中谷!…さん!」

田村は中谷に指示を出そうとした時だ。ホテルのロビーから勢いよく少年が飛び出して来た。

「…ヒカル君…どうした?」

武本輝という少年は息を切らさず、淡々と説明する。

「奴ら…えーっとなんだっけ?あいつら…」

「地球に来た他の奴らのことか?」

「いや、そっちじゃなくて…そうだ!あのサーファー!」

「…?」

応対した中谷はよく知らないのかポカンとしている。だがサーファー、その名はここ数日頻繁に聞いている。

「…それがどうした?」

「…ロサンゼルスだ…次の標的は間違いなく…」

「何故だ?何故分かるんだ?」

「それは…」
_________________
同時刻 アメリカ合衆国 アリゾナ州上空

「ロサンゼルス到着まではもう少しですよ…大統領…」

「あの会合は無駄だった。事務総長は何も分かっとらん、馬鹿が…!」

ジョン ヴォイドは爪を齧る勢いで指を口に近づけていた。

「中国もロシアもこれを期に爪を立ててきている。奴らはこんな非常事態だというのにアメリカを貶すことしか考えていない腑抜けどもだ…!」

「ですが香港のほうでもあったようですし、尤もそれがどのようにして起こったかは不明ですが…」

「…何故お前がエアフォースワンにいる?お前と会うのは実に2年ぶりだが名前は覚えているぞ。トーマス フォード」

「…お久しぶりです。大統領。ロサンゼルスにはニューヨークの一件で台無しにされたロングビーチ港の視察を行うと聞いておりますが…それだけですか?」

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~

りーさん
ファンタジー
 ある日、異世界に転生したルイ。  前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。  そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。 「家族といたいからほっといてよ!」 ※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。  そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。  しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。  そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。  この死亡は神様の手違いによるものだった!?  神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。  せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!! ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

囚われた姫

彩柚月
児童書・童話
 私は自由。いろんな場所へ行って、いろんな物を見る。  この広い世界で、ひと所に留まるなんて勿体無い。  いつか、全ての場所へ行き尽くすまで、私は飛び回る。  

スキル【レベル転生】でダンジョン無双

世界るい
ファンタジー
 六年前、突如、異世界から魔王が来訪した。「暇だから我を愉しませろ」そう言って、地球上のありとあらゆる場所にダンジョンを作り、モンスターを放った。  そんな世界で十八歳となった獅堂辰巳は、ダンジョンに潜る者、ダンジョンモーラーとしての第一歩を踏み出し、ステータスを獲得する。だが、ステータスは最低値だし、パーティーを組むと経験値を獲得できない。スキルは【レベル転生】という特殊スキルが一つあるだけで、それもレベル100にならないと使えないときた。  そんな絶望的な状況下で、最弱のソロモーラーとしてダンジョンに挑み、天才的な戦闘センスを磨き続けるも、攻略は遅々として進まない。それでも諦めずチュートリアルダンジョンを攻略していたある日、一人の女性と出逢う。その運命的な出逢いによって辰巳のモーラー人生は一変していくのだが……それは本編で。 小説家になろう、カクヨムにて同時掲載 カクヨム ジャンル別ランキング【日間2位】【週間2位】 なろう ジャンル別ランキング【日間6位】【週間7位】

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監
ファンタジー
 女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。  シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。  シルヴィの将来や如何に?  毎週木曜日午後10時に投稿予定です。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

処理中です...