現代転生 _その日世界は変わった_

胚芽米

文字の大きさ
上 下
208 / 237

第183話 世界を変える者達

しおりを挟む
とあるFBI捜査官の視点

ジム コールソンは目の前にいる男の動向を観察していた。

顔付きはそこそこ、地毛なのか整えられた薄い色の金髪、白いシャツに青のジーパンと目立った特徴はない。彼はドカンと椅子に腰掛けるわけでもなく、かと言って膝を閉じて椅子に座っているわけでもなかった。

危機感というものが欠如しているのかもしれない。そしてニクソンはブツブツと声を出し始めたかと思うとはっきり質問に答えた。

「…俺の尋問なんかよりバケモン共を探す方がよっぽど効果的だと思うぜ」

「…へぇ」

何を言ったかと思えば

「確かに一理あるかもしれないが、君は今自分の立場というものを理解しているのか?」

「一応な」

「ならいい加減だんまりは止そう。君はそうやって自分の罪から逃げるつもりか?」

「……」

「……分かった。ちょっと世間話といこうか。実は私もオハイオ州生まれなんだ」

「それが?」

「オハイオというのは…田舎っぽいというイメージがあるが、魅力もたくさんある。例えば…あぁ、あの遊園地…」

「シーダーポイント」

「そうだ、シーダーポイント。ディズニーランドには負けるがあそこは良い場所だ」

こうやって世間話をやってるうちはニクソンも話に割り込んでくるようだ。この調子で事件の真相に持っていきたいところだが。

「他には…そうだな…」

「なぁ、あんたバケモンについてどう思ってる?」

「は?」

突然ニクソンがこちらに質問を投げかけてきた。

「どう…って…」

「俺は昔スーパーヒーローってもんに憧れててな。だから大学卒業した後、警備会社に入社した。そこでよ、真っ当に仕事やってたらある日よ、ビルの巡回かなんかで強盗とすれ違ってな、その強盗を殺しちまったんだ。そんで過剰防衛だとかなんとかで一人殺して余罪がついた。スーパーヒーローは悪人を殺しても何にも言われねぇのに俺は会社をリストラされた挙げ句、食うのにも困る始末だ」

「すまないが何が言いたいのか…」

「スーパーヒーローはこの世にいない。仮に俺が超能力を使えたとしたらお前らどうすんだ?」

「…悪いがそんな話には…」

「ニューヨークのやつをテレビで見て、ワシントンDCのやつもテレビで見てたらヴィランみてぇな野郎が街で大暴れ。お前らみたいなのが俺みたいな奴の相手ばっかしてるから死人ばっかだすんだよ」

「…君は自分がやった事の重さを理解していない。人にはやり直すチャンスが誰にでもあるはずだが君は自分からその権利を放棄してるように見える」

「やり直し?んなものねぇよ。俺に犯罪者という足枷がついてからやり直しなんか一度もなかった。俺はずっと惨めな奴だ」

「それが人を殺していい理由になるとでも思っているのか?」

「あ?こうなっちまったのはお前らのせいだ。お前らが過剰防衛とか訳の分かんねぇことにしたせいで俺は銃をぶっ放したんだ!」

「貴様…!人の命を何だと…!」

私は立ち上がりニクソンの胸ぐらを掴もうとする。

「コールソンさん!落ち着いて!」

割いるようにして彼の部下が抑え込もうとする。そしてすぐに私とニクソンの距離は離され、私は部屋の外に出される。

「コールソンさんどうしたんですか、いつもはあんなに…」

「あいつは…絶対断罪させなきゃ駄目だ…」
____________________
とある少年の視点

「…でお前の仮説通りに行けば、この一連の事件は異世界人共が関わっていると」

「だね、正確には魔王とその御一行だけれども」

「それは分かったが…今お前どこにいるんだ?千葉からは脱出できたのか?」

「緊急事態宣言が敷かれて大変だったけどなんとか、いやさぁ聞いてよユウタァァ~~」

対話相手のヒカルがうざったい声を上げた。それを聞いた大須裕太は図らずも画面の向こう側でため息を付きながら寝転がるヒカルの姿が思い浮かぶことになった。

「俺らさぁ、秘密組織の力添えでなんとか木更津からアクアラインに行けたんよ、それで15分って聞いたんだけどね…まさかの2時間、うん高速でも何でもないのに2時間!」

「はいはい分かった分かった」

彼らヒカル御一行は車で千葉から神奈川方面に向かおうとしたらしい。当初は東京都江東区に向かう手筈だったらしいが、思わぬ昨今の東京都を巻き込むテロと千葉の混乱で大渋滞。仕方なくまだ混みが少ない神奈川からどうにかしようとなったらしいが…

当時の東京湾アクアラインは渋滞度を表す比重で見てみれば真っ赤、真っ赤だった。つまりそこでは大渋滞が起きていたことになる。

「…それで何か手掛かりはあった?」

ヒカルは声の調子を変え、至って真面目…のように装っているのだろう。

「ロンドンの方のテロも〆がついたらしい。あっちのほうが死者数も少ないんだと」

「やっぱ東京駅のほうがきつかったか…そりゃそうだよね…」

「お前が行くところには事件しか起きんな…どっかの地下で監禁されてるほうがいいんじゃないか?」

「俺じゃなくて周りの異世界人のせいだと思うけど…」

……それは否めない。思えばヒカルが異世界人と関わってから歯車が狂った感じがする。

「…それとアメリカの銃乱射事件なんだがな」

「ふんふん」

ヒカルは興味ありげに続きを聞こうと同調の意を示す。

「47個起きてた。しかも全部が別の州だ」



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~

りーさん
ファンタジー
 ある日、異世界に転生したルイ。  前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。  そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。 「家族といたいからほっといてよ!」 ※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。

美形揃いの王族の中で珍しく不細工なわたしを、王子がその顔で本当に王族なのかと皮肉ってきたと思っていましたが、実は違ったようです。

ふまさ
恋愛
「──お前はその顔で、本当に王族なのか?」  そう問いかけてきたのは、この国の第一王子──サイラスだった。  真剣な顔で問いかけられたセシリーは、固まった。からかいや嫌味などではない、心からの疑問。いくら慣れたこととはいえ、流石のセシリーも、カチンときた。 「…………ぷっ」  姉のカミラが口元を押さえながら、吹き出す。それにつられて、広間にいる者たちは一斉に笑い出した。  当然、サイラスがセシリーを皮肉っていると思ったからだ。  だが、真実は違っていて──。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

スキル【レベル転生】でダンジョン無双

世界るい
ファンタジー
 六年前、突如、異世界から魔王が来訪した。「暇だから我を愉しませろ」そう言って、地球上のありとあらゆる場所にダンジョンを作り、モンスターを放った。  そんな世界で十八歳となった獅堂辰巳は、ダンジョンに潜る者、ダンジョンモーラーとしての第一歩を踏み出し、ステータスを獲得する。だが、ステータスは最低値だし、パーティーを組むと経験値を獲得できない。スキルは【レベル転生】という特殊スキルが一つあるだけで、それもレベル100にならないと使えないときた。  そんな絶望的な状況下で、最弱のソロモーラーとしてダンジョンに挑み、天才的な戦闘センスを磨き続けるも、攻略は遅々として進まない。それでも諦めずチュートリアルダンジョンを攻略していたある日、一人の女性と出逢う。その運命的な出逢いによって辰巳のモーラー人生は一変していくのだが……それは本編で。 小説家になろう、カクヨムにて同時掲載 カクヨム ジャンル別ランキング【日間2位】【週間2位】 なろう ジャンル別ランキング【日間6位】【週間7位】

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監
ファンタジー
 女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。  シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。  シルヴィの将来や如何に?  毎週木曜日午後10時に投稿予定です。

囚われた姫

彩柚月
児童書・童話
 私は自由。いろんな場所へ行って、いろんな物を見る。  この広い世界で、ひと所に留まるなんて勿体無い。  いつか、全ての場所へ行き尽くすまで、私は飛び回る。  

私が産まれる前に消えた父親が、隣国の皇帝陛下だなんて聞いてない

丙 あかり
ファンタジー
 ハミルトン侯爵家のアリスはレノワール王国でも有数の優秀な魔法士で、王立学園卒業後には婚約者である王太子との結婚が決まっていた。  しかし、王立学園の卒業記念パーティーの日、アリスは王太子から婚約破棄を言い渡される。  王太子が寵愛する伯爵令嬢にアリスが嫌がらせをし、さらに魔法士としては禁忌である『魔法を使用した通貨偽造』という理由で。    身に覚えがないと言うアリスの言葉に王太子は耳を貸さず、国外追放を言い渡す。    翌日、アリスは実父を頼って隣国・グランディエ帝国へ出発。  パーティーでアリスを助けてくれた帝国の貴族・エリックも何故か同行することに。  祖父のハミルトン侯爵は爵位を返上して王都から姿を消した。  アリスを追い出せたと喜ぶ王太子だが、激怒した国王に吹っ飛ばされた。  「この馬鹿息子が!お前は帝国を敵にまわすつもりか!!」    一方、帝国で仰々しく迎えられて困惑するアリスは告げられるのだった。   「さあ、貴女のお父君ーー皇帝陛下のもとへお連れ致しますよ、お姫様」と。 ****** 不定期更新になります。  

処理中です...