現代転生 _その日世界は変わった_

胚芽米

文字の大きさ
上 下
198 / 237

第173話 過去のおはなし(9)

しおりを挟む
「…もう一度言おう。この中にあのドラゴンをああやった張本人がいるはずだ。名乗り出てもらおう!」

シーン……

「……」

「……」

「……」

「……」

「ンンンン…!なんで誰も名乗り出らぬ!?ここはこの街唯一の冒険者ギルドだ!いないなどありえんだろう!」

「えっと…私…です」

声を上げたのはベラドンナだった。

「ほうほう、お主か…我々の仕事を奪ってくれたのは…」

「あ、私だけじゃなくてこの子も…」

あー、私も巻き込まれた。この子というのは私しかいない。

そもそも…あいつは仕事を奪ったと言っている時点で好意的には接してくれないことくらい分かる。

「へぇ、君達みたいなまだ子供がやったのか。あれを?」

「まあ、そうですけど…」

ベラドンナはこういう圧には弱いようだ。腰を低くして相手の様子を伺っている。

「だったら何?それがどうかしたの?」

まあ、私は強気でいくけども。

「へぇ、威勢が良いお嬢ちゃんがいるもんだ」

「私お嬢ちゃんって言われる歳じゃないんだけどなぁ」

ニッコリと笑ってそう返す。

「いやいやお嬢ちゃんだよ君は。冒険者の若年化が進んでるとは聞いたけど、まさか君達みたいなまだ………」

「あ」

「あ」

言い終わる前に吹き飛ばした。彼は今、壁に叩きつけられ、目を回している。

「まあ、このくらいじゃ死なないでしょ」

「いやそういう話じゃないと思う…」

隣でベラドンナが何か言いたげに苦笑じみた顔をしている。

「…………」

「…………」

その後冒険者と騎士団の間で変な空気が生まれたのは言うまでもない。

~2時間後~

「…隊長は今頭を冷やしてもらっています…それで…話を…」

「あぁ…」

若い騎士が私達にまるで尋問かのような空気になりながらも話しかけてくる。

「いや…その…本当にあなた方が倒されたんですか?」

「そうですけど…何か?」

「い、いいえ、ただにわかに信じ難いというか…あのドラゴンは魔法が効かないのでどうやって倒したのか…」

「いや…話せば長くなるんですけど…」

私はどうにか手短に話すと騎士は驚いたような表情を作りながら

「そんな風に倒すという事例は今までにありませんが…可能なんですね…」

「まあはい」

結構曖昧な返事へとなったが、騎士はそれで満足したのかその場を立ち去ろうとする。

「ご迷惑おかけしました…!」

「いや…こちらこそ…はい」

お互いにあんな事の後ではかなり気まずい。が、元はと言えばあいつが悪いので…

「そ、それでは…!」

騎士は足早に去って行った。

「……やらかした?私」

「かなりやらかしてるよ!」

テッテン!で終わるわけには行かないようだな。

「いや…でもあのままだったら私達舐められてるよ」

「それは…そうだけど…」

「それに報奨金が貰えなかったらこの仕事やる意味ない」

ベラドンナは私が言った事に納得の行かないようだった。どうやら私と感性が合わないことには薄々気づいているらしい。

「ねぇ、結局のところアナリスはどうするの?」

「何を?」

「私とパーティ組むこと」

あぁ、そう言えばそんな話あったね。

「…私はやめたほうがいいと思うよ。私そんなにお人好しじゃないし、第一ベラドと合わない。けど…ベラド次第だけど…私は…
このコンビ…良いと思う。なんだかんだで…楽しかった…うん」

「え?」

ベラドンナは聞き取れなかったのか困惑したように見えた。結構照れ臭いからやめてほしい。

「…続けてもいいよって話、ベラド次第で決めるけど」

「…え、ほんと?やったー!」

「声大きいな」

予想以上にベラドンナは喜んだ。何故こうも嬉しがるのか…

「私てっきり断られるかと思ってた、だよね、だよね!うん、私とあなただったらドラゴンだって倒せちゃうもの、続けるしかないわよね!」

「は、はぁ」

「正直断られるかとヒヤヒヤしてたの」

「そ、そうなんだ。でもベラドは私と一緒でいいわけ?」

「え、私は全然大丈夫よ。同年代の子と一緒の時点で嬉しいわけだし…何より…」

何より…?何だろうか。

「私のことベラドって呼んでくれてる。だからあなたも私のこと頼りにしてくれてるなぁって…」

「あっ…」

そう言えばいつの間にかそう呼んでいた。単純に君って言いづらいから名前で呼んでいたが。

「というわけで…改めてよろしくね!」

「…こちらこそよろしく」

こうして凹凸かもしれないコンビが出来上がった。








しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

処理中です...