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第169話 過去のおはなし(5)
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「まったく寝不足なんだから…勘弁してほしいよ」
私はそう言いながらドラゴンへと近づく。この圧倒的熱量、さすがはイグニールドラゴン。他のドラゴンよりは一回り大きい程度でしかないが、その内に秘めたエネルギーは只なるものじゃない。
「おーいベラドー!降りてこい~!」
上空に漂うベラドンナを呼び寄せる。ベラドンナはどうにか地面に着地し、私に駆け寄る。
「…何してんだか、あのドラゴンに魔法は通用しないってのに」
「え…」
「まあ知らないだろうね、知ってたら戦わない」
魔法使い殺しのイグニールドラゴン、上位魔法をまともに喰らっても無傷な魔物はそうそう居ない。
「でも…それだったらどうやって…」
「諦める…のは嫌でしょ?」
「あら、見透かされちゃってる」
ベラドンナは軽口のようにしてそう言うが、事態はそう甘くない。
「そんな笑っていられな…」
次の瞬間、周囲の草木が熱を伴い、炎を起こす。その勢いはこちらにまでやってくる。
「やば!」
どうやらそれはドラゴンのブレスのようだ、大きく渦巻いた炎がこちらへとやって来ていた。ドラゴンは私達のはるか頭上で口を開き、炎の龍を出していたのだから。
私とベラドンナは後ろに十歩程度の感覚で下がる。その瞬間、地面は巨大な炎弾と共に辺りに炎を撒き散らす。
ドラゴンは待ってはくれない。話してる暇などないのだ。
「…というわけでここまできたら私もやる、けど攻略法が分からなかったら撤退、無駄な戦いなんて意味ない」
「分かった。私が正面から行くからあなたは背後を」
ベラドンナは素早くそう言うと、すぐに動き出す。なるほど、さすがは討伐隊のリーダーだけある、状況判断は速い。
私は言われたとおり、そして策を考えながら周り込もうとした瞬間
ドーン!ドーン!ドーン!
不規則な爆発音が上で響く、見ればドラゴンの顔面や肩などで爆発が起きている。
「…あぁ、そういうことね」
この爆発はベラドンナのものではない、何故ならベラドンナ自身この爆発に驚いている。
「気にするな!あの爆発はあの街の住人がやってる!」
私は手短にそう言うとベラドンナは我に返ったのか再び動き出す。
魔法が効かない相手には物理的な攻撃でしか死なない。だがその物理的な攻撃すら通さない場合、例えば剣でこいつとまともにやり合える相手なんてそうそうにいないだろう。
イグニールドラゴンという脅威が街の郊外にいるのだ。仮にも魔王軍の前線とも程近い街、戦闘意識は高い。だから彼らは新しい兵器を開発した。それは画期的とも言える物だった。
「にしてもこの魔物に大砲って効くわけ?」
_________________
「撃てー!」
ドン!ドン!ドン!
並列に並んだそれらは大砲を扱う冒険者のリーダーの掛け声と共に砲撃を開始する。
「…やっぱり無茶っすよ!」
街の大通りのその先、結界の境界ギリギリの通りから砲撃を続けているがイグニールドラゴンにはまったく効かない。
「だからと言って諦められるか!あいつがこの街に来たらそれこそ終わりだ!」
「魔法すら全て無力化する相手っすよ!いくら新兵器ができたからと言ってこれが相手に通用するかは…」
「そんなことは分かってる!仮にもここは魔王軍に対抗するために作られた街なんだぞ!一匹のドラゴンだけでそんなに喚くな!」
「あのドラゴンはレベルが違います…って…!攻撃きます!」
その刹那、一瞬にして結界が破られた。パリンという音と共に空気中に溶けていく。
「た、たかが一つの炎弾だけで…」
「逃げましょう!もう無理ですよ!リーダー!」
「…クソガッ!」
そして次の数秒のうちにその新兵器、大砲はきれいさっぱり焼かれてしまった。
_________________
「やっぱ無理じゃん」
私はそう呟きながらその惨状を目にする。
大砲は先のブレスによって全て壊されたようで、以降砲撃はなくなった。
当然だ、こいつに大砲の効果なんか期待できない。そもそも的が違ったのだ。こいつを倒せる程の物理攻撃……駄目だ思いつかない。
だが、今ドラゴンの気は街に向けられている。これは良くもあるし悪くもある。
私達にはまだ完全に注意を払っていない。ならば、私と彼女で考えた策もうまく行くはずだ。
「…ハァ…やるか」
私はドラゴンの後ろに立ち、体を浮かした。
私はそう言いながらドラゴンへと近づく。この圧倒的熱量、さすがはイグニールドラゴン。他のドラゴンよりは一回り大きい程度でしかないが、その内に秘めたエネルギーは只なるものじゃない。
「おーいベラドー!降りてこい~!」
上空に漂うベラドンナを呼び寄せる。ベラドンナはどうにか地面に着地し、私に駆け寄る。
「…何してんだか、あのドラゴンに魔法は通用しないってのに」
「え…」
「まあ知らないだろうね、知ってたら戦わない」
魔法使い殺しのイグニールドラゴン、上位魔法をまともに喰らっても無傷な魔物はそうそう居ない。
「でも…それだったらどうやって…」
「諦める…のは嫌でしょ?」
「あら、見透かされちゃってる」
ベラドンナは軽口のようにしてそう言うが、事態はそう甘くない。
「そんな笑っていられな…」
次の瞬間、周囲の草木が熱を伴い、炎を起こす。その勢いはこちらにまでやってくる。
「やば!」
どうやらそれはドラゴンのブレスのようだ、大きく渦巻いた炎がこちらへとやって来ていた。ドラゴンは私達のはるか頭上で口を開き、炎の龍を出していたのだから。
私とベラドンナは後ろに十歩程度の感覚で下がる。その瞬間、地面は巨大な炎弾と共に辺りに炎を撒き散らす。
ドラゴンは待ってはくれない。話してる暇などないのだ。
「…というわけでここまできたら私もやる、けど攻略法が分からなかったら撤退、無駄な戦いなんて意味ない」
「分かった。私が正面から行くからあなたは背後を」
ベラドンナは素早くそう言うと、すぐに動き出す。なるほど、さすがは討伐隊のリーダーだけある、状況判断は速い。
私は言われたとおり、そして策を考えながら周り込もうとした瞬間
ドーン!ドーン!ドーン!
不規則な爆発音が上で響く、見ればドラゴンの顔面や肩などで爆発が起きている。
「…あぁ、そういうことね」
この爆発はベラドンナのものではない、何故ならベラドンナ自身この爆発に驚いている。
「気にするな!あの爆発はあの街の住人がやってる!」
私は手短にそう言うとベラドンナは我に返ったのか再び動き出す。
魔法が効かない相手には物理的な攻撃でしか死なない。だがその物理的な攻撃すら通さない場合、例えば剣でこいつとまともにやり合える相手なんてそうそうにいないだろう。
イグニールドラゴンという脅威が街の郊外にいるのだ。仮にも魔王軍の前線とも程近い街、戦闘意識は高い。だから彼らは新しい兵器を開発した。それは画期的とも言える物だった。
「にしてもこの魔物に大砲って効くわけ?」
_________________
「撃てー!」
ドン!ドン!ドン!
並列に並んだそれらは大砲を扱う冒険者のリーダーの掛け声と共に砲撃を開始する。
「…やっぱり無茶っすよ!」
街の大通りのその先、結界の境界ギリギリの通りから砲撃を続けているがイグニールドラゴンにはまったく効かない。
「だからと言って諦められるか!あいつがこの街に来たらそれこそ終わりだ!」
「魔法すら全て無力化する相手っすよ!いくら新兵器ができたからと言ってこれが相手に通用するかは…」
「そんなことは分かってる!仮にもここは魔王軍に対抗するために作られた街なんだぞ!一匹のドラゴンだけでそんなに喚くな!」
「あのドラゴンはレベルが違います…って…!攻撃きます!」
その刹那、一瞬にして結界が破られた。パリンという音と共に空気中に溶けていく。
「た、たかが一つの炎弾だけで…」
「逃げましょう!もう無理ですよ!リーダー!」
「…クソガッ!」
そして次の数秒のうちにその新兵器、大砲はきれいさっぱり焼かれてしまった。
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「やっぱ無理じゃん」
私はそう呟きながらその惨状を目にする。
大砲は先のブレスによって全て壊されたようで、以降砲撃はなくなった。
当然だ、こいつに大砲の効果なんか期待できない。そもそも的が違ったのだ。こいつを倒せる程の物理攻撃……駄目だ思いつかない。
だが、今ドラゴンの気は街に向けられている。これは良くもあるし悪くもある。
私達にはまだ完全に注意を払っていない。ならば、私と彼女で考えた策もうまく行くはずだ。
「…ハァ…やるか」
私はドラゴンの後ろに立ち、体を浮かした。
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