173 / 237
第148話 遭遇
しおりを挟む
目の前の男はどこにでも溶け込めそうな黒いスーツ姿で壮年な男だった。だがその顔はさわやかとは言えず、どこか陰鬱を感じさせる表情と鋭い眼光を持っていた。
だが不思議とそんな顔の持ち主でも何故だか、接しやすそうだというオーラを醸し出している。要するにただの人間ではない。
動揺こそしているだろうが、視線は一点に収まり切っている。命を晒される危険に慣れているあたりタダ者じゃない…はずだ。
冒険者の端くれでも人を見る目はそこそこあると思っている。
「…それは何なのだね?何故君達はそれを?」
先に話したのは男の方だった。口調は優しいが有無を言わせないぶりがある。
「…拳銃。奪った」
「奪った?」
「そうだよ」
ヒカルは単語で区切りながらそう言うと視線を完全に男に合わせる。ヒカルと男は俺を抜きに話し始める。
「…君達二人は何が目的なんだ?」
「それはこっちのセリフ。なんで付いて来たの?」
「……なんで、か。気になったから、だけでは済まないだろうな」
「当たり前」
「…俺は二人、いやもっと言えば君達5人を追っている組織のエージェントだ」
「なるほどなるほど」
「なんなのだ…君達は一体…」
「だから俺達もあんたらのことが分かんないだけど。大体俺達に正直にさっきまで話したんだったら最後まで頼むよ。俺達の事はその後」
「…組織の名前はTSA。最高機密機関という国家に所属しない機関、主に地球外生命体の調査を行っている」
「地球外生命体。国家に属しない。てっきりアメリカかロシアか中国かの三択かと思ってたんだけど。あと地球外生命体というのは俺達のこと?」
「…あぁ。だが異型な化け物共も含まれる。それが人間社会にバレた場合の混乱は計り知れない。そこで我々はそれらを捕獲する…君達含め」
「実際ニューヨークはそれで陥落したしね」
「あれは…!君達の仕業…なのか?」
「…違う」
「だったらあの…!ドラゴンはなんなのだ…!一体…!」
「簡単に言うとあいつらは侵略者、え~っと前の世界、地球に来る前の場所でも世界を支配しようとしていて…で俺達5人は違う、あいつらをどうにかして倒そうって思ってる奴ら」
「なんだと?」
「一応言うけどあいつら以外にも侵略者はいる。ドイツやイギリス、香港はそれが原因でああなった」
「…なんということだ」
「信じてくれる?大抵信じられないからこの事はずっと隠し事にしてたんだけどね。で、黙っててくれるよね?俺は聞きたい事は一応聞けたし」
「…君がここで銃を撃ったらそれこそ終わりだ」
「今はそれどころじゃないよ。それに俺は地球人だし、東京駅のやつも地球人。やっぱ人間が一番恐ろしいね」
ヒカルはそう言うと拳銃を持った手を男に近づける。
男は視線を合わせたまま動かない。
「…なあヒカル殺すのか?」
俺は思わずそう聞くとヒカルはこちらに顔を向けずに
「…必要があれば。こいつらも俺達をアメリカで殺そうとしてたから」
「……すまなかった。君達の事情を知らなかったんだ」
「捕獲も殺傷も逃げる事ができたからね。地球外生命体向けのマニュアルはないの?」
「あんなの…アテにならんさ」
男はその時、微かに笑った気がした。
「…君達は何か特殊な超能力は使えるのか?」
男は拳銃を向けられながらもその事に触れずに俺達について聞いてくる。
「俺は無理。でもあの子はいける」
「あの茶髪の子か。君じゃないんだな、ヒカル君」
「俺の名前覚えてくれたんだ。ありがと」
「頼みがある。君達の力で彼らを救ってくれ…!」
男はそう言うと突然、膝をついた。これにはヒカルもさすがに困惑している様子だ。
「彼ら…?救う…?何を何から…?誰を…?」
「あの地獄にいる彼らだ。東京駅に閉じ込められ、苦しんでいる…彼ら民間人…」
男はそう言うと片膝を付いた体勢へとなった。
だが不思議とそんな顔の持ち主でも何故だか、接しやすそうだというオーラを醸し出している。要するにただの人間ではない。
動揺こそしているだろうが、視線は一点に収まり切っている。命を晒される危険に慣れているあたりタダ者じゃない…はずだ。
冒険者の端くれでも人を見る目はそこそこあると思っている。
「…それは何なのだね?何故君達はそれを?」
先に話したのは男の方だった。口調は優しいが有無を言わせないぶりがある。
「…拳銃。奪った」
「奪った?」
「そうだよ」
ヒカルは単語で区切りながらそう言うと視線を完全に男に合わせる。ヒカルと男は俺を抜きに話し始める。
「…君達二人は何が目的なんだ?」
「それはこっちのセリフ。なんで付いて来たの?」
「……なんで、か。気になったから、だけでは済まないだろうな」
「当たり前」
「…俺は二人、いやもっと言えば君達5人を追っている組織のエージェントだ」
「なるほどなるほど」
「なんなのだ…君達は一体…」
「だから俺達もあんたらのことが分かんないだけど。大体俺達に正直にさっきまで話したんだったら最後まで頼むよ。俺達の事はその後」
「…組織の名前はTSA。最高機密機関という国家に所属しない機関、主に地球外生命体の調査を行っている」
「地球外生命体。国家に属しない。てっきりアメリカかロシアか中国かの三択かと思ってたんだけど。あと地球外生命体というのは俺達のこと?」
「…あぁ。だが異型な化け物共も含まれる。それが人間社会にバレた場合の混乱は計り知れない。そこで我々はそれらを捕獲する…君達含め」
「実際ニューヨークはそれで陥落したしね」
「あれは…!君達の仕業…なのか?」
「…違う」
「だったらあの…!ドラゴンはなんなのだ…!一体…!」
「簡単に言うとあいつらは侵略者、え~っと前の世界、地球に来る前の場所でも世界を支配しようとしていて…で俺達5人は違う、あいつらをどうにかして倒そうって思ってる奴ら」
「なんだと?」
「一応言うけどあいつら以外にも侵略者はいる。ドイツやイギリス、香港はそれが原因でああなった」
「…なんということだ」
「信じてくれる?大抵信じられないからこの事はずっと隠し事にしてたんだけどね。で、黙っててくれるよね?俺は聞きたい事は一応聞けたし」
「…君がここで銃を撃ったらそれこそ終わりだ」
「今はそれどころじゃないよ。それに俺は地球人だし、東京駅のやつも地球人。やっぱ人間が一番恐ろしいね」
ヒカルはそう言うと拳銃を持った手を男に近づける。
男は視線を合わせたまま動かない。
「…なあヒカル殺すのか?」
俺は思わずそう聞くとヒカルはこちらに顔を向けずに
「…必要があれば。こいつらも俺達をアメリカで殺そうとしてたから」
「……すまなかった。君達の事情を知らなかったんだ」
「捕獲も殺傷も逃げる事ができたからね。地球外生命体向けのマニュアルはないの?」
「あんなの…アテにならんさ」
男はその時、微かに笑った気がした。
「…君達は何か特殊な超能力は使えるのか?」
男は拳銃を向けられながらもその事に触れずに俺達について聞いてくる。
「俺は無理。でもあの子はいける」
「あの茶髪の子か。君じゃないんだな、ヒカル君」
「俺の名前覚えてくれたんだ。ありがと」
「頼みがある。君達の力で彼らを救ってくれ…!」
男はそう言うと突然、膝をついた。これにはヒカルもさすがに困惑している様子だ。
「彼ら…?救う…?何を何から…?誰を…?」
「あの地獄にいる彼らだ。東京駅に閉じ込められ、苦しんでいる…彼ら民間人…」
男はそう言うと片膝を付いた体勢へとなった。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~
りーさん
ファンタジー
ある日、異世界に転生したルイ。
前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。
そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。
「家族といたいからほっといてよ!」
※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。

美形揃いの王族の中で珍しく不細工なわたしを、王子がその顔で本当に王族なのかと皮肉ってきたと思っていましたが、実は違ったようです。
ふまさ
恋愛
「──お前はその顔で、本当に王族なのか?」
そう問いかけてきたのは、この国の第一王子──サイラスだった。
真剣な顔で問いかけられたセシリーは、固まった。からかいや嫌味などではない、心からの疑問。いくら慣れたこととはいえ、流石のセシリーも、カチンときた。
「…………ぷっ」
姉のカミラが口元を押さえながら、吹き出す。それにつられて、広間にいる者たちは一斉に笑い出した。
当然、サイラスがセシリーを皮肉っていると思ったからだ。
だが、真実は違っていて──。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

スキル【レベル転生】でダンジョン無双
世界るい
ファンタジー
六年前、突如、異世界から魔王が来訪した。「暇だから我を愉しませろ」そう言って、地球上のありとあらゆる場所にダンジョンを作り、モンスターを放った。
そんな世界で十八歳となった獅堂辰巳は、ダンジョンに潜る者、ダンジョンモーラーとしての第一歩を踏み出し、ステータスを獲得する。だが、ステータスは最低値だし、パーティーを組むと経験値を獲得できない。スキルは【レベル転生】という特殊スキルが一つあるだけで、それもレベル100にならないと使えないときた。
そんな絶望的な状況下で、最弱のソロモーラーとしてダンジョンに挑み、天才的な戦闘センスを磨き続けるも、攻略は遅々として進まない。それでも諦めずチュートリアルダンジョンを攻略していたある日、一人の女性と出逢う。その運命的な出逢いによって辰巳のモーラー人生は一変していくのだが……それは本編で。
小説家になろう、カクヨムにて同時掲載
カクヨム ジャンル別ランキング【日間2位】【週間2位】
なろう ジャンル別ランキング【日間6位】【週間7位】

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡
サクラ近衛将監
ファンタジー
女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。
シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。
シルヴィの将来や如何に?
毎週木曜日午後10時に投稿予定です。


私が産まれる前に消えた父親が、隣国の皇帝陛下だなんて聞いてない
丙 あかり
ファンタジー
ハミルトン侯爵家のアリスはレノワール王国でも有数の優秀な魔法士で、王立学園卒業後には婚約者である王太子との結婚が決まっていた。
しかし、王立学園の卒業記念パーティーの日、アリスは王太子から婚約破棄を言い渡される。
王太子が寵愛する伯爵令嬢にアリスが嫌がらせをし、さらに魔法士としては禁忌である『魔法を使用した通貨偽造』という理由で。
身に覚えがないと言うアリスの言葉に王太子は耳を貸さず、国外追放を言い渡す。
翌日、アリスは実父を頼って隣国・グランディエ帝国へ出発。
パーティーでアリスを助けてくれた帝国の貴族・エリックも何故か同行することに。
祖父のハミルトン侯爵は爵位を返上して王都から姿を消した。
アリスを追い出せたと喜ぶ王太子だが、激怒した国王に吹っ飛ばされた。
「この馬鹿息子が!お前は帝国を敵にまわすつもりか!!」
一方、帝国で仰々しく迎えられて困惑するアリスは告げられるのだった。
「さあ、貴女のお父君ーー皇帝陛下のもとへお連れ致しますよ、お姫様」と。
******
不定期更新になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる