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第139話 テロ(4)

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「ですから話を変えないでもらえますか!?」

耳鳴りがするほどのキーンとした声が議事堂に響き渡る。

「私は前々から言っておりましたでしょ!憲法9条を改正すべきだと!」

「ですから今は憲法どうのこうのではなく、今後の日本の対策について…」

「だから即時自衛隊が出動できるような憲法に改正すべきだって言ってるんですよ!まだ分からないんですか!?」

「静粛に!はい静粛に!」

議長の声によって議事堂は落ち着きこそしたものの、ザワザワとして声が辺りから響き渡る。

(これじゃあ小学校と何も変わらんな)

日本国内閣総理大臣の新竹吉郎は心の中でそう毒づく。先程から唾を撒き散らす中年男性の野党議員はいまだにこちらを睨んでいる。

「……はい。どうぞ」

議長がそう言うとこれまた中年の女性が私に面と向かって討論を始める。どうやらいつの間にか挙手をしていたらしい。

「総理は今後の日本の対策と供述なさっているようですが、具体的な案は総理自身考えておられるのでしょうか?」

女性が話し終えた瞬間周りから野次が飛ぶ。これは与党側のようだが。

「総理が言う必要ないだろぉ」

「それを考えるのがあんたらだろ?」

再びザワツキが大きくなる。私は静かに言葉を発しようとするが中年議員に遮られる。

「今はあなた達関係ないですよね?それに考えるのはあなた達も同じですよ。総理は今後日本を背負っていく立場としてどのようなお考えを持つかを知りたいだけです」

「少しぃ落ち着いて」

議長がゆるくて眠気を誘う声を発する。

「……いいですか。1年前とおんなじじゃないんですよ?世間じゃあエイリアンやら…」

「いつからここはオカルト研究会になったんだぁ?」

「人が話してる際中ですよ静かにしてください」

大した味方でもない与党と無駄な言葉を発する蛇足の野党が意味もない言い争いを繰り広げる。

その時、私の傍に一人の男性議員がやってくる。まだ若いが顔には雀斑が出ている。その議員は私の耳元に顔を近づけ

「総理大変です」

「なんだ?」

「首都高速湾岸線辰巳JCTで爆発事故です。現在調査中とのこと」

「爆発?」

「死者数不明。ですが10人以上は少なくとも…」

「警視庁は?事故ならば私には…」

「それがテロの可能性もあるとのことでして…高速道路を塞ぐ形でタンクローリーが停車してたという情報が…」

「だが私にどうしろと?今は議論の際中だ」

そう言った時、若手議員の顔がかすかに歪む。どうやらこの議員は伝えるべくして送られたようだ。

その時、突然議事堂のドアがバン!と開かれる。

「おいー?なんだ?」

周りの議員がすぐさま思ったことを口に出す。

「た、大変です。首都高速、両国JCT、三宅坂JCT、浜松橋JCTで同様の爆発事故発生!首都圏の交通網の麻痺発生!」

「な、何!?」

「どういうことだ?聞いてねぇぞ!」

「これより議論は一時中止!中止に致します!総理も異論はありませんね?」

議長は宥めるようにしてそう言うと目配せをしてくる。

「ありません」

「それでは警備員の指示に従ってぇ…」

議長は議員を警備員任せに誘導させる。私は一人国会を出ていこうとする。

内閣総理大臣補佐官がすぐに隣にやってき、状況を説明する。

「現在、首都高速は爆発事故により完全に麻痺状態、千葉及び神奈川からの車両群を抑え切れるかどうか」

「原因はなんだ?4つ同時に高速道路が爆発することなんかないはずだ」

「現在、警察及び消防が原因解明にあたろうと模索していますが、既に発生した渋滞によって難航中とのこと」

「マスコミは?」

「現在NHKを始め、各社ほとんど速報として取り上げてます」

「そうか、私は官邸に戻る。必要ならばこちらへ来るんだ」

「分かりました総理」
_________________
『緊急速報です。現在首都高速湾岸線辰巳JCTでタンクローリーが爆発するという事故が…』

『新しく入ってきた情報によりますと同じよくな爆発が多数確認され…』

『えぇ、新しい情報が入り次第速やかにお送りします』

『両国JCTでも同様の爆発が発生した様で…』

『上空からのヘリコプター映像によりますと…黒煙が上がっているのが見えます…』

「あぁ、もうなんだようるさい」

アナリスは一人そう呟くとテレビを消そうとする。

「あなたが勝手につけただけな気がしますが…」

カノンが苦笑いでこちらを向くが私は気にせずに先を進める。

「にしても…この街って…確かガイムとヒカルが行くって…」

「そうだっけ?」

「賢者なんだからそのくらい覚えてろよなぁ」

キルアが話を割って入り、バッと私の後ろから覗き込んでくる。

「…何してんの?」

「賢者がやってそうなこと」

「これが…か。意味が分かんないぞ。これ…何?」

「数学。三次方程式。超面白いわこれ」

私は必死に頭を巡らせた。



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