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第123話 香港襲撃事件(10)

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俗に言う第2形態、ストレイターはおそらくそれに変化したのだろう。

「なるほど、あの鎧、体の大きさに合わせてるわけじゃない。魔力を吸収してる。どうりで魔法がそんなに効かないわけだ」

「吸収…?」

アナリスの言葉の意味をすぐに理解する。確かにアナリスとカノンの同時攻撃の際、カノンの攻撃には確かに効果があったはずだな、アナリスの攻撃は今ひとつだった。

「そして元の防御力も相まって相当な打撃力がないと倒せない。ゴリ押しでなんとかなる相手じゃないな」

ヒカルもM16を手に持ったままそう言う。ヒカルは銃に慣れているかもしれないが、重い。魔法でサポート、微調整しないと使えたもんじゃない。下位魔法様々だな。


「つまり…キルアとアナリスじゃああの化け物は倒せない…!」

俺が思い返すようにしてそう言った瞬間、奴の大剣が先程より一回り大きくなる。もはや人間が片手で触れるサイズじゃない。

「巨人族とドワーフの力を見せてやろう!」

ストレイターはそう言うと、大剣を振るう。その瞬間、辺り一面に水が現れ、それが波と化して俺達を襲う。

「なっ!?!?」

波は車を巻き込みながらこちらへとやって来る。だが波は俺達を飲み込めず、ザブンザブンと何かに阻まれ、俺達がいる場所にだけ水がないため、大きな円ができている。

「お返しするよ」

どうやらアナリスがこれをやったようだ。アナリスがそう言った瞬間、ストレイターに波が襲いかかるが。

「ふんっ!」

ストレイターは大きく飛び上がる、というか飛んでいる。あまりの跳躍力で宙に浮いているように見える。

ストレイターは斜めに一閃した瞬間、凄まじい暴風、先程の衝撃波とは比べ物にならないほどの暴風が襲いかかる。さらにそこからパチパチとしたものも。

「…電気…!」

電流が風の間を飛び、コンクリートの地面は割れだした。俺はかろうじて立っているが、これもアナリスの魔法のおかげだろう。普通なら吹っ飛ばされるどころかとっくに死んでる。

その時、俺はとんでもない物を見てしまう。吹き荒れる風で何も見えないし聞こえない。無論隣りにいたはずのアナリスやカノン、キルアやヒカルも。

ただあの影だけは分かった。あの巨大な車体、大きい円柱を積んでいるあれは俗に言う。

タンクローリー。あの車の中には石油という爆発する液体が入っていると聞くが…

「やばいやばいやばいやばい!!」

俺は咄嗟に体を引こうとしたが、タンクローリーは迫ってくる。そして…

ドカーン!

爆発が辺りを覆った時、俺の視界はふっと弾けた。先程いた道路ではない。

「ふぅぅ、なんとか助かったぁ」

隣にはキルアがそう言いながらほっと息をついている。

「えっ…?」

「ん?あたしが魔法で助けたんだよ。盗賊にとって重い物を持てないってのは致命的だからな」

「あ、あぁ、とにかくまぁ、ありがとう。でも他の人は?」

その時、再び暴風の中から宙に浮く影が…というか重力を無視しすぎだろ。

カノンがアナリスとヒカルを抱えてすぐ隣のビルの上に着地した。

「とまぁ、全員無事だな!それじゃあ行くぞ!」

「いや…待って。あの暴風の中にいくのか?」

「でも倒さないと被害広がるんだろ?」

キルアはそう言うとキョトンとする。ここはキルアが正論だが、いくらなんでも命知らずだ。

「そういう訳じゃなくて」

「そうですよ。大丈夫です。私が行きます」

後ろから声がする。どうやらカノンがビルから降りてきたらしい。

「あの力を抑えれるのは私しかいません。なら…」

「ちょあたしじゃ無理だってのか!」

「そうです!彼の強さは私が知ってますから!」

「そうだとよ」

ヒカルも頷く。

「うううううう…」

キルアは唸り声を上げるが、一応納得したようだ。だが俺の中にはまだふとした疑問がここで浮かび上がった。それも壮大な程の…

何故浮かび上がったのかは分からない。だがここで聞くべきではないだろう。キルアに後で直接聞いてみよう。

「それじゃあ行ってきます」

カノンはそう言うとすぐに吹き荒れる暴風へと突っ込んでいった。

その瞬間、隣のビルが亀裂を上げて崩れ始める。

「やばいぞ逃げろ!」

ヒカルの叫び声とビルの倒壊音が重なった。



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