現代転生 _その日世界は変わった_

胚芽米

文字の大きさ
上 下
139 / 237

第115話 香港襲撃事件(2)

しおりを挟む
「その…デモって何ですか?」

カノンはポカンとした顔でそう聞く。

「簡単に言うと、政府…あんた達で言う王国への抗議だよ」

「そんなことしたらクビが飛んでたけどな」

俺の記憶では確かそうだ。多くが民主主義であることを感謝している。

「香港では選挙に関しての政府に対するデモが起きてる。2020年あたりから香港で多くなって活発化してる。おかげで人口密度はNO.1。経済発展も合わせて、首都の北京、上海に並ぶほどのサイバー都市」

「なるほど、デモをする理由は自分達の境遇を良くするための意思表示だと」

「そうだよ」

ヒカルの言葉は煙の昇る場所へと向かって行くパトカーの音で消された。

「…あくまで犯罪はしないはずだ。抗議だけなんだ。あの爆発は警察官が言ってたように多分デモじゃない気がする」

「あたしが見る限り、あのでっかい建物は何ともなってないぞ」

「それは良かった」

俺は心からそう言った。なんというか命が多く失われすぎてる感じがする。

しかし、上空で昨日聞いた音にあまりにも似すぎた音を聞いて、俺の心に考える余裕はなくなる。

ギュオーーーン!

「なっ…Su-27…」

「また戦闘機かよ!私にどれだけ苦労させる気だ」

2機の戦闘機が煙の昇る場所へと向かって行ったのだ。

ヒカルが言うにはSu-27という戦闘機らしい。よく見ればアメリカで襲ってきた戦闘機とは違う。全体的に平べったく青い。

「……なぁ、久しぶりの登場かも」

唐突にアナリスはそう言った。その顔には笑みが浮かんでいる。カノンも気づいたようで

「…この感じ…まさか…あの…」

「魔力探知が反応した」

「それって…つまり?」

俺はその先の言葉を言えなかった。まためんどう事だ。

魔力、すなわち俺達の世界の者、魔導具あるいは…

魔王、魔王の幹部。

「行く…か?」

俺はそっと4人の顔を見ながら言う。いい加減めんどう事も慣れてくる頃だろう。どちらでもいい。おそらくだが答えは…

「…行くか」
_________________
高層ビルが立ち並ぶ街の中心部、俺達はそこに歩いたわけだが。

「どうも、海の方での爆発っぽいね。私の見る限り」

溢れるばかりの人達が何事かと騒いでいること以外は特にない。だがその人混みはかなり窮屈だ。

「うげぇ…あたし人多いの嫌いなんだよ…」

キルアはその身長ゆえにどこかに消えてしまっている。

俺が人混みを避けようと後退ろうとした瞬間。

ピジュン!

辺りに響き渡る甲高い音。その音が聞こえた方向に顔を向け、いや上げる。ほぼ真上を向いた場所には高層ビル。

高層ビルは破片をパラパラと落としながら、あろうことか、こちら側へと崩れてきたのだ。

「きゃー!」

「おい!逃げろ!」

一気に現場は大混乱。後退ろうとした俺に人の体が次々とぶつかる。

「キルアとカノンは!?どこ行ったの!?」

ほぼ隣にいたアナリスがそう言う。ヒカルの姿は遠くに見えるが二人がいなくなっている。

そうこうしているうちにビルの傾きは大きくなる。多くの車やトラックがぎゅうぎゅう詰めとなったビル前の交差点に人が殺到する。その中には警察官の姿やパトカーも見える。

俺は人混みの雪崩に巻き込まれる形でその場をあとにする。そして…

ズドーン!

濁った茶色の煙と共にビルは崩れ落ちる。
_________________
カノンは人混みを避けようとするが、それが無理だということに気づいた。

左斜のビルが突然、崩れ落ちたことのパニックで多くの人が我先にと殺到しているからだ。

私は誰かの足に引っ掛かってしまい、そのまま転んでしまう。幸い誰かに踏まれることはなかったが、勢いで立ち上がることはできない。

そして、ビルが完全に地面に付いた時には、周りに人はおらず、代わりに私を茶色の煙が覆っていた。

私はやっとのことで立ち上がる。先程から体全体に嫌な予感が巡り回っている。何者かが私達を狙っているかのような。だがこの感じは…

「ま、魔力…」

私は一人出にそう発していた。魔力の流れ、その危機察知能力が私の全身を駆り立てていた。とんでもなく自身の魔力を隠すのが上手い。アナリスやキルアではない。

私は崩れたビルの方を見ていた。すぐになって破片郡が風に煽られ、私の全身に当たってくる。

私は目を覆いながらもその光景、いや何者かを見ようとする。

「……!」

私はおそらくこの世界に来た時以上の驚きを覚えたに違いない。

何者、いや彼。白銀の鎧と灰色のボサボサの髪、その渋い顔には引っ掻かれた、斬られた傷があちこちにある。

「……久しいな。会うのは何年ぶりだ?」

彼は重曹な老騎士の姿で私に話しかけてきた。私とほぼ同じ色の白銀の鎧。鎧は今は着ておらず、完全に私服なのだが忘れるはずがなかった。

「剣は…ないのか?」

彼の問いかけに答えるまえにキキッー!という音と車のドアが勢いよく開かれる音。

「おい!お前達何をしている!?」

ヒカルがさっき言っていた警察、香港警察が道路からジワジワとやって来ていた。飛び散ったビルの破片で車ではこちらへと来れないらしい。6人程の警察官が拳銃を構えている。

彼はその様子を横目で一瞬確認したかと思うと、鞘から取り出した大剣を地面へと突き立てる。

警察官達はその大剣を見るやいなや、顔に恐怖が現れたが、問題はそこではない。

「…!何を…するつもりですの?」

「邪魔者を消すだけです」

それを聞いた私は咄嗟に声を警察官達に向けて

「早く!逃げて!」

警察官達は私の声が聞こえたはずだが、動くことはなかった。そして…

地面に勢いよく亀裂が入り、その亀裂は四方八方へと伸びる。

その亀裂は警察官達の足元にまで到達した瞬間、その亀裂から土色の地面そのものが隆起するようにして警察官を吹き飛ばす。

警察官は悲鳴を上げることもなく隆起した地面の奥に引き込まれる。隆起した地面は近くのビルや車の一部をも吹き飛ばしていた。

「な、なんで、あの人達を…」

殺したのか?そう言おうとしたが、言葉の意味通りに捉えたくない気持ちがあってか、その先が出ない。だが彼はその問いが分かったのか

「なんで、か。それは簡単だ。私も魔王様の幹部だからだ」






しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

アレク・プランタン

かえるまる
ファンタジー
長く辛い闘病が終わった と‥‥転生となった 剣と魔法が織りなす世界へ チートも特典も何もないまま ただ前世の記憶だけを頼りに 俺は精一杯やってみる 毎日更新中!

神創系譜 第一章「竜と誓約の大地」

橘伊鞠(ろさ)
ファンタジー
これは、「特別」な存在になりたかった竜の物語。 リリーは14年前に行方不明になった聖騎士の姉を探すため、聖騎士となった。だが落ちこぼれ、変わり者と呼ばれる彼女は孤独な日々を送っていた。そんな彼女の元にある人物が尋ねてきて…… ※2006年から個人サイトで掲載していたweb小説の再掲です。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。 しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。 探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。 だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。 ――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。 Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。 Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。 それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。 失意の内に意識を失った一馬の脳裏に ――チュートリアルが完了しました。 と、いうシステムメッセージが流れる。 それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される

マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。 そこで木の影で眠る幼女を見つけた。 自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。 実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。 ・初のファンタジー物です ・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います ・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯ どうか温かく見守ってください♪ ☆感謝☆ HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯ そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。 本当にありがとうございます!

処理中です...