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1965年(6)

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私が朝食を研究所で取っていた時のことだ。ある人物に話しかけられた。

「ナワリヌフ、そこにいたか」

「所長」

その年配の白髭を薄く生やした男、この研究所の所長はどうやら私を捜していたらしい。

「君は確か生物学にも多少精通していたよな?」

「えぇ、そうですが」

生物学は学位を取れる程ではないが、幼少期に多少の興味があってそこそこの知識はある。無論、CIA諜報員として生物学などは関係なく、それを正直にこの研究所に伝えていたが。

「外に行ってくれ。どうも面倒なことが起きてる」

「誰か来たんですか?」

私は第一にジョーヒンの姿が思い浮かぶが所長は顔をしかめた後、意外な答えを言う。

「軍だ。緊急で生物学の知識を持っている奴を集めているらしい」

「軍?」

「そうだ。とにかく行ってくれ」

所長はそう言うと私の前から立ち去って行く。まだ質問したいことはあったのだが。

とにかく私は外に出る。確かにそこにはソ連軍らしき車両と兵士がいた。全員で8人程度だろうか。

「その…なんだ?私に何か用かね?」

私はおそらく年配で位が高い兵士であろう人物にそう聞くと

「あぁ、あんたか。生物学の学位を持ってるのか?」

「持ってはないが多少の知識はある。それがどうした?」

そう言うと年配の兵士はいくらか迷った表情になったかと思うと

「…この研究所には生物学の知識がある奴が一人しかいないのか。まあいい。明日ここに集合してくれ。身分証明書も持ってくるように」

年配の兵士は無理やり私にメモ用紙を渡すと、乗ってきたであろう軍用車両に乗って行く。

「一応言うが任意だ。行かなくてもいい」

そう言うと車を走らせて行った。

内容すら知らされない待ち合わせなど正直投げ捨てものだが…何故だか私は直感的にこの待ち合わせ場所に行こうと決めたのだ。
 
それからはいつも通りの研究を繰り返す作業に戻る。そしていつの間にか帰宅時間と変わらない。

謎多き一日だった気がする。家の帰路までが遠く感じる。道路には相変わらず雪が積もっておりポストも…ポストには雪が積もっていない。つまり手紙がきているということだ、また。

私は少し駆け足になるとポストを覗く。嫌な予感というのだろうか、とにかく急いで見なければいけない衝動に駆られていた。

そこには3日前に見た封筒がまた入っていた。私はそれをその場で封筒を破り捨て、手紙を読む。

そこには短くだがこう書かれていた。
____
密談にてソ連は関わりを否定。アメリカはソ連の主張を信用せず、これを先制攻撃とみなし、アラスカ州での警戒を強める。

ソ連軍の動きが活発化。ソ連海軍がオホーツク海を航海しているのを発見。またU-2偵察機により、ウクライナ付近でのソ連陸軍の演習が確認された。

よってデフコンを3に引き上げる。

____CIA長官
_________________
翌朝、私は急いで体を起こす。まだ朝の5時30分だが。

今日は雪がそこまでひどくない。ソ連での生活が馴染んでしまっているせいか雪がひどくないことに違和感を覚えてしまう。

昨日の手紙が急がせる。何かが待っているとこの時、確信していた。

ソ連軍は私を呼んでいた。内容は知らされていない、だが生物学に精通した人間を捜している。

これがアムチトカ島で発生した謎の生物と関係ないはずがない。私はあそこで情報を掴まなければいけないのだ。

-ソビエト社会主義共和国連邦 スンツォヴィ-

「身分証明書は?」

「持っている。だがあれはなんだ?」

「極秘事項だ。よし例のメモもあるな。乗っていいぞ」

そこにはどう見てもヘリコプターにしか見えないものがあったのだ。それも驚きだが、私はその大きさに驚愕する。

分厚い装甲と武装、黄緑色のソ連仕様にコーティングされたその機体の中は最低でも5人以上は乗れそうな機体の大きさとなっている。用途は様々だろうと考えながらもアメリカに伝えるべき代物だと私は考える。これは間違いなく脅威となる。

「極秘で運用されているとだけ伝える!」

兵士はそう叫ぶと私をヘリコプターの中へと乗せる。

ヘリコプターが数人の科学者らしき男達を乗せ、飛び立ったのはまもなくだった。


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