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1965年
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1950年 冷たい戦争、冷戦の開始
1950年 北朝鮮が北緯38度線を超え、韓国を攻撃。朝鮮戦争の開始
1951年 サンフランシスコ平和条約が結ばれる
1954年 米国、水爆の実験。キャッスル作戦が行われる
1955年 ワルシャワ条約締結、東西の軍事ブロック化
1955年 アジア・アフリカ会議が行われる
1959年 ソ連の最高指導者が歴史上初となる訪米。冷戦の緊張緩和
1961年 ベルリンの壁が建築される
1961年 ソ連、人類史上初の宇宙での有人飛行に成功
1962年 キューバ危機。ソ連のミサイル撤去により正面衝突は免れる。再び冷戦に緊張
1963年 当時の米国大統領が暗殺される
1964年 中国、初の核実験
1964年 東京オリンピック開催
1965年 米国アラスカ州アムチトカ島で謎の生物が確認される
_________________
「諸君らの仕事ぶりを期待している」
この言葉はCIA長官が言っていたことを覚えている。この言葉は鮮明に覚えている。
シベリアの針葉樹林帯に送られる3日前、私は彼の言葉を聞いた。
そして高級感が漂うワインを一杯グラスに注がれて飲んだことを覚えている。注いでくれたのは同僚か、はたまた友人か…そんな人だ。
ここに来てから既に6年が経っていた。今はいつ何日だろうとカレンダーを見る。
-1965年3月2日-
時刻は丁度8時。一人目覚めてから30分。私は外に出る。
-ソビエト社会主義共和国連邦 キーロフ 原子力研究所-
ここの研究員として4年。優秀なソ連の学者としての地位を築きあげるまでに今日までかかってしまった。
私はスパイだ。35歳を迎えたアメリカ人。今日再びアメリカに情報を送る。私が見た聞いた全てをだ。
私は白い研究所の門を潜ろうとするが、黒服の男達が警備員と話しているのを反射的に横目で見る。
黒服の男達は何を話したのかは分からないが警備員との話をやめ、そして
「失礼。少し良いですかな?」
男は私に話しかける。
「…あんたは?」
私はなんとなくで素性は分かるが一応聞いてみる。
「KGB。それで十分なはずだな。ここにカシヤノフ博士という人物はいられるかな?あの警備員に聞いても知らないと答えたもんだからな」
その男は自分の要件を早急に伝えると答えろとばかりにこちらを見つめる。
背が高い。狐のような男だ。青い目をしている。黒い帽子に黒い服で統一されたその格好はまさしくKGB、ソ連国家保安委員会に相応しいと言えるだろう。
「…さあ知らないな、申し訳ないが私は先に行かせてもらう」
私は彼を払うかのように先へ行こうとするが、その男は私の肩に手を乗せ、止めようとする。
「まあ待つんだ。話を聞く気になることを教えてやる。一躍有名人になるチャンスだ」
「はあ?」
私はその男が何を言っているのか分からず立ち止まってしまう。
「少しでも興味があれば…こっちに来い」
その男は不敵に笑ってそう言う。ソ連において微笑むというのは失礼にあたる行為だというのに。
「さあ早くこっちに」
男はなおも呼びかける。KGBらしからぬ男だと思った。
しかしCIAの諜報員としては彼の話を聞くのも悪くはない。予期せぬKGBの男との出会い。
「一体なんなんだ?私も暇なわけじゃないぞ」
「なーに。私だって仕事の一部だ。この男を知らないか?」
男は手に持っているモノクロの写真を私に見せてくる。
「こいつはイワン カシヤノフ。キーロフの原子力研究所で働いているはずの男だ。博士だそうだ」
「なるほど、だがそんな奴は知らないな。他の研究員にあたってくれ。300人しかいないんだからいずれは見つかるさ」
「待つんだ。300人しかではない、300人もだ。全員に聞けってわけにはいかんな、なにせ私には時間がない。そこでだ」
こいつからは有力な情報が聞けないと立ち去ろうとした瞬間
「君に捜しだしてもらいたいわけだ。無論タダではない。KGBと国防省は良くも悪くもな関係なんでな。私が入ると…少々面倒にな…」
「悪いが話は終わりだ。仕事に遅れてしまう」
内心私は嫌な予感がしている。カシヤノフという男のことは本当は知っている。だがこいつに話すわけにはいかない。何故なら…
「待つんだ。この男は…」
直後私が危惧していたことをあっさりと男は白状する。
「資本主義の犬の可能性がある。こいつはデカい仕事になるぞ」
失礼にもその男は笑っていた。
1950年 北朝鮮が北緯38度線を超え、韓国を攻撃。朝鮮戦争の開始
1951年 サンフランシスコ平和条約が結ばれる
1954年 米国、水爆の実験。キャッスル作戦が行われる
1955年 ワルシャワ条約締結、東西の軍事ブロック化
1955年 アジア・アフリカ会議が行われる
1959年 ソ連の最高指導者が歴史上初となる訪米。冷戦の緊張緩和
1961年 ベルリンの壁が建築される
1961年 ソ連、人類史上初の宇宙での有人飛行に成功
1962年 キューバ危機。ソ連のミサイル撤去により正面衝突は免れる。再び冷戦に緊張
1963年 当時の米国大統領が暗殺される
1964年 中国、初の核実験
1964年 東京オリンピック開催
1965年 米国アラスカ州アムチトカ島で謎の生物が確認される
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「諸君らの仕事ぶりを期待している」
この言葉はCIA長官が言っていたことを覚えている。この言葉は鮮明に覚えている。
シベリアの針葉樹林帯に送られる3日前、私は彼の言葉を聞いた。
そして高級感が漂うワインを一杯グラスに注がれて飲んだことを覚えている。注いでくれたのは同僚か、はたまた友人か…そんな人だ。
ここに来てから既に6年が経っていた。今はいつ何日だろうとカレンダーを見る。
-1965年3月2日-
時刻は丁度8時。一人目覚めてから30分。私は外に出る。
-ソビエト社会主義共和国連邦 キーロフ 原子力研究所-
ここの研究員として4年。優秀なソ連の学者としての地位を築きあげるまでに今日までかかってしまった。
私はスパイだ。35歳を迎えたアメリカ人。今日再びアメリカに情報を送る。私が見た聞いた全てをだ。
私は白い研究所の門を潜ろうとするが、黒服の男達が警備員と話しているのを反射的に横目で見る。
黒服の男達は何を話したのかは分からないが警備員との話をやめ、そして
「失礼。少し良いですかな?」
男は私に話しかける。
「…あんたは?」
私はなんとなくで素性は分かるが一応聞いてみる。
「KGB。それで十分なはずだな。ここにカシヤノフ博士という人物はいられるかな?あの警備員に聞いても知らないと答えたもんだからな」
その男は自分の要件を早急に伝えると答えろとばかりにこちらを見つめる。
背が高い。狐のような男だ。青い目をしている。黒い帽子に黒い服で統一されたその格好はまさしくKGB、ソ連国家保安委員会に相応しいと言えるだろう。
「…さあ知らないな、申し訳ないが私は先に行かせてもらう」
私は彼を払うかのように先へ行こうとするが、その男は私の肩に手を乗せ、止めようとする。
「まあ待つんだ。話を聞く気になることを教えてやる。一躍有名人になるチャンスだ」
「はあ?」
私はその男が何を言っているのか分からず立ち止まってしまう。
「少しでも興味があれば…こっちに来い」
その男は不敵に笑ってそう言う。ソ連において微笑むというのは失礼にあたる行為だというのに。
「さあ早くこっちに」
男はなおも呼びかける。KGBらしからぬ男だと思った。
しかしCIAの諜報員としては彼の話を聞くのも悪くはない。予期せぬKGBの男との出会い。
「一体なんなんだ?私も暇なわけじゃないぞ」
「なーに。私だって仕事の一部だ。この男を知らないか?」
男は手に持っているモノクロの写真を私に見せてくる。
「こいつはイワン カシヤノフ。キーロフの原子力研究所で働いているはずの男だ。博士だそうだ」
「なるほど、だがそんな奴は知らないな。他の研究員にあたってくれ。300人しかいないんだからいずれは見つかるさ」
「待つんだ。300人しかではない、300人もだ。全員に聞けってわけにはいかんな、なにせ私には時間がない。そこでだ」
こいつからは有力な情報が聞けないと立ち去ろうとした瞬間
「君に捜しだしてもらいたいわけだ。無論タダではない。KGBと国防省は良くも悪くもな関係なんでな。私が入ると…少々面倒にな…」
「悪いが話は終わりだ。仕事に遅れてしまう」
内心私は嫌な予感がしている。カシヤノフという男のことは本当は知っている。だがこいつに話すわけにはいかない。何故なら…
「待つんだ。この男は…」
直後私が危惧していたことをあっさりと男は白状する。
「資本主義の犬の可能性がある。こいつはデカい仕事になるぞ」
失礼にもその男は笑っていた。
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