上 下
93 / 237

第88話 ワシントン

しおりを挟む
ベヒーモスは相変わらずスピードを落とすことなく道を走る。その目の前には緑、公園のようなものが広がっている。

7thストリート-パーク-アンド-ファウンテン

そう書かれているのが見える。ベヒーモスはその公園を一蹴するかのように中へどんどんと突き進んで行く。

「タクシーじゃあ中入れんぞ」

ヒカルはそう言うと公園の前にタクシーを横にするように止めて降りるよう促す。

ベヒーモスはどんどんと突き進んで…止まる。いきなり止まったのだ。

「…頭は良いのな、目の前にポトマック川があるから止まったってか?」

ベヒーモスはゆっくりとこちらへと振り返り、黄色く光る眼を…こっちに

「ねえ、これまずくない?」

俺がそう言った時には遅く、ベヒーモスはこっちへ突進してくる。

(気の変わり様が早すぎる!なんだよ!俺突進されてばっかじゃねえか!)

心の中でそう叫んだ時ベヒーモスはすぐ目の前にいた。鼻の上にある突起物は俺の体を真っ二つに突き破りそうなくらい大きい。

だがベヒーモスは再び何かに阻まれるようにして止まる。横を見るとアナリスが手の平をベヒーモスに向けて、思いっきり横に振り払うとベヒーモスのその巨体は大きく横に倒れ、木々をなぎ倒す。

「ば、馬鹿重い…」

アナリスはそう呟くと手をダランとさせる。どうやら意外と重いらしい。

「お前賢者なんだろ?もう少し頑張れよ」

「うるさいなあ!私は人を守っての戦闘は得意じゃないっつーの!」

「二人共やめてください!」

カノンがそう言う中、ベヒーモスは四足歩行の格好になり、そして二足歩行になった瞬間スタートダッシュを決めてくる。

「もう起き上がったのか」

「どーすんだよまた来るぞ!やばいぞ!」

キルアが急かすように叫ぶとアナリスが右手の人差し指と中指を重ね、ベヒーモスへと向ける。

「[雷]!」

別段魔法を使うのにあたり叫ぶ必要はないのだがアナリスはそう言うとベヒーモスに向けて電流がパチパチと放たれる。

電流はベヒーモスの周りでパチパチと言わせ、感電によって立ち止まり、痙攣する。

「今やっちゃって!」

「……あ、そういうことですね!キルアさん倒しますよ!」

「え?何を!?あれをか!?」

カノンがそう言って先に行くとキルアもたどたどしく動き出す。

俺はと言うと一応使えそうな下位魔法を思い浮かべ、ただただ

「…ガンバレ~」

と呟くばかりである。そしてカノンもベヒーモスの目の前に立ち、跳び上がる。ベヒーモスの頭上から一瞬の間にベヒーモスの背後に回る。その間に刃を回転しながらベヒーモスの体に入れていく。

キルアも負け時と正面に立ち、一瞬戸惑うような行動を見せたが次の瞬間にはベヒーモスの頭に飛び付き、真ん中の部分にナイフを突き、カツンと言わせた後、頭から足にかけて一瞬に亀裂を入れながら降りていく。

「なんかすご」

ヒカルは感心するようにそう言うがとうのヘビーモスは意外とピンピンしている。そして電流がまだパチパチ言う中、手をブンブンと振り払い、藻掻くように暴れ始める。

「ぬわ!?ぬわ!?」

最初にキルアが慌て始めるがそう言いながらも巨大な手をスイスイと避けていく。

「なるほどね、めちゃくちゃ硬いのか、だったらあ!」

アナリスはそう言うと今度は手を上に振り上げる。

するとヘビーモスの体は宙に浮き始め、10mくらいの高さでプカプカと浮遊する状態になる。

「皆そこら辺から離れて」

アナリスがカノンとキルアに向けてそう言うと、手を思いっきり下へと…

言わなくても分かるだろう。ヘビーモスは頭から地面にグサリと刺さりに行くように落下していった。

ヘビーモスが落ちた周辺には落下跡が円形に広がっている。

けどまあ…それくらいで死ぬとは思ってませんでしたよ。だってあいつの見た目的に…

案の定ヘビーモスはその体を前から起こし、再び安定した体制に入る。俺は思わずその様子を見て

「あそこまで硬いのかよ」

「硬いか…ガイム硬いって…あ、分かった」

それまで何も発しなかったヒカルが独り言のように呟き

「あの…宝石、ダイヤモンドの硬さが反映されてると思う?」

「…それ私に言ってる?今対抗できる魔法考えてんだけど邪魔しないでよ」

アナリスは考え事を邪魔されて若干毒づくがヒカルは関係ないと思っているのか続ける。

「いやな、ガイムがさ、ニューヨークのバスでよ…」

そしてベヒーモスは二足で完全に立ち上がる。それを見たカノンがベヒーモスの正面、キルアがベヒーモスの背後に回って攻撃を始める。

「一番硬い鉱石は翡翠って言ってたじゃん、あれ硬い鉱石ではないけど割れないんだよね」

「何の話?俺関係あるのか?」

ヒカルは俺を無視してアナリスを見て続ける。

「それでダイヤモンドは確かに一番硬い、けど割れやすさは別、つまり…あとは分かるね?」

ヒカルは知的にそう言った。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

【12/29にて公開終了】愛するつもりなぞないんでしょうから

真朱
恋愛
この国の姫は公爵令息と婚約していたが、隣国との和睦のため、一転して隣国の王子の許へ嫁ぐことになった。余計ないざこざを防ぐべく、姫の元婚約者の公爵令息は王命でさくっと婚姻させられることになり、その相手として白羽の矢が立ったのは辺境伯家の二女・ディアナだった。「可憐な姫の後が、脳筋な辺境伯んとこの娘って、公爵令息かわいそうに…。これはあれでしょ?『お前を愛するつもりはない!』ってやつでしょ?」  期待も遠慮も捨ててる新妻ディアナと、好青年の仮面をひっ剥がされていく旦那様ラキルスの、『明日はどっちだ』な夫婦のお話。    ※なんちゃって異世界です。なんでもあり、ご都合主義をご容赦ください。  ※新婚夫婦のお話ですが色っぽさゼロです。Rは物騒な方です。  ※ざまあのお話ではありません。軽い読み物とご理解いただけると幸いです。 ※コミカライズにより12/29にて公開を終了させていただきます。

処理中です...