78 / 237
第73話 アフリカ動乱(2)
しおりを挟む
『電波良好。天気は快晴。全部隊地上調査を開始、リトルバードは旋回しろ』
「マキシモフはヘリコプターに乗って、共に偵察を頼む!」
「あいよ!GAU-19が欲しくなったらいつでも!」
マキシモフはそう言うとブラックホークに取り付けてあるガトリング砲をドアに固定させる。
「アレク、こいつは」
「ああ…」
俺とロイドは同じことを思ったらしい。人が住んでいないどころかその痕跡が消えていた。食べ物や車はその辺に長い間放置されている状態。それが一面に広がっている。
「ほんとにここなんですか?」
「そのはずだ」
ハミルトンが疑問の声を上げる。その時クリスが何かに気づいたのか
「隊長!あれを!」
その先には床に置いてある何か。違うあれは生き物。それが建物の影に隠れるようにして倒れている。
いち早く気づいたクリスがM4を構えて向かう。
「……死んでます。完全に。胸にどデカイ大穴が」
「…全員はぐれるな!俺についてこい!」
俺はそう言うとハミルトンとクリス、そしてロイドが付いてくる。
全員がM4を構え、あちこちに銃を向けながら調査する。
「死体もあれだけ。他の異常なし」
クリスがそう言った時、足が急に止まる。
「いや待て、ハミルこっちだ」
「どうし…」
クリスに呼ばれたハミルトンは動きを止める。
「た、隊長。やばいです!ここからの臭いがとんでもなく」
「臭いだと?」
俺はそう言われ咄嗟に嫌な予感がする。アフガニスタン敵勢力の制圧、その際にすぐ目の前で死んだ彼らの臭いは凄まじく、今でも忘れられない程だが。
「…間違いなく中に」
クリスは俺に語りかけるようにしてそう言った。その先は言われなくても分かった。
「俺が先に入る。後に続け。周囲の警戒を怠るな」
俺がそう言うとまず先頭に俺、ロイド、クリス、ハミルトンの順に建物の中に入っていく。
「ロイド、無線で今の状況を本部に伝えてくれ」
「分かった。こちらオメガ01。現在の状況は…」
ロイドは立ち止まり本部とやりとりをしている間に俺はどんどん中へと入っていく。黒の防弾チョッキと黒の軍用ヘルメットに汗が染み付くのが分かる。
M4の照準をいつでも合わせられるようにする。建物内の開けた場所、そこに出た俺は驚愕する。
「な、なんだこれは…」
思わず口に出ていた。横目でだがクリスとハミルトンも驚愕しているようだ。
「死体の山か、こりゃあ隊長まずいぜ」
「すぐに本部に知らせろ」
目の前には何十にも重ねられた死体。それが小さな山を作っていた。服はあちこちが破け、肌が露出した人間の死体が。腐ってウジとハエが湧いている。
その時無線越しに何かが聞こえる。
『こ、こちらストライカー02。敵だ!敵がいる!正体不明!繰り返す!正体……』
無線は途切れる。と同時にそう遠くない場所で何かが割れる、落ちる音がする。
全員が一斉にそちらへと銃を向ける。その時ロイドが俺達に追いつき走りながら言う。
「ロイド、本部には知らせたのか?」
「この地域での殺戮がここまで大規模だとは思ってなかったらしい。それに…」
ロイドがそう言いかけた時、突如今いる建物の壁が崩れ落ちる。
近くにいたクリスが後ろに下がりながら周囲に銃を向ける。壁の外に何かがいることを警戒しているようだがそこには何もいない。
しかしそこに何もないだけで凄まじい暴風が吹き荒れ、建物の中へと入ってくる。
「隊長!まずいぞこれ!」
クリスは声を荒らげる。俺はそれに反応するかのように
「皆退け!」
「隊長これは一体…」
ハミルトンは吹き荒れる暴風に困惑したようだ。
「ロイド!マキシモフから何かないのか?」
「マキシモフ!おい!駄目だ繋がらない!」
「隊長!何かが来る!」
クリスはそう言うとさらに大きく後退する。俺達もそれに合わせる。銃を一斉に向ける。M4の照準は全て崩れ落ちた壁に向けられる。
ガガガという音と共に崩れ落ちた壁を起点として再び壁の崩れが広がる。砂嵐が壁の外の景色を濁している。そしてダガンと壁がひび割れる音と共に何かが姿を現す。
「誰だ!お前は!?」
俺は人か何かも分からない存在にそうぶつける。その存在は何も答えない。だがおそらく…手をかざしている。暴風でよく見えないがおおむね人型だ。
「撃て!」
俺の一言で全員がM4を撃つ。薬莢が落ち、銃口から明るい光が灯る。だが弾丸は全て奴の周りを吹くような暴風によって有効なのかが分からない。だが、その暴風自体が止んでないため、撃ち続けても無駄かと思った時、奴のいわゆる手の部分が赤く光るのを見逃さなかった。
「全員逃げろ!!!」
俺は咄嗟にそう言って全員を建物の外へと逃がすようにする。建物から素早く全員が抜け出すと共に謎の赤い光と共に壁にヒビが入って建物が崩れ落ちる。
建物の外は快晴。にも関わらず奴の周りには暴風が吹き荒れている。雲ひとつない場所で起きているハリケーン。
「走れ!走れ!」
俺は咄嗟に撤退を命じると全員が来た道を戻っていく。その間にも後ろからは建物が崩れ落ちる音が続いて響き渡った。
「マキシモフはヘリコプターに乗って、共に偵察を頼む!」
「あいよ!GAU-19が欲しくなったらいつでも!」
マキシモフはそう言うとブラックホークに取り付けてあるガトリング砲をドアに固定させる。
「アレク、こいつは」
「ああ…」
俺とロイドは同じことを思ったらしい。人が住んでいないどころかその痕跡が消えていた。食べ物や車はその辺に長い間放置されている状態。それが一面に広がっている。
「ほんとにここなんですか?」
「そのはずだ」
ハミルトンが疑問の声を上げる。その時クリスが何かに気づいたのか
「隊長!あれを!」
その先には床に置いてある何か。違うあれは生き物。それが建物の影に隠れるようにして倒れている。
いち早く気づいたクリスがM4を構えて向かう。
「……死んでます。完全に。胸にどデカイ大穴が」
「…全員はぐれるな!俺についてこい!」
俺はそう言うとハミルトンとクリス、そしてロイドが付いてくる。
全員がM4を構え、あちこちに銃を向けながら調査する。
「死体もあれだけ。他の異常なし」
クリスがそう言った時、足が急に止まる。
「いや待て、ハミルこっちだ」
「どうし…」
クリスに呼ばれたハミルトンは動きを止める。
「た、隊長。やばいです!ここからの臭いがとんでもなく」
「臭いだと?」
俺はそう言われ咄嗟に嫌な予感がする。アフガニスタン敵勢力の制圧、その際にすぐ目の前で死んだ彼らの臭いは凄まじく、今でも忘れられない程だが。
「…間違いなく中に」
クリスは俺に語りかけるようにしてそう言った。その先は言われなくても分かった。
「俺が先に入る。後に続け。周囲の警戒を怠るな」
俺がそう言うとまず先頭に俺、ロイド、クリス、ハミルトンの順に建物の中に入っていく。
「ロイド、無線で今の状況を本部に伝えてくれ」
「分かった。こちらオメガ01。現在の状況は…」
ロイドは立ち止まり本部とやりとりをしている間に俺はどんどん中へと入っていく。黒の防弾チョッキと黒の軍用ヘルメットに汗が染み付くのが分かる。
M4の照準をいつでも合わせられるようにする。建物内の開けた場所、そこに出た俺は驚愕する。
「な、なんだこれは…」
思わず口に出ていた。横目でだがクリスとハミルトンも驚愕しているようだ。
「死体の山か、こりゃあ隊長まずいぜ」
「すぐに本部に知らせろ」
目の前には何十にも重ねられた死体。それが小さな山を作っていた。服はあちこちが破け、肌が露出した人間の死体が。腐ってウジとハエが湧いている。
その時無線越しに何かが聞こえる。
『こ、こちらストライカー02。敵だ!敵がいる!正体不明!繰り返す!正体……』
無線は途切れる。と同時にそう遠くない場所で何かが割れる、落ちる音がする。
全員が一斉にそちらへと銃を向ける。その時ロイドが俺達に追いつき走りながら言う。
「ロイド、本部には知らせたのか?」
「この地域での殺戮がここまで大規模だとは思ってなかったらしい。それに…」
ロイドがそう言いかけた時、突如今いる建物の壁が崩れ落ちる。
近くにいたクリスが後ろに下がりながら周囲に銃を向ける。壁の外に何かがいることを警戒しているようだがそこには何もいない。
しかしそこに何もないだけで凄まじい暴風が吹き荒れ、建物の中へと入ってくる。
「隊長!まずいぞこれ!」
クリスは声を荒らげる。俺はそれに反応するかのように
「皆退け!」
「隊長これは一体…」
ハミルトンは吹き荒れる暴風に困惑したようだ。
「ロイド!マキシモフから何かないのか?」
「マキシモフ!おい!駄目だ繋がらない!」
「隊長!何かが来る!」
クリスはそう言うとさらに大きく後退する。俺達もそれに合わせる。銃を一斉に向ける。M4の照準は全て崩れ落ちた壁に向けられる。
ガガガという音と共に崩れ落ちた壁を起点として再び壁の崩れが広がる。砂嵐が壁の外の景色を濁している。そしてダガンと壁がひび割れる音と共に何かが姿を現す。
「誰だ!お前は!?」
俺は人か何かも分からない存在にそうぶつける。その存在は何も答えない。だがおそらく…手をかざしている。暴風でよく見えないがおおむね人型だ。
「撃て!」
俺の一言で全員がM4を撃つ。薬莢が落ち、銃口から明るい光が灯る。だが弾丸は全て奴の周りを吹くような暴風によって有効なのかが分からない。だが、その暴風自体が止んでないため、撃ち続けても無駄かと思った時、奴のいわゆる手の部分が赤く光るのを見逃さなかった。
「全員逃げろ!!!」
俺は咄嗟にそう言って全員を建物の外へと逃がすようにする。建物から素早く全員が抜け出すと共に謎の赤い光と共に壁にヒビが入って建物が崩れ落ちる。
建物の外は快晴。にも関わらず奴の周りには暴風が吹き荒れている。雲ひとつない場所で起きているハリケーン。
「走れ!走れ!」
俺は咄嗟に撤退を命じると全員が来た道を戻っていく。その間にも後ろからは建物が崩れ落ちる音が続いて響き渡った。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

わし七十歳定年退職者、十七歳冒険者と魂だけが入れ替わる ~17⇔70は地球でも異世界でも最強です~
天宮暁
ファンタジー
東京郊外で定年後の穏やかな生活を送る元会社員・桜塚猛(さくらづかたける)、70歳。
辺境の街サヴォンに暮らす万年D級冒険者ロイド・クレメンス、17歳。
冒険者ランク昇格をかけて遺跡の奥に踏み込んだロイドは、東京・桜塚家で目を覚ます。
一方、何事もなく眠りについたはずの桜塚猛は、冒険者の街サヴォンの宿屋で目を覚ました。
目覚めた二人は、自分の姿を見て驚愕する。ロイドはまったく見覚えのない老人の身体に、桜塚は若く精悍な冒険者の身体に変わっていたのだ。
何の接点もなかったはずの二人の意識が、世界を跨いで入れ替わってしまったのだ!
七十歳が十七歳に、十七歳が七十歳に――
いきなり常識の通じない「異世界」に放り出された二人の冒険が、今始まる!
※ 異世界、地球側並行で話が進みます。
完結まで毎日更新の予定です。
面白そう!と思ってもらえましたら、ご応援くださいませ。

雑貨屋リコリスの日常記録
猫餅
ファンタジー
長い旅行を終えて、四百年ぶりに自宅のある島へと帰宅した伊織。しかし、そこには見知らぬ学園があった。更には不審者として拘束されかけ──そんな一日を乗り越えて、伊織は学園内に自分の店舗を構えることとなった。
雑貨屋リコリス。
学園に元々ある購買部の店舗や、魔術都市の店とは異なる品揃えで客を出迎える。……のだが、異世界の青年が現れ、彼の保護者となることになったのだ。
更にもう一人の青年も店員として、伊織のパーティメンバーとして加わり、雑貨屋リコリスは賑わいを増して行く。
雑貨屋の店主・伊織と、異世界から転移して来た青年・獅童憂、雪豹の獣人アレクセイ・ヴィクロフの、賑やかで穏やかな日常のお話。
小説家になろう様、カクヨム様に先行投稿しております。
フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話
カトウ
ファンタジー
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。
チートなんてない。
日本で生きてきたという曖昧な記憶を持って、少年は育った。
自分にも何かすごい力があるんじゃないか。そう思っていたけれど全くパッとしない。
魔法?生活魔法しか使えませんけど。
物作り?こんな田舎で何ができるんだ。
狩り?僕が狙えば獲物が逃げていくよ。
そんな僕も15歳。成人の年になる。
何もない田舎から都会に出て仕事を探そうと考えていた矢先、森で倒れている美しい女性騎士をみつける。
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。
女性騎士に一目惚れしてしまった、少し人と変わった考えを方を持つ青年が、いろいろな人と関わりながら、ゆっくりと成長していく物語。
になればいいと思っています。
皆様の感想。いただけたら嬉しいです。
面白い。少しでも思っていただけたらお気に入りに登録をぜひお願いいたします。
よろしくお願いします!
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております。
続きが気になる!もしそう思っていただけたのならこちらでもお読みいただけます。

聖女の妹は無能ですが、幸せなので今更代われと言われても困ります!
ユウ
ファンタジー
侯爵令嬢のサーシャは平凡な令嬢だった。
姉は国一番の美女で、才色兼備で聖女と謡われる存在。
対する妹のサーシャは姉とは月スッポンだった。
能力も乏しく、学問の才能もない無能。
侯爵家の出来損ないで社交界でも馬鹿にされ憐れみの視線を向けられ完璧を望む姉にも叱られる日々だった。
人は皆何の才能もない哀れな令嬢と言われるのだが、領地で自由に育ち優しい婚約者とも仲睦まじく過ごしていた。
姉や他人が勝手に憐れんでいるだけでサーシャは実に自由だった。
そんな折姉のジャネットがサーシャを妬むようになり、聖女を変われと言い出すのだが――。

高校からの帰り道、錬金術が使えるようになりました。
マーチ・メイ
ファンタジー
女子校に通う高校2年生の橘優奈は学校からの帰り道、突然『【職業】錬金術師になりました』と声が聞こえた。
空耳かと思い家に入り試しにステータスオープンと唱えるとステータスが表示された。
しばらく高校生活を楽しみつつ家で錬金術を試してみることに 。
すると今度はダンジョンが出現して知らない外国の人の名前が称号欄に現れた。
緩やかに日常に溶け込んでいく黎明期メインのダンジョン物です。
小説家になろう、カクヨムでも掲載しております。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される
マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。
そこで木の影で眠る幼女を見つけた。
自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。
実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。
・初のファンタジー物です
・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います
・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯
どうか温かく見守ってください♪
☆感謝☆
HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯
そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。
本当にありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる