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第72話 アフリカ動乱
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2022年8月8日 西アフリカ標準時
午後1時32分
ナイジェリア北西部のスラム街
_________________
UH-60 ブラックホークは地上の様子が分かる高度で飛んでいた。並列してAH-6 リトルバードが4機囲むように飛んでいた。
「皆準備はいいな?水分補給を忘れるな」
TSA機動部隊リーダーのマイク アレックスは呼びかける。この暑さではいつバテてもおかしくない。地球温暖化は俺達全員の敵だ。
俺達がここにいる…その事の発端は俺がTSAの機動部隊リーダーになった時のことだ。とある報告が入った。
「先週、ナイジェリア北部にて国連のWFPによる食糧支援の実行最中に何十もの死体が発見された。検死によると餓死や病死ではなく、ほぼ同時刻に殺害されたそうだ。一気に何十の人間の殺害など…」
人間ではありえないそう言ったはずだ。中には銃を持ったまま死んだ人もいたとか。
そして現地に向かおうとしていた俺に追加報告が行われた。
「アレックス大尉。大事な報せが」
直接話しかけてきたのはアフガニスタンでお世話になったオルン大佐。オルン大佐もTSAに加入したということがその時分かった。
「まずは昇進おめでとう。早速だが話に移る」
昇進。俺はアフガニスタンでの戦いが評価され昇進していた。大佐は短くそう言うと
「後の調査によるとあれはナイジェリアだけではない。中央アフリカ共和国の西部、カメルーンでも同様の事態が確認された。始まったのは丁度2週間前くらいで中央アフリカ共和国だそうだ」
「ただの人間同士による殺し合いではないと」
「得体の知れない何かがアフリカ諸国で殺し回っているということだ。それと今から言うことは他の隊員には伝えるな」
「どういうことですか?」
「隊員の中には所帯を持つ者もいる。それと殺し回っているやつは殺害を命じるつもりだ。そのくらいの…」
大佐はここで話すのをやめる。その目には相当の怒りが込み上げられている。普通TSA機動部隊の仕事は異常存在の捕獲だと聞いたが初めての任務が殺害とは思っていなかった。
大佐は話すのを再び始める。
「カメルーンの内戦地域、そこで変死体がいくつか発見されている」
「変死体?」
「全員10代の少女の変死体だ。多くが紛争地域の孤児だったそうだ」
あとから聞いた話だが遺体は全裸で無数に傷つけられた跡があり苦しんで死んだ可能性が高いとのことだ。だが不可解なことがあると大佐は話しだした。
「変死体…それが見られたのは10代の少女のみだ。それ以外の死体は一撃で死んだということらしい」
「一撃?」
「言葉の意味そのままらしい。詳細は分からないが」
…犯人は少女意外には興味がないらしい。なんとも胸くその…
そして現在。UH-60 3機、計18人での任務が行われようとしていた。
『今回敵の勢力がどれほどまでか分からない。そこで現地での情報収集及び調査を行え』
「了解」
「アフガニスタンからこんな風になるとは思わなかったぜ」
隣でそう呟いたのはケニー ロイドだ。彼もまたアフガニスタンでの旧友だ。俺と同じように彼も空軍技術曹長に昇進している。最も二人共今は米軍としての仕事ではない。
「隊長!俺まだ秘密組織ってものが信じられません!」
そう言ったのは28歳で整った顔立ちをした金髪のハミルトンだ。TSAでは年齢に関係なく人間を雇っているらしい。厳しい合格検査を行うらしいが俺はアフガニスタンでの戦闘のおかげかスムーズに進めた。彼自体は親もTSAに勤務したおりその名残でここにいるらしい。
「あなたみたいなリーダーが我々の組織には不足していまして…是非ともこちらへと」
ホーミー秘密空軍基地で几帳面そうな男にそう言われたことを思い出す。
「気を引き締めろ。我々が精鋭から集められたということを忘れるな」
「はい!」
ハミルトンが勢いよく返事したかと思うと今度はロイドと同じ35歳で焦げ茶色の髪が特徴のクリスが俺に警告でもするかのように話しかける。彼は確かカナダ軍のJTF-2出身だと言っていたはずだ。
「隊長、人の気配がまったくない」
「ああ」
それは薄々勘づいたことだった。周りには舗装もされていない道路と縦一列に並ぶ不格好な民家、その全てに人が住んでいる雰囲気はなかった。
「あの広場で降下するぞ!」
パイロットはそう言うとヘリコプターを華麗に操作する。
「隊長はどうしてここへ?」
そう聞いたのは向かいの席に座っているアジア系…ロシア人の男、マキシモフだ。凶悪そうな顔つきをしているが話しやすいタイプの人間といったところか。年齢は俺とほぼ変わらないだろう。
「アフガニスタンでサソリか?まぁそういうのの襲撃があってな」
「ほほう、そいつはすごいな。俺は親父がソ連軍の機密操作部門とか言うおかしなやつを扱う場所に所属しててな。その縁かいつの間にかここにいたんだ」
マキシモフは興味ありげにそう言った。ソ連の機密操作部門は確かTSAができる前にソ連が形成した軍の一種だと聞いた。ソ連はどうやら異次元的地球外生命体の存在を感知していたらしい。今でもロシア軍が受け継いでいる施設もあるとは聞くが。
いつの間にかブラックホークは広場の上空に着いており、高度を下げていっている。
車輪が地面と接触すると俺はブラックホークのドアを開けた。
午後1時32分
ナイジェリア北西部のスラム街
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UH-60 ブラックホークは地上の様子が分かる高度で飛んでいた。並列してAH-6 リトルバードが4機囲むように飛んでいた。
「皆準備はいいな?水分補給を忘れるな」
TSA機動部隊リーダーのマイク アレックスは呼びかける。この暑さではいつバテてもおかしくない。地球温暖化は俺達全員の敵だ。
俺達がここにいる…その事の発端は俺がTSAの機動部隊リーダーになった時のことだ。とある報告が入った。
「先週、ナイジェリア北部にて国連のWFPによる食糧支援の実行最中に何十もの死体が発見された。検死によると餓死や病死ではなく、ほぼ同時刻に殺害されたそうだ。一気に何十の人間の殺害など…」
人間ではありえないそう言ったはずだ。中には銃を持ったまま死んだ人もいたとか。
そして現地に向かおうとしていた俺に追加報告が行われた。
「アレックス大尉。大事な報せが」
直接話しかけてきたのはアフガニスタンでお世話になったオルン大佐。オルン大佐もTSAに加入したということがその時分かった。
「まずは昇進おめでとう。早速だが話に移る」
昇進。俺はアフガニスタンでの戦いが評価され昇進していた。大佐は短くそう言うと
「後の調査によるとあれはナイジェリアだけではない。中央アフリカ共和国の西部、カメルーンでも同様の事態が確認された。始まったのは丁度2週間前くらいで中央アフリカ共和国だそうだ」
「ただの人間同士による殺し合いではないと」
「得体の知れない何かがアフリカ諸国で殺し回っているということだ。それと今から言うことは他の隊員には伝えるな」
「どういうことですか?」
「隊員の中には所帯を持つ者もいる。それと殺し回っているやつは殺害を命じるつもりだ。そのくらいの…」
大佐はここで話すのをやめる。その目には相当の怒りが込み上げられている。普通TSA機動部隊の仕事は異常存在の捕獲だと聞いたが初めての任務が殺害とは思っていなかった。
大佐は話すのを再び始める。
「カメルーンの内戦地域、そこで変死体がいくつか発見されている」
「変死体?」
「全員10代の少女の変死体だ。多くが紛争地域の孤児だったそうだ」
あとから聞いた話だが遺体は全裸で無数に傷つけられた跡があり苦しんで死んだ可能性が高いとのことだ。だが不可解なことがあると大佐は話しだした。
「変死体…それが見られたのは10代の少女のみだ。それ以外の死体は一撃で死んだということらしい」
「一撃?」
「言葉の意味そのままらしい。詳細は分からないが」
…犯人は少女意外には興味がないらしい。なんとも胸くその…
そして現在。UH-60 3機、計18人での任務が行われようとしていた。
『今回敵の勢力がどれほどまでか分からない。そこで現地での情報収集及び調査を行え』
「了解」
「アフガニスタンからこんな風になるとは思わなかったぜ」
隣でそう呟いたのはケニー ロイドだ。彼もまたアフガニスタンでの旧友だ。俺と同じように彼も空軍技術曹長に昇進している。最も二人共今は米軍としての仕事ではない。
「隊長!俺まだ秘密組織ってものが信じられません!」
そう言ったのは28歳で整った顔立ちをした金髪のハミルトンだ。TSAでは年齢に関係なく人間を雇っているらしい。厳しい合格検査を行うらしいが俺はアフガニスタンでの戦闘のおかげかスムーズに進めた。彼自体は親もTSAに勤務したおりその名残でここにいるらしい。
「あなたみたいなリーダーが我々の組織には不足していまして…是非ともこちらへと」
ホーミー秘密空軍基地で几帳面そうな男にそう言われたことを思い出す。
「気を引き締めろ。我々が精鋭から集められたということを忘れるな」
「はい!」
ハミルトンが勢いよく返事したかと思うと今度はロイドと同じ35歳で焦げ茶色の髪が特徴のクリスが俺に警告でもするかのように話しかける。彼は確かカナダ軍のJTF-2出身だと言っていたはずだ。
「隊長、人の気配がまったくない」
「ああ」
それは薄々勘づいたことだった。周りには舗装もされていない道路と縦一列に並ぶ不格好な民家、その全てに人が住んでいる雰囲気はなかった。
「あの広場で降下するぞ!」
パイロットはそう言うとヘリコプターを華麗に操作する。
「隊長はどうしてここへ?」
そう聞いたのは向かいの席に座っているアジア系…ロシア人の男、マキシモフだ。凶悪そうな顔つきをしているが話しやすいタイプの人間といったところか。年齢は俺とほぼ変わらないだろう。
「アフガニスタンでサソリか?まぁそういうのの襲撃があってな」
「ほほう、そいつはすごいな。俺は親父がソ連軍の機密操作部門とか言うおかしなやつを扱う場所に所属しててな。その縁かいつの間にかここにいたんだ」
マキシモフは興味ありげにそう言った。ソ連の機密操作部門は確かTSAができる前にソ連が形成した軍の一種だと聞いた。ソ連はどうやら異次元的地球外生命体の存在を感知していたらしい。今でもロシア軍が受け継いでいる施設もあるとは聞くが。
いつの間にかブラックホークは広場の上空に着いており、高度を下げていっている。
車輪が地面と接触すると俺はブラックホークのドアを開けた。
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