上 下
69 / 237

第68話 奪取(2)

しおりを挟む
「捕らえるんだ!逃すな!」

「銃だ!奴ら銃を持ってるぞ!」

「早く…早く警察を!」

「すぐにヘリをこっちに寄こしてくれ!奴らの仲間が奪い返しにきやがっ…クソ!民間人を安全なところへ!」

うるさい。頭が痛い。そう思いながら体を起こそうとするが手に繋がっている何かによって阻害される。

いや目の前も真っ暗だ。何も見えない。袋でも被せられているようだ。

直後に再び発砲音。いい加減銃を撃つ音が分かってきたとガイムは感じた。

「え?何?何が起きてんだ?」

俺は思わずそう口に出していた。その時頭に被せられていた袋が取られる。

「おーい、大丈夫か?」

目の前には紫髪の少女…アナリスか。が俺を呼んでいた。

「えっと…?どういう状況?」

「まぁ説明はあと…とにかく早くこっちに来…」

直後後ろから大柄な男だろうか、とにかく人がパチパチと言う何かを手に持ち、それをアナリスに当てようとしてくる。

そいつはホテルの時のようにガスマスクは着けていなかったものの黒のマスクが貼り付けられているかのように装着されている。 

アナリスはそれに気づくと魔法を…ではなく単純に蹴りを入れる。蹴りの箇所は内股。つまり…金的。

「………!っがあ!」

吹き飛ばされた男はなんとも言えない声を出して後ろに止めてあった黒のレクサスにもたれかかる。

「とにかく逃げるよ!【水中呼吸】と【水中動作】を掛けたから。ほら!」

「は?」

俺はいまいち状況が理解できなかったので車の外に出て辺りを確認してみる。

なんというかすごい。いわゆる俺の目の前には黒い車が2台、道路を封鎖するような形で停まっており、その後ろの車の列が凄まじいことになっていた。

そして後ろでは煙を上げて何かに乗り上げる黒い車、それにぶつかる黒い車、横で停まる護送車。そしていろいろなとこから出てくる人々。

一言で言うならカオスだ。

「ほら、ボーッとしてないでさ。飛び降りるよ!」

アナリスに言われ気がつく。そう言えばカノンとキルアの姿がない。代わりにと言ってはなんだが、こちらへ向かってくる多数のゴツい装備をした人々。

どうやらその矛先は俺達らしい。と思った時に奴らが持っている銃から閃光が…高速で放たれた弾丸が俺達目掛けて飛んでくる。

反射的に目をつむるがなんともない。隣を見るとアナリスが弾丸の方に手をかざしている。弾丸はさっきまでの勢いはどこへやら宙に浮いたまま静止したかと思うと、突然消える。

そして後ろからの爆音。振り向いた時に察したがどうやら後ろから銃を撃ったらしい。がそれも何故だか消えている。

そして俺はアナリスに手を掴まれる。暖かくて細い手。だが束の間、グイッと思いっきり引っ張られる。勢いが強すぎて下半身ほ宙に浮いている状態だ。

「ふ?へぇ?」

間抜けな声が出る。こんなに怪力だったかと疑う。俺の体は上半身まで宙に浮いたかと思うと橋の外にゴミを捨てるような感覚で投げられる。

「ぬわあああ!!!」

俺がこう叫んだのも無理はない。下は何メートルもあるかも分からない橋の下。イカれてるのではないだろうかアナリスのやつ。

ドボン!

耳に水が入る。橋の下には水があることは落ちる時に確認済みだ。頭から間抜けに落ちたせいで全身が痛い。そして俺は段々と体が海底に向かって沈んでいくことに気づく。

だが息苦しくもなかった。水圧も感じない。耳の中の違和感も消えている。これがアナリスの言っていた魔法の影響かと考える。そうなると体を浮上させるのに時間はいらない。
適当に上から下に水をかくと体は太陽の反射する水面へと着実に向かっていった。

俺は水面から顔だけを出した状態になる。そう言えばキルアとカノン…そしてヒカルはどうしたのだろうか。

すぐ横を見るとガチガチと歯を鳴らすキルアの姿、銀色の長い髪が絡まったのか髪をいじるカノンの姿が目に入った。

「ふ、二人共大丈夫?」

「うわぁ!冷たい!」

「私は大丈夫です!それより、アナリスさんは?」

アナリス、そうだ。と思い頭上を見上げるとアナリスがこちらへと来ていた。おそらくダイブしようとしているのだが……

「あれ?これまずくね?」

何がまずいか。その落下予想地点。アナリスは足から垂直に落ちるような形で俺の頭上へと降り注ぐ形で…

ゴ…ザブン!!

何かがぶつかる音と水の跳ねる音がほぼ同士に響いた。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

【12/29にて公開終了】愛するつもりなぞないんでしょうから

真朱
恋愛
この国の姫は公爵令息と婚約していたが、隣国との和睦のため、一転して隣国の王子の許へ嫁ぐことになった。余計ないざこざを防ぐべく、姫の元婚約者の公爵令息は王命でさくっと婚姻させられることになり、その相手として白羽の矢が立ったのは辺境伯家の二女・ディアナだった。「可憐な姫の後が、脳筋な辺境伯んとこの娘って、公爵令息かわいそうに…。これはあれでしょ?『お前を愛するつもりはない!』ってやつでしょ?」  期待も遠慮も捨ててる新妻ディアナと、好青年の仮面をひっ剥がされていく旦那様ラキルスの、『明日はどっちだ』な夫婦のお話。    ※なんちゃって異世界です。なんでもあり、ご都合主義をご容赦ください。  ※新婚夫婦のお話ですが色っぽさゼロです。Rは物騒な方です。  ※ざまあのお話ではありません。軽い読み物とご理解いただけると幸いです。 ※コミカライズにより12/29にて公開を終了させていただきます。

冷たかった夫が別人のように豹変した

京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。 ざまぁ。ゆるゆる設定

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

処理中です...