現代転生 _その日世界は変わった_

胚芽米

文字の大きさ
上 下
68 / 237

第67話 奪取

しおりを挟む
「これより作戦会議を行う」

一度言ってみたかったことを俺が言う。

「…………」

もちろんそこから先は今から考える。まずどうするか…

まず思いついたのは電話だが…さっき掛けても繋がらなかったのを見るとあまりあてにしないほうが良いのかもしれない。けれどそれ以外にやることがあるかと言われるとない。

俺はスマホを取り出し、アナリスが持っていた携帯電話を掛けようかと思う。だがふとある通知がきていることを目にし、手を止める。

それは東京都に出された爆破テロ予告のニュース。再び爆破予告が出されたとのニュースだ。

ふと、俺は考える。あの組織は警察ではない。[POLICE]の文字がないことがそう思わせている。覆面パトカーには文字は書いていないものの明らかにあの車両群は覆面パトカーではなかった。となると警察の味方ではない、つまり警察に見つかるわけにはいかないという考えになる。

虚偽の爆破テロ予告が最初に出された施設は東京国際ターミナル。そして今出したのは国立新美術館。何故2つ出したかは気になるが共通点としてはどちらも人通りがある程度あること。ニュースには爆弾の写真を犯人が送ったとされているため警察は動くしかなくなる。

そしてある考えが浮かぶ。つまり奴らは見つかるわけにはいかないのだ。警察に。

「キルア、俺の言うことできるか?」

暇そうにしていたキルアは俺の言葉に反応して振り向いた。
_________________
同時刻 東京都大田区 
品川シーサイド駅付近
TSAエージェント 田村雅俊視点
_________________
正直誤算であった。東京国際ターミナルに爆破テロを出させたのは例のホテルと遠からず近からずの場所だったからだ。しかし…

『前方に大規模な渋滞を確認。迂回したほうが良さそうです』

ヘリコプターからの連絡が入る。何故だかは知らんがこんな時に限って我々の道先に渋滞が発生していた。高速道路に乗っていたんわけではなかったのだがな。

これを原因として急遽国立新美術館に爆破テロを出させたのが5分前。我々は別のルートから目的地へと行こうとしていた。

東京都の江戸川区の一角にある地下基地の入口、地下駐車場に偽装させた地下基地へと。

「レインボーブリッジに向かえ」

「了解」

助手席に座っていた俺の声に反応して運転手は言う。

車列の構成は前からレクサス×3、護送車×3、レクサス×2で俺は一番前に乗っていた。首都高速11号線、レインボーブリッジへの入口に差し掛かり、車列は橋を渡り始めた。

ふと俺はバックミラーを覗く。それに理由はない。だがなんとなくで覗いた光景は目を見張った。ヘリコプターは前を飛んでその先の経路を調査して気づかなかったのだろう。

いわゆる橋を支える橋桁の丁度真ん中、そこに赤髪の女がいた。その視線はこちらへと向けられている。

その瞬間俺の脳内に電流が走る。止まって捕獲するべきか、もしくは…

「全車両のスピードを上げろ!早く!」

俺は気づけば声を上げていた。何故逃げる判断をしたのかは分からない。ただ運転手は2度俺を見ながらもスピードを上げる。無線越しに聞こえたのか後方の車両もスピードを上げる。

次々と周りの車両を追い越して行く。だが前に何かの影が落ちる。やがてそれは人の姿へと変わっていく。

運転手はそれに気をとられたのかハンドル操作を誤る。車体はガクンと左へ向かったかと思うと、次の瞬間には凄まじい衝撃が俺を襲いかかった。

_________________

(うわ~やってしまった~)

キルアは内心そう隠しながら自分がした行いを反省する。

目の前には自分が飛び乗ったレクサスが欄干にぶつかって止まっている。キルア自身は直後に【跳躍】という魔法によって欄干より高く飛び上がったため無事だ。

その車両に後続のレクサスがスピードを落としきれずにぶつかったことで橋に破片が散乱、橋を渡れなくすることはできた。

(結果良ければ全てよしなんだよ)

あたしは内心そう思いながらヒカルに言われた作戦を追想する。

「いいか?真ん中の車両にガイムとかアナリスとかカノンとか…まぁ乗ってるわけだ。それであいつらが乗せられてる車両はとんでもなく固いはずだ。何か壊せる手段とか中に侵入する手段はあるか?」

あたしはおそらく「ない」と言った。

「だったらまず一番前の車両を止めて。先回りの場所を予測して…予測できる?」

「大体ならね」

「…完全なアホの子ではないわけだな。前の車両を止めたらおそらく後ろの車両も止まるはずだ」

「それじゃあどうやって助けるのさ?真ん中の車にいるから強引に奪え返せばすればよくないか?」

「前にも後ろにも敵だらけだし、どうやって車の中に入る?透過魔法でもあるのか?」 

「そりゃあないけど…」

あたしはここで歯切れを悪くしたはずだ。後続の護送車やらから人が降りてくる。彼らはあたしに向かって何かを向けている。

「できるだけ大きい騒ぎを起こすように事故らせて、大きな音を出させて…勝手に出るだろうけど」

辺りにバァーンという低い音が響いたかと思うと宙に浮いていた。【滑空】の魔法を使っているためゆっくりと地上に落ちていくあたしの横を何かが過ぎる。

咄嗟に当たったらだめだと悟った時には再び低い音が響く。

「大きい音が出せたらそれで十分…だと思う」

あたしは「なんで?」とそこで聞いたはずだ。黒くてゴツそうな服を着た人は次々と黒の車から降りてきている。事故が起こした黒のレクサスの後ろには車列の他に一般車も通行止めの巻き沿いを食らって止まっている。その中に乗っている人達は何やら驚愕しているようだ。その黒い人達を見て。

そして事故が起きていない車線の端に車を止めて何事かを見ている人達も少なからず現れだした。

ヒカルはあたしの「なんで」の答えに笑顔で説明する。

「それはな…」

ヒカルは一息置く。あたしは全身の体を器用にこなしながら彼らが放つ飛来物を避けていく。

ヒカルは説明する。

「魔法はどこでも使えるし、どんな状態でも使えるんだろ?魔力を制限されてなければ」

直後いわゆるヒカルが固いと言っていた車両が丁度真ん中の部分で横に切り裂かれる。

ヒカルは続けた。

「中にいる[賢者]様を起こしてあげて。それで
解決」

あたしの足は地上に着くと同時に見覚えのおるフォルムが切り裂かれた断面から登場する。

「ありがとね~。助けてくれて」

胸くらいまでに伸ばした紫髪の少女は出てくるとあたしにそう言った。











しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話

カトウ
ファンタジー
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。 チートなんてない。 日本で生きてきたという曖昧な記憶を持って、少年は育った。 自分にも何かすごい力があるんじゃないか。そう思っていたけれど全くパッとしない。 魔法?生活魔法しか使えませんけど。 物作り?こんな田舎で何ができるんだ。 狩り?僕が狙えば獲物が逃げていくよ。 そんな僕も15歳。成人の年になる。 何もない田舎から都会に出て仕事を探そうと考えていた矢先、森で倒れている美しい女性騎士をみつける。 こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。 女性騎士に一目惚れしてしまった、少し人と変わった考えを方を持つ青年が、いろいろな人と関わりながら、ゆっくりと成長していく物語。 になればいいと思っています。 皆様の感想。いただけたら嬉しいです。 面白い。少しでも思っていただけたらお気に入りに登録をぜひお願いいたします。 よろしくお願いします! カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております。 続きが気になる!もしそう思っていただけたのならこちらでもお読みいただけます。

アレク・プランタン

かえるまる
ファンタジー
長く辛い闘病が終わった と‥‥転生となった 剣と魔法が織りなす世界へ チートも特典も何もないまま ただ前世の記憶だけを頼りに 俺は精一杯やってみる 毎日更新中!

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

聖女の妹は無能ですが、幸せなので今更代われと言われても困ります!

ユウ
ファンタジー
侯爵令嬢のサーシャは平凡な令嬢だった。 姉は国一番の美女で、才色兼備で聖女と謡われる存在。 対する妹のサーシャは姉とは月スッポンだった。 能力も乏しく、学問の才能もない無能。 侯爵家の出来損ないで社交界でも馬鹿にされ憐れみの視線を向けられ完璧を望む姉にも叱られる日々だった。 人は皆何の才能もない哀れな令嬢と言われるのだが、領地で自由に育ち優しい婚約者とも仲睦まじく過ごしていた。 姉や他人が勝手に憐れんでいるだけでサーシャは実に自由だった。 そんな折姉のジャネットがサーシャを妬むようになり、聖女を変われと言い出すのだが――。

滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~

スサノワ
ファンタジー
「ここわぁ、地獄かぁ――!?」  悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、気がつきゃ金糸のような髪の小娘に!? 「えっ、ファンタジーかと思ったぁ? 残っ念っ、ハイ坊主ハラペコSFファンタジーでしたぁ――ウケケケッケッ♪」  やかましぃやぁ。  ※小説家になろうさんにも投稿しています。投稿時は初稿そのまま。順次整えます。よろしくお願いします。

私が産まれる前に消えた父親が、隣国の皇帝陛下だなんて聞いてない

丙 あかり
ファンタジー
 ハミルトン侯爵家のアリスはレノワール王国でも有数の優秀な魔法士で、王立学園卒業後には婚約者である王太子との結婚が決まっていた。  しかし、王立学園の卒業記念パーティーの日、アリスは王太子から婚約破棄を言い渡される。  王太子が寵愛する伯爵令嬢にアリスが嫌がらせをし、さらに魔法士としては禁忌である『魔法を使用した通貨偽造』という理由で。    身に覚えがないと言うアリスの言葉に王太子は耳を貸さず、国外追放を言い渡す。    翌日、アリスは実父を頼って隣国・グランディエ帝国へ出発。  パーティーでアリスを助けてくれた帝国の貴族・エリックも何故か同行することに。  祖父のハミルトン侯爵は爵位を返上して王都から姿を消した。  アリスを追い出せたと喜ぶ王太子だが、激怒した国王に吹っ飛ばされた。  「この馬鹿息子が!お前は帝国を敵にまわすつもりか!!」    一方、帝国で仰々しく迎えられて困惑するアリスは告げられるのだった。   「さあ、貴女のお父君ーー皇帝陛下のもとへお連れ致しますよ、お姫様」と。 ****** 不定期更新になります。  

本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。 しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。 探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。 だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。 ――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。 Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。 Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。 それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。 失意の内に意識を失った一馬の脳裏に ――チュートリアルが完了しました。 と、いうシステムメッセージが流れる。 それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!

処理中です...