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第59話 ヒカルの過去(2)
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「待って。え?」
「違うのか?」
少年は平然と返してきた。違うわけではない何故当てれるんだ?
「…当たってるよ。なんで分かったかって意味」
「そんなのは…なんとなくだ。ただ駅のホームにいて電車に乗らないのはおかしいだろ?それでなんとなく思いついたのがそれしかないだけだ」
「それは…そうだな…ってなるのか?」
何故だか強く言い返せなかった。
「…悪いな。用はないんだ。じゃあな」
そう言うとその少年も電車を乗る気がなかったのかホームを降りて行った。不思議な奴で仕事がバレた以上は口封じという手もあるにはあったが俺にその考えは浮かばなかった。
そして日暮れ時。俺は駅のホームから降りて赤羽駅のバス停まで行こうとした時に、俺は昼間に話しかけた少年を見つけた。声をかけるか迷ったが結局
「おーい。君さっきの人でしょ?」
この言葉に少年も気づいたようで歩きながらやってくる。
「あぁ、まぁそうだけど何か用?」
さっきはそっちから話しかけてきてその言い方はないだろうと思いながらも
「夕飯食べにいかない?俺もなんだか君と似たような感じがして」
似たような感じの意味は俺にも分からない。ただオーラみたいなのを感じた。
「…いいよ」
少年は短く答えた。その後は俺が某ハンバーガー店(もちろん俺の手持ち)でチーズバーガーを2つ。少年のもあわせて4つ買ってきた。ポテトもつけて。
少年とは高架下で食べることにした。俺がチーズバーガーを手渡すと少年は丁寧に受け取った。
「…俺は大須裕太。お前は?」
「俺か?武本輝。ヒカルでいい」
「あっそう…」
会話はあまり長続きはしないものだ。ここで途切れた。しばらくは静寂が続く。その静寂を破ったのは俺がチーズバーガーを1つ食べて2つ目に取り掛かろうとした時、ふと聞いてみたいことがあった。
「なんで俺に話しかけてきたんだ?話す理由もないのに」
「…知りたかった。俺と同じ境遇の人がどんな感じに暮らしているか。ネットにはゴロゴロ転がっているけど実際に見て聞いたほうがいいから」
ユウタは心置きなくそう言った。知りたかった、それが理由らしいが彼とは全然話していなかった気がする。彼が知りたかったことは全て満たせたのだろうか?見る限りそこまで人と話すのは得意じゃなさそうだ。衝動的に話しかけたのかもしれない。
それにユウタは気になることを言った。俺はそれを聞くことにした。
「同じ境遇ってどういう意味?」
「お前は密売人…俺は闇サイトの運営とかクラッキングをしてる。つまりどっちも犯罪者」
ユウタがそう言い終わった時、電車が真上を通り過ぎる。
「犯罪者か…そうなるしかなかったんだよ俺は」
「俺もそう。まともに教育を受けてればこんなふうにはならなかった」
ユウタはそう言い終わるとどこか悲しそうな表情をした。そして俺は自分の身のうちを考える。
…そうだ。俺はそうするしかなかった。親は社会不適合者だった。ヤクザとかと繋がりがあった。そして何故だか俺は産まれた。本来は虐待へとここから繋がるわけだが、何故だか俺は助かった。
親戚に引き取られ、そこで自分の親が死んでしまったことを告げられた。交通事故だとは言ってくれたがその詳細は教えてくれなかった。
その親戚、おじさんは俺に読み書きなどを教えてくれた。本も買ってくれた。けれど学校には行かせてもらえなかった。
おじさんは悪いことをしていると。そしてヒカル君にも手伝いをしてもらいたいとおじさんは言っていた。おじさんは麻薬の密売人だった。
長崎県内にある無数の島を目印に、タイ、ミャンマー、コロンビアのアジア各地から取り寄せた麻薬を日本各地で売りさばいた。
おじさんはできれば君を自由にさせたかった。けれど俺達は生まれた時からこんな運命なんだと嘆いていた。こうするしか生きていけないんだ。
俺だってなんとなく分かった。悪いことをしていると。おじさんは良い人だが善い人ではないということも分かっていた。
それから俺はおじさんの手伝いをきっちりこなすようになっていた。
電車が通り過ぎる音を聞いて我に帰る。俺はいつの間にかチーズバーガーを食べ切っていたし、ユウタも同じく食べ切ってしまっていた。
「…奢りは助かった。じゃあな」
ユウタはそう言うとどこかへ行こうとする。彼は十分だとでも言いたそうな表情だがその目の雲行きは随分と暗い。
「待った」
俺は衝動的にそう話しかけた。ユウタも振り返る。
「何?」
「あぁ…その、君はなんで犯罪をしているの?」
ユウタは振り返ったまま何も答えない。言葉を選んでいるのかもしれない。そして
「…産まれた時には両親がいなかった。父方の祖父母が俺を育ててくれたらしいが、3歳くらいになる頃には死んでしまってた。遺産相続とか不動産関連とかのおかげで孤児院に12歳くらいまでいた。けど環境が劣悪だった。まともな教育も受けさせてくれなかった奴がこうなるのは当たり前のことかもな」
…ユウタと俺の境遇は確かに似ている。彼は今までの過去を俺とユウタ自身で重ね合わせたのかもしれない。
10歳くらいの頃。本で読んだ。アフリカ各地では学校に行けない子供は何人もいると。俺はそれを読んで自分は同じだと思った。
けど違った。教育を受けない人間は全て犯罪者になるわけじゃない。けど俺達はなってしまった。一度そう決めたら終わりの人生を歩みだしていることに気づいた。
「これから…どうする?」
俺はそう言った。
「どうする???」
「あ~。いいよ。自分の話だこれは。俺は麻薬の密売人をやめるよ」
「…なんで?」
「やっぱり駄目じゃない?それに俺と辛い境遇だからと言って犯罪をする理由にはならないからね」
「…………」
ユウタは何も言わずに立ち去って行った。
「違うのか?」
少年は平然と返してきた。違うわけではない何故当てれるんだ?
「…当たってるよ。なんで分かったかって意味」
「そんなのは…なんとなくだ。ただ駅のホームにいて電車に乗らないのはおかしいだろ?それでなんとなく思いついたのがそれしかないだけだ」
「それは…そうだな…ってなるのか?」
何故だか強く言い返せなかった。
「…悪いな。用はないんだ。じゃあな」
そう言うとその少年も電車を乗る気がなかったのかホームを降りて行った。不思議な奴で仕事がバレた以上は口封じという手もあるにはあったが俺にその考えは浮かばなかった。
そして日暮れ時。俺は駅のホームから降りて赤羽駅のバス停まで行こうとした時に、俺は昼間に話しかけた少年を見つけた。声をかけるか迷ったが結局
「おーい。君さっきの人でしょ?」
この言葉に少年も気づいたようで歩きながらやってくる。
「あぁ、まぁそうだけど何か用?」
さっきはそっちから話しかけてきてその言い方はないだろうと思いながらも
「夕飯食べにいかない?俺もなんだか君と似たような感じがして」
似たような感じの意味は俺にも分からない。ただオーラみたいなのを感じた。
「…いいよ」
少年は短く答えた。その後は俺が某ハンバーガー店(もちろん俺の手持ち)でチーズバーガーを2つ。少年のもあわせて4つ買ってきた。ポテトもつけて。
少年とは高架下で食べることにした。俺がチーズバーガーを手渡すと少年は丁寧に受け取った。
「…俺は大須裕太。お前は?」
「俺か?武本輝。ヒカルでいい」
「あっそう…」
会話はあまり長続きはしないものだ。ここで途切れた。しばらくは静寂が続く。その静寂を破ったのは俺がチーズバーガーを1つ食べて2つ目に取り掛かろうとした時、ふと聞いてみたいことがあった。
「なんで俺に話しかけてきたんだ?話す理由もないのに」
「…知りたかった。俺と同じ境遇の人がどんな感じに暮らしているか。ネットにはゴロゴロ転がっているけど実際に見て聞いたほうがいいから」
ユウタは心置きなくそう言った。知りたかった、それが理由らしいが彼とは全然話していなかった気がする。彼が知りたかったことは全て満たせたのだろうか?見る限りそこまで人と話すのは得意じゃなさそうだ。衝動的に話しかけたのかもしれない。
それにユウタは気になることを言った。俺はそれを聞くことにした。
「同じ境遇ってどういう意味?」
「お前は密売人…俺は闇サイトの運営とかクラッキングをしてる。つまりどっちも犯罪者」
ユウタがそう言い終わった時、電車が真上を通り過ぎる。
「犯罪者か…そうなるしかなかったんだよ俺は」
「俺もそう。まともに教育を受けてればこんなふうにはならなかった」
ユウタはそう言い終わるとどこか悲しそうな表情をした。そして俺は自分の身のうちを考える。
…そうだ。俺はそうするしかなかった。親は社会不適合者だった。ヤクザとかと繋がりがあった。そして何故だか俺は産まれた。本来は虐待へとここから繋がるわけだが、何故だか俺は助かった。
親戚に引き取られ、そこで自分の親が死んでしまったことを告げられた。交通事故だとは言ってくれたがその詳細は教えてくれなかった。
その親戚、おじさんは俺に読み書きなどを教えてくれた。本も買ってくれた。けれど学校には行かせてもらえなかった。
おじさんは悪いことをしていると。そしてヒカル君にも手伝いをしてもらいたいとおじさんは言っていた。おじさんは麻薬の密売人だった。
長崎県内にある無数の島を目印に、タイ、ミャンマー、コロンビアのアジア各地から取り寄せた麻薬を日本各地で売りさばいた。
おじさんはできれば君を自由にさせたかった。けれど俺達は生まれた時からこんな運命なんだと嘆いていた。こうするしか生きていけないんだ。
俺だってなんとなく分かった。悪いことをしていると。おじさんは良い人だが善い人ではないということも分かっていた。
それから俺はおじさんの手伝いをきっちりこなすようになっていた。
電車が通り過ぎる音を聞いて我に帰る。俺はいつの間にかチーズバーガーを食べ切っていたし、ユウタも同じく食べ切ってしまっていた。
「…奢りは助かった。じゃあな」
ユウタはそう言うとどこかへ行こうとする。彼は十分だとでも言いたそうな表情だがその目の雲行きは随分と暗い。
「待った」
俺は衝動的にそう話しかけた。ユウタも振り返る。
「何?」
「あぁ…その、君はなんで犯罪をしているの?」
ユウタは振り返ったまま何も答えない。言葉を選んでいるのかもしれない。そして
「…産まれた時には両親がいなかった。父方の祖父母が俺を育ててくれたらしいが、3歳くらいになる頃には死んでしまってた。遺産相続とか不動産関連とかのおかげで孤児院に12歳くらいまでいた。けど環境が劣悪だった。まともな教育も受けさせてくれなかった奴がこうなるのは当たり前のことかもな」
…ユウタと俺の境遇は確かに似ている。彼は今までの過去を俺とユウタ自身で重ね合わせたのかもしれない。
10歳くらいの頃。本で読んだ。アフリカ各地では学校に行けない子供は何人もいると。俺はそれを読んで自分は同じだと思った。
けど違った。教育を受けない人間は全て犯罪者になるわけじゃない。けど俺達はなってしまった。一度そう決めたら終わりの人生を歩みだしていることに気づいた。
「これから…どうする?」
俺はそう言った。
「どうする???」
「あ~。いいよ。自分の話だこれは。俺は麻薬の密売人をやめるよ」
「…なんで?」
「やっぱり駄目じゃない?それに俺と辛い境遇だからと言って犯罪をする理由にはならないからね」
「…………」
ユウタは何も言わずに立ち去って行った。
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