現代転生 _その日世界は変わった_

胚芽米

文字の大きさ
上 下
59 / 237

第58話 ヒカルの過去

しおりを挟む
群馬県の山奥。人里離れたこの地域で少年少女は生活していた。少女は少年を愛しているように見えた。いや愛している。
だが少年は…

「傍にいたいか…いいね。俺も言われてみたいよ切実に。アオイはユウタとこれからどんな関係になりたいの?」

「え?急にそんなこと言われてもなぁ…」

アオイは頬をかきながら顔を潜める。その姿もまた愛嬌らしさが溢れている。まだ聞いてもいないが口の中が甘酸っぱくなる。

「私は…ユウタの傍にいる。ずっと、それだけでいい。でもできればその…恋人?みたいなこともしてみたい」

「リアz…恋人になりたいの?」

思わずリア充と言いそうになってしまった。爆発してもらったら困る。

「え?まぁ、そうだと思う。自分でもこの気持ちは分からない」

ますます甘酸っぱい気持ちになる。ラブコメかこれは?〈好き〉という気持ちが表現できないヒロインみたいになっている。

「そうか。まぁ俺はそんなことを感じた日はないからね。俺寝るよ。アオイも寝ないと肌に悪いよ」

「もう、そんな縁起の悪いこと言わないでよ~」

そう言ったアオイの顔はどこか楽しそうだった。ユウタはめんどくさがりだがその内心はどこか分からないところがある。そう思った時があったからだ。

俺は布団を被りながらユウタとアオイの関係がどうなるかを予想する。結論はその関係が発展するのは正直難しい。気持ちどうこうの話ではないからだ。

ユウタは見た感じアセクシュアル。無性愛者だ。恋をしない人間。人間不信が生み出した結果と言えるだろう。

山奥。そもそもなんでこんな場所に彼らは暮らしているのかを説明しなければならない。事実上戸籍がない彼らの説明を…
_________________
2019年1月31日 東京都北区
赤羽駅 
_________________
世間的には中学2年生と言われる年齢の頃、俺は義務教育の鎖から解き放たれていた。

いつも通りのことをするために小岩駅へと俺は来ていた。顧客を待っていたと思う。
その顧客のために今よりフードを深く被り、マスクをつけ、声を出さずにスマホで文字を打つ交渉をしていた。

俺はスマホを触っていた。暇つぶしの道具として使っていたはずだ。イヤホンをつけてモバイルWiFiを利用してアニメを見ていた。

まぁその時に肩をトンと叩かれた。横を見ると俺と同じくらいの少年がそこに立っていた。明らかに顧客ではなかった。

だが仕事はいつも通りこなそうとした。俺はスマホで今見ていたのを消すと、文字を入力する。

[君がそれ?]

それと言うのは遠回しに顧客という意味を表している。それの意味が分からなければ答えるのには躊躇うはずだ。だがその少年は予想外の答えをだした。

「あぁ、なるほど」

なるほど?何がなるほどなんだ分からない。いやそもそも肩を叩くということも疑問に思っていた。相手は少年だという点も。

[何が?]

俺はそう書くと相手からの返答を待った。

「似ているなって思った。毎週決まった日にはここにいるだろう?」

これは想定外。東京での仕事を見られたのかな?先週は顧客が俺のもとに来ていたのでまずいと思った正直。けど何があったかまでは分からないはずだと思った。

「何用?急に話しかけてくるとか…要件を言ってよ」

俺は思わず話しかけていた。帽子を被り、紺色のジーンズと黒のレザージャケットを着ている少年は笑わずに答える。

「要件か。そんなものはない別に」

「へ?」

「ただ話してみたかった。めんどくさそうだなって思ったけど」

「何?」

「お前もあれだろ?社会不適合者って奴だろ?だから平日でもここにいんだろ?」

「は、はぁ(困惑)」

まずその少年には主体性がなかった。話したいから話したって何だ?用がないなら話しかけるなと心の中で毒づいていた時だ。

「平日の駅でしかも駅の端にいるか。それで要件を聞くってね…」

独り言なのかそれとも俺に話しているのか分からない。けどこの感じは聞いたことがある。俺が犯人で少年が探偵の役柄、そして俺は今から犯行を華麗に明かされる。そんな風に感じた。やはりというか少年は俺の核心を突いてきた。

「麻薬の密売人か?」

同じ体型で同じ身長の少年は俺が顧客を待っている理由を当ててきやがった。









しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。 Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。 最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!? ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。 はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切) 1話約1000文字です 01章――バトル無し・下準備回 02章――冒険の始まり・死に続ける 03章――『超越者』・騎士の国へ 04章――森の守護獣・イベント参加 05章――ダンジョン・未知との遭遇 06章──仙人の街・帝国の進撃 07章──強さを求めて・錬金の王 08章──魔族の侵略・魔王との邂逅 09章──匠天の証明・眠る機械龍 10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女 11章──アンヤク・封じられし人形 12章──獣人の都・蔓延る闘争 13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者 14章──天の集い・北の果て 15章──刀の王様・眠れる妖精 16章──腕輪祭り・悪鬼騒動 17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕 18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王 19章──剋服の試練・ギルド問題 20章──五州騒動・迷宮イベント 21章──VS戦乙女・就職活動 22章──休日開放・家族冒険 23章──千■万■・■■の主(予定) タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。

目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し

gari
ファンタジー
 突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。  知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。  正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。  過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。  一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。  父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!  地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……  ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!  どうする? どうなる? 召喚勇者。  ※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。  

スキル【レベル転生】でダンジョン無双

世界るい
ファンタジー
 六年前、突如、異世界から魔王が来訪した。「暇だから我を愉しませろ」そう言って、地球上のありとあらゆる場所にダンジョンを作り、モンスターを放った。  そんな世界で十八歳となった獅堂辰巳は、ダンジョンに潜る者、ダンジョンモーラーとしての第一歩を踏み出し、ステータスを獲得する。だが、ステータスは最低値だし、パーティーを組むと経験値を獲得できない。スキルは【レベル転生】という特殊スキルが一つあるだけで、それもレベル100にならないと使えないときた。  そんな絶望的な状況下で、最弱のソロモーラーとしてダンジョンに挑み、天才的な戦闘センスを磨き続けるも、攻略は遅々として進まない。それでも諦めずチュートリアルダンジョンを攻略していたある日、一人の女性と出逢う。その運命的な出逢いによって辰巳のモーラー人生は一変していくのだが……それは本編で。 小説家になろう、カクヨムにて同時掲載 カクヨム ジャンル別ランキング【日間2位】【週間2位】 なろう ジャンル別ランキング【日間6位】【週間7位】

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監
ファンタジー
 女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。  シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。  シルヴィの将来や如何に?  毎週木曜日午後10時に投稿予定です。

私が産まれる前に消えた父親が、隣国の皇帝陛下だなんて聞いてない

丙 あかり
ファンタジー
 ハミルトン侯爵家のアリスはレノワール王国でも有数の優秀な魔法士で、王立学園卒業後には婚約者である王太子との結婚が決まっていた。  しかし、王立学園の卒業記念パーティーの日、アリスは王太子から婚約破棄を言い渡される。  王太子が寵愛する伯爵令嬢にアリスが嫌がらせをし、さらに魔法士としては禁忌である『魔法を使用した通貨偽造』という理由で。    身に覚えがないと言うアリスの言葉に王太子は耳を貸さず、国外追放を言い渡す。    翌日、アリスは実父を頼って隣国・グランディエ帝国へ出発。  パーティーでアリスを助けてくれた帝国の貴族・エリックも何故か同行することに。  祖父のハミルトン侯爵は爵位を返上して王都から姿を消した。  アリスを追い出せたと喜ぶ王太子だが、激怒した国王に吹っ飛ばされた。  「この馬鹿息子が!お前は帝国を敵にまわすつもりか!!」    一方、帝国で仰々しく迎えられて困惑するアリスは告げられるのだった。   「さあ、貴女のお父君ーー皇帝陛下のもとへお連れ致しますよ、お姫様」と。 ****** 不定期更新になります。  

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

処理中です...