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第58話 ヒカルの過去
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群馬県の山奥。人里離れたこの地域で少年少女は生活していた。少女は少年を愛しているように見えた。いや愛している。
だが少年は…
「傍にいたいか…いいね。俺も言われてみたいよ切実に。アオイはユウタとこれからどんな関係になりたいの?」
「え?急にそんなこと言われてもなぁ…」
アオイは頬をかきながら顔を潜める。その姿もまた愛嬌らしさが溢れている。まだ聞いてもいないが口の中が甘酸っぱくなる。
「私は…ユウタの傍にいる。ずっと、それだけでいい。でもできればその…恋人?みたいなこともしてみたい」
「リアz…恋人になりたいの?」
思わずリア充と言いそうになってしまった。爆発してもらったら困る。
「え?まぁ、そうだと思う。自分でもこの気持ちは分からない」
ますます甘酸っぱい気持ちになる。ラブコメかこれは?〈好き〉という気持ちが表現できないヒロインみたいになっている。
「そうか。まぁ俺はそんなことを感じた日はないからね。俺寝るよ。アオイも寝ないと肌に悪いよ」
「もう、そんな縁起の悪いこと言わないでよ~」
そう言ったアオイの顔はどこか楽しそうだった。ユウタはめんどくさがりだがその内心はどこか分からないところがある。そう思った時があったからだ。
俺は布団を被りながらユウタとアオイの関係がどうなるかを予想する。結論はその関係が発展するのは正直難しい。気持ちどうこうの話ではないからだ。
ユウタは見た感じアセクシュアル。無性愛者だ。恋をしない人間。人間不信が生み出した結果と言えるだろう。
山奥。そもそもなんでこんな場所に彼らは暮らしているのかを説明しなければならない。事実上戸籍がない彼らの説明を…
_________________
2019年1月31日 東京都北区
赤羽駅
_________________
世間的には中学2年生と言われる年齢の頃、俺は義務教育の鎖から解き放たれていた。
いつも通りのことをするために小岩駅へと俺は来ていた。顧客を待っていたと思う。
その顧客のために今よりフードを深く被り、マスクをつけ、声を出さずにスマホで文字を打つ交渉をしていた。
俺はスマホを触っていた。暇つぶしの道具として使っていたはずだ。イヤホンをつけてモバイルWiFiを利用してアニメを見ていた。
まぁその時に肩をトンと叩かれた。横を見ると俺と同じくらいの少年がそこに立っていた。明らかに顧客ではなかった。
だが仕事はいつも通りこなそうとした。俺はスマホで今見ていたのを消すと、文字を入力する。
[君がそれ?]
それと言うのは遠回しに顧客という意味を表している。それの意味が分からなければ答えるのには躊躇うはずだ。だがその少年は予想外の答えをだした。
「あぁ、なるほど」
なるほど?何がなるほどなんだ分からない。いやそもそも肩を叩くということも疑問に思っていた。相手は少年だという点も。
[何が?]
俺はそう書くと相手からの返答を待った。
「似ているなって思った。毎週決まった日にはここにいるだろう?」
これは想定外。東京での仕事を見られたのかな?先週は顧客が俺のもとに来ていたのでまずいと思った正直。けど何があったかまでは分からないはずだと思った。
「何用?急に話しかけてくるとか…要件を言ってよ」
俺は思わず話しかけていた。帽子を被り、紺色のジーンズと黒のレザージャケットを着ている少年は笑わずに答える。
「要件か。そんなものはない別に」
「へ?」
「ただ話してみたかった。めんどくさそうだなって思ったけど」
「何?」
「お前もあれだろ?社会不適合者って奴だろ?だから平日でもここにいんだろ?」
「は、はぁ(困惑)」
まずその少年には主体性がなかった。話したいから話したって何だ?用がないなら話しかけるなと心の中で毒づいていた時だ。
「平日の駅でしかも駅の端にいるか。それで要件を聞くってね…」
独り言なのかそれとも俺に話しているのか分からない。けどこの感じは聞いたことがある。俺が犯人で少年が探偵の役柄、そして俺は今から犯行を華麗に明かされる。そんな風に感じた。やはりというか少年は俺の核心を突いてきた。
「麻薬の密売人か?」
同じ体型で同じ身長の少年は俺が顧客を待っている理由を当ててきやがった。
だが少年は…
「傍にいたいか…いいね。俺も言われてみたいよ切実に。アオイはユウタとこれからどんな関係になりたいの?」
「え?急にそんなこと言われてもなぁ…」
アオイは頬をかきながら顔を潜める。その姿もまた愛嬌らしさが溢れている。まだ聞いてもいないが口の中が甘酸っぱくなる。
「私は…ユウタの傍にいる。ずっと、それだけでいい。でもできればその…恋人?みたいなこともしてみたい」
「リアz…恋人になりたいの?」
思わずリア充と言いそうになってしまった。爆発してもらったら困る。
「え?まぁ、そうだと思う。自分でもこの気持ちは分からない」
ますます甘酸っぱい気持ちになる。ラブコメかこれは?〈好き〉という気持ちが表現できないヒロインみたいになっている。
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「もう、そんな縁起の悪いこと言わないでよ~」
そう言ったアオイの顔はどこか楽しそうだった。ユウタはめんどくさがりだがその内心はどこか分からないところがある。そう思った時があったからだ。
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ユウタは見た感じアセクシュアル。無性愛者だ。恋をしない人間。人間不信が生み出した結果と言えるだろう。
山奥。そもそもなんでこんな場所に彼らは暮らしているのかを説明しなければならない。事実上戸籍がない彼らの説明を…
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世間的には中学2年生と言われる年齢の頃、俺は義務教育の鎖から解き放たれていた。
いつも通りのことをするために小岩駅へと俺は来ていた。顧客を待っていたと思う。
その顧客のために今よりフードを深く被り、マスクをつけ、声を出さずにスマホで文字を打つ交渉をしていた。
俺はスマホを触っていた。暇つぶしの道具として使っていたはずだ。イヤホンをつけてモバイルWiFiを利用してアニメを見ていた。
まぁその時に肩をトンと叩かれた。横を見ると俺と同じくらいの少年がそこに立っていた。明らかに顧客ではなかった。
だが仕事はいつも通りこなそうとした。俺はスマホで今見ていたのを消すと、文字を入力する。
[君がそれ?]
それと言うのは遠回しに顧客という意味を表している。それの意味が分からなければ答えるのには躊躇うはずだ。だがその少年は予想外の答えをだした。
「あぁ、なるほど」
なるほど?何がなるほどなんだ分からない。いやそもそも肩を叩くということも疑問に思っていた。相手は少年だという点も。
[何が?]
俺はそう書くと相手からの返答を待った。
「似ているなって思った。毎週決まった日にはここにいるだろう?」
これは想定外。東京での仕事を見られたのかな?先週は顧客が俺のもとに来ていたのでまずいと思った正直。けど何があったかまでは分からないはずだと思った。
「何用?急に話しかけてくるとか…要件を言ってよ」
俺は思わず話しかけていた。帽子を被り、紺色のジーンズと黒のレザージャケットを着ている少年は笑わずに答える。
「要件か。そんなものはない別に」
「へ?」
「ただ話してみたかった。めんどくさそうだなって思ったけど」
「何?」
「お前もあれだろ?社会不適合者って奴だろ?だから平日でもここにいんだろ?」
「は、はぁ(困惑)」
まずその少年には主体性がなかった。話したいから話したって何だ?用がないなら話しかけるなと心の中で毒づいていた時だ。
「平日の駅でしかも駅の端にいるか。それで要件を聞くってね…」
独り言なのかそれとも俺に話しているのか分からない。けどこの感じは聞いたことがある。俺が犯人で少年が探偵の役柄、そして俺は今から犯行を華麗に明かされる。そんな風に感じた。やはりというか少年は俺の核心を突いてきた。
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