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第54話 世界は動き出す
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中華人民共和国 楡林秘密空軍基地から西に100km地点 TU-244機内
_________________
『イギリスで異次元的地球外生命体による爆発事件が発生した。他のエージェントにも同様に伝えるように』
その報告は手に持っているスマートフォンでの電話によって知らされた。相手は直属の上司であるジョニー ウォーカーだ。ウォーカーはフォードの返事を待たずに
『もはや奴らの存在を隠すことはできなくなってきている。世界標準時の午後9時にTSA理事会による緊急会議が開かれる。CIAが長年求めていた謎の組織の存在を世間にあきらかにするかどうかだ』
「イギリスとドイツ、我々はどちらへ?」
『イギリスとドイツの情報収集は既に現地の人間を向かわせているが君達は予定通り
[人間]を探せ』
「了解です」
フォードはいつからこの世界がアメコミの世界となったのかを考えながら電話を切る。
謎の組織…TSA。どこの政府にも属さないこの秘密組織は当然のようにCIAがどこからか嗅ぎつけ、長年調査をされていた。そのたびに我々は狡猾に立ち回りその姿を消していたと聞いている。最も私は元々調査する人間だったのだが、それを全て無駄にするかのような事態が起きた。
「アメリカ、ドイツ、イギリス、日本。それと…」
それと…韓国の釜山からアメリカ、カリフォルニア州ロサンゼルス着の旅客機の墜落。
この事件はニューヨーク事件と同時期に起きていたためかなり扱いがひどかったはずだ。
太平洋に墜落していた旅客機の乗客132人は全て海の藻屑と化した。細かいことを言い出せばキリがない。
異常はどこから発生した?旅客機の墜落からか?アフガニスタンの米軍基地からか?ロシアの地下からか?……60年前、いや600年から始まったかもしれない。考えだせばキリがない。
フォードは早く答えを見つけたかった。ドイツにいたとされる[人間]、正確にはその痕跡が現地警察によって発見された。
銀色に輝く重厚そうな鎧が。
_________________
アメリカ合衆国 ワシントンDC
ホワイトハウス前
_________________
「化け物を殺せ!化け物を殺せ!」
ホワイトハウス前のイーストストリートではデモが行われていた。
多くの人々が〈Monster〉や〈Titan〉や〈Dragon〉と描かれたポスターを手にしている。中には〈Kill〉や〈USA〉なども存在している。
「ニューヨークの仇だ!ニューヨークの仇だ!」
人々は息を合わせてそう言っている。そこにニュースキャスターは突入する。
「何故デモを行っているのですか?」
ニュースキャスターが聞いたのは30代くらいの女性。白い帽子を被っているのが特徴だ。女性は表情を変えずに答える。
「ニューヨークの惨状を見ました。けれど政府は何も発表しない。私の街がもしああなったらと思うと怖いからです。政府からは私達を納得させる情報を発表してほしいです」
ニュースキャスターは「分かりました」と答えると
「このようなデモはシカゴやロサンゼルス、ボストンなどでも行われているようです」
とカメラの前で言っている。後ろではデモ隊の行進がずらりと続いていた。それを止めるかのように機動隊が前に並んでいるのをカメラは撮っていた。
_________________
日本 東京都千代田区
総理大臣官邸
_________________
『政府はニューヨークに自衛隊を派遣することを決定し…』
ニュースでは先程記者会見で述べたことを繰り返す女性リポーターの姿があった。
日本国内閣総理大臣の新竹吉郎は総理大臣官邸の椅子に座りながらテレビを見ていた。整った顔立ちと会社員が着るような白シャツと黒ズボンを着た年老いた男はただのおじさんにも見える。代々受け継がれてきた知恵の良さと口周りは随分達者になっている。
日米の対談をするために広島に行ったのが
一昨日。だが対談するやいなやアメリカ合衆国副大統領はニューヨークのことで頭がいっぱいだった。副大統領は対談を終えたあとすぐに本国へとエアフォースツーで帰還したのを覚えている。
正直ニューヨークの件などは私の知るところではない。今は政治に興味を持たぬ者が増えてきたこの社会で再びこの地位につくことだけを考えよう。
テレビでは緊急速報と称してイギリスのアバディーンで起きている事件が流された。
_________________
イギリス スコットランド
アバディーン
_________________
「あはは、見て見て燃えてるわ」
リヴリーは悪魔のように笑う。ビルの上にいる彼らの眼下には爆発でビルや車両が吹き飛んだ街の姿がある。
「火力なら貴様等の誰よりも強いからな」
「ほんとうに?ザッヴァーよりも?」
「あいつは例外だ」
遠くからサイレンの音、人々の叫び声、パチパチと燃え広がる炎の音がする。ニューヨークの惨状を思わせるような地獄の光景だった。
「もう一発いっちゃって、たまんないのよ…!」
「けっ、他人事だな」
エルターゼはそう言うと手に炎を灯す。そしてその炎は長身のリヴリーをいとも簡単に飲み込みそうな程成長する。
「がーはっはっはっはぁ!」
エルターゼは決まり文句のようにそう言うと炎を前に向けて放つ。
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『イギリスで異次元的地球外生命体による爆発事件が発生した。他のエージェントにも同様に伝えるように』
その報告は手に持っているスマートフォンでの電話によって知らされた。相手は直属の上司であるジョニー ウォーカーだ。ウォーカーはフォードの返事を待たずに
『もはや奴らの存在を隠すことはできなくなってきている。世界標準時の午後9時にTSA理事会による緊急会議が開かれる。CIAが長年求めていた謎の組織の存在を世間にあきらかにするかどうかだ』
「イギリスとドイツ、我々はどちらへ?」
『イギリスとドイツの情報収集は既に現地の人間を向かわせているが君達は予定通り
[人間]を探せ』
「了解です」
フォードはいつからこの世界がアメコミの世界となったのかを考えながら電話を切る。
謎の組織…TSA。どこの政府にも属さないこの秘密組織は当然のようにCIAがどこからか嗅ぎつけ、長年調査をされていた。そのたびに我々は狡猾に立ち回りその姿を消していたと聞いている。最も私は元々調査する人間だったのだが、それを全て無駄にするかのような事態が起きた。
「アメリカ、ドイツ、イギリス、日本。それと…」
それと…韓国の釜山からアメリカ、カリフォルニア州ロサンゼルス着の旅客機の墜落。
この事件はニューヨーク事件と同時期に起きていたためかなり扱いがひどかったはずだ。
太平洋に墜落していた旅客機の乗客132人は全て海の藻屑と化した。細かいことを言い出せばキリがない。
異常はどこから発生した?旅客機の墜落からか?アフガニスタンの米軍基地からか?ロシアの地下からか?……60年前、いや600年から始まったかもしれない。考えだせばキリがない。
フォードは早く答えを見つけたかった。ドイツにいたとされる[人間]、正確にはその痕跡が現地警察によって発見された。
銀色に輝く重厚そうな鎧が。
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アメリカ合衆国 ワシントンDC
ホワイトハウス前
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「化け物を殺せ!化け物を殺せ!」
ホワイトハウス前のイーストストリートではデモが行われていた。
多くの人々が〈Monster〉や〈Titan〉や〈Dragon〉と描かれたポスターを手にしている。中には〈Kill〉や〈USA〉なども存在している。
「ニューヨークの仇だ!ニューヨークの仇だ!」
人々は息を合わせてそう言っている。そこにニュースキャスターは突入する。
「何故デモを行っているのですか?」
ニュースキャスターが聞いたのは30代くらいの女性。白い帽子を被っているのが特徴だ。女性は表情を変えずに答える。
「ニューヨークの惨状を見ました。けれど政府は何も発表しない。私の街がもしああなったらと思うと怖いからです。政府からは私達を納得させる情報を発表してほしいです」
ニュースキャスターは「分かりました」と答えると
「このようなデモはシカゴやロサンゼルス、ボストンなどでも行われているようです」
とカメラの前で言っている。後ろではデモ隊の行進がずらりと続いていた。それを止めるかのように機動隊が前に並んでいるのをカメラは撮っていた。
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日本 東京都千代田区
総理大臣官邸
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『政府はニューヨークに自衛隊を派遣することを決定し…』
ニュースでは先程記者会見で述べたことを繰り返す女性リポーターの姿があった。
日本国内閣総理大臣の新竹吉郎は総理大臣官邸の椅子に座りながらテレビを見ていた。整った顔立ちと会社員が着るような白シャツと黒ズボンを着た年老いた男はただのおじさんにも見える。代々受け継がれてきた知恵の良さと口周りは随分達者になっている。
日米の対談をするために広島に行ったのが
一昨日。だが対談するやいなやアメリカ合衆国副大統領はニューヨークのことで頭がいっぱいだった。副大統領は対談を終えたあとすぐに本国へとエアフォースツーで帰還したのを覚えている。
正直ニューヨークの件などは私の知るところではない。今は政治に興味を持たぬ者が増えてきたこの社会で再びこの地位につくことだけを考えよう。
テレビでは緊急速報と称してイギリスのアバディーンで起きている事件が流された。
_________________
イギリス スコットランド
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「あはは、見て見て燃えてるわ」
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「あいつは例外だ」
遠くからサイレンの音、人々の叫び声、パチパチと燃え広がる炎の音がする。ニューヨークの惨状を思わせるような地獄の光景だった。
「もう一発いっちゃって、たまんないのよ…!」
「けっ、他人事だな」
エルターゼはそう言うと手に炎を灯す。そしてその炎は長身のリヴリーをいとも簡単に飲み込みそうな程成長する。
「がーはっはっはっはぁ!」
エルターゼは決まり文句のようにそう言うと炎を前に向けて放つ。
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