現代転生 _その日世界は変わった_

胚芽米

文字の大きさ
上 下
46 / 237

第45話 ヴュルツブルクの戦い

しおりを挟む
2022年7月14日 中央ヨーロッパ標準時
午前11時32分
ドイツ バイエルン州 ヴュルツブルク
_________________
11時30分起床。俺はこうなった。この意味がどういう意味かと言うとこのホテルのチェックアウトはずばり12時。

「やばいぞ!早く!」

ヒカルは相当焦りながら女子部屋へと入って行く。ほどなくしてあちらでも騒ぎが起こる。

「おい急げよ!このホテル12時過ぎたら1分ごとに罰金喰らうからな!」

ヒカルはそう言いながら急いでスマホとイヤホンをバックに詰め込む。

「ったく誰だよ…ワードウルフしようって言ったやつ…あのクソ賢者…」

「まぁ落ち着けよ」

昨日俺達はアナリスの提案でワードウルフとかいうゲームをした。面白かったので夜中までやったらこの様なのだ。
ちなみに女子部屋には二人分のベットしかなく、最後にすぐウルフだとバレたキルアが椅子で寝ることになっている。

「よぉーし。準備はいいなぁ!?それじゃあ出発だ」

ヒカルはそう言うと廊下へと出る。俺もヒカルについていくと女子部屋でも騒ぎがあった。

「ぬおートイレ!トイレいいよな!?」

キルアは俺達の返事も待たずに男子部屋のトイレへと入っていく。足踏みをして、下半身に手が行っていたので相当まずかったのだろう。

「…漏らせばよかったのに」

ヒカルは短くそう呟いたのを俺は聞き逃さなかった。

程なくして10分後。なんとかチェックアウトを時間内に済ませ、ホテルの外に出ていた。

「あの…私まだ髪の毛整えてないんだけど」

「大丈夫。誰も見てないお前なんか」

ヒカルはさらっとそう言うとアナリスに右足を思いっきり踏みつけられる。ヒカルはその場でうずくまるとアナリスはざまぁみろと言ったような感じで見下す。

「痛ってぇ!!」

「ヒカル大丈夫か~?それで俺達この先どうすんのさ?」

「どうすんのってガイム。ヒカルが昨日言ってたじゃん。予想以上にお金がなくなるのが早いって」

「痛い…まぁそういうことだから帰ることになるな…資金稼ぎも時間とリスクがかかるし」

「そう。こいつこの前ギャングに見つかりそうになって拳銃構えてたからな」

さらっと言っているがヒカルは拳銃を持っている。その理由はニューヨークで乗り捨てられたパトカーの中に偶然あった物を拝借したらしい。実際彼がバックに物を急いで詰め込む時にも拳銃だけは慎重に入れていた。

「グロック19。癖がなくて良いぞ~」

とまぁさらっと拳銃を持っていることを明かしたが彼、16歳です。あと普通にホテルの中で机の上にポイって置いてあったんだが。

「とりあえず駅に向かおう。電車に乗って飛行機乗るだけの金は多分あるからな」

そう言われ歩き出そうとした時だ。突如向こうの通りの方でドカーンと何かが崩れる音がする。近くにいた人達もそれに気づき、何事かと騒いでいる。俺も驚きの声を上げる。

「え?何?何かあったのか?」

「分かんない。けどなんか嫌な予感がする」

アナリスは珍しく神妙な顔つきでそう言う。

「ここから離れよう。俺もそんな気がする」
「あたしは何も感じないぞ?」
「何があったんでしょうか…」

爆音があった方向とは逆方向からサイレンの音が聞こえる。

「でも何か気になるな…でもまぁ離れたほうが…………」

アナリスはそこで言葉が途切れる。そして

「冗談でしょ…複数体」

「複数体って何が?」

その時カノンとキルアも何かに気づいたようだ。だが俺は何も分からない。

「なぁ、これって」
「えぇ」

近くにいた人達は何かがあった方向、現場へと向かっていくがアナリス達は動かない。ヒカルは歯切れの悪い言葉に痺れを切らしたのか

「おい、何があったんだ?ちゃんと説明しろ」

「魔物がいる。小さい。けど何体も」

ヒカルが何か言うより先に再び爆発音。だが今度は違う。爆発音と同時にそこからは炎が上がっている。周りの人達はその炎を見て、一斉に逆方向へと逃げ出す。さっきまで現場に向かって行っていた人も逃げ出している。

車道を走っていた車が一斉に止まり、乗っていた人が降りたり、逆方向へとUターンしている。だが中には現場へと向かって行く車もあった。サイレンの音はより一層大きくなって俺の隣を過ぎて行く。

「魔物…それってあの」

「ワイバーンと同じ事が起きてる。それも私達の目の前でまた」

「大変です。すぐに行かないと」

カノンはそう言うと現場に向かって走り出す。

「おい、そっちは、待て」

「とりあえず何があったか私も見てくる」

アナリスもそう言うとカノンについていく。

「あたしどうすればいいんだこの時…」

「よし、一緒に行こうか。ガイムも行くよな?俺ら3人で行こう」

「マジで!?行くのか」

「だってあいつらもう行っちゃってるし…」

そして俺達も現場に向かった。すぐ横の交差点では既にパトカーが1台止まっていた。いやパトカーの他にも乱雑に車が止まっている。

ここを左の場所で爆発が…と思っているとアナリスとカノンがつっ立っている。どうやら何かを見ているらしい。

その先に何が…………なんだこれ……?
そこには地面から何かが飛び出していた。いや生えていた。けど明らかにもとからそこにあった物ではなくその周りにはコンクリートが散らばっていたり、車が乗っていたりしている。

まず生えている物についてはトンネルのような物が突き出ているような感じだ。岩でできていると思う。トンネルの大きさは高さも幅も3mと言ったところか。そしてトンネル…トンネルというのはその先にも空間が広がっているという意味だ。つまり何かが出てくるかもしれない。だがそんな俺の心配はいらなかった。

何故ならそのトンネルにいたであろう奴らは、既に地上にいたからだ。

そいつらは人々を襲っていた。斧を持っている者、槍を持っている者、なかには何も持たずにただ拳や蹴りだけで辺りを破壊しつくす者。

車は燃え、焦げくさい匂いが。人々の鮮血による鉄ぐさい匂いが。とにかく現場はひどかった。

さて、これからどうなるというんだ?

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

聖女の妹は無能ですが、幸せなので今更代われと言われても困ります!

ユウ
ファンタジー
侯爵令嬢のサーシャは平凡な令嬢だった。 姉は国一番の美女で、才色兼備で聖女と謡われる存在。 対する妹のサーシャは姉とは月スッポンだった。 能力も乏しく、学問の才能もない無能。 侯爵家の出来損ないで社交界でも馬鹿にされ憐れみの視線を向けられ完璧を望む姉にも叱られる日々だった。 人は皆何の才能もない哀れな令嬢と言われるのだが、領地で自由に育ち優しい婚約者とも仲睦まじく過ごしていた。 姉や他人が勝手に憐れんでいるだけでサーシャは実に自由だった。 そんな折姉のジャネットがサーシャを妬むようになり、聖女を変われと言い出すのだが――。

レディース異世界満喫禄

日の丸
ファンタジー
〇城県のレディース輝夜の総長篠原連は18才で死んでしまう。 その死に方があまりな死に方だったので運命神の1人に異世界におくられることに。 その世界で出会う仲間と様々な体験をたのしむ!!

本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。 しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。 探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。 だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。 ――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。 Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。 Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。 それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。 失意の内に意識を失った一馬の脳裏に ――チュートリアルが完了しました。 と、いうシステムメッセージが流れる。 それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!

アレク・プランタン

かえるまる
ファンタジー
長く辛い闘病が終わった と‥‥転生となった 剣と魔法が織りなす世界へ チートも特典も何もないまま ただ前世の記憶だけを頼りに 俺は精一杯やってみる 毎日更新中!

小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です  2024年6月中旬に第一巻が発売されます  2024年6月16日出荷、19日販売となります  発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」 中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。 数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。 また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています 戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています そんな世界の田舎で、男の子は産まれました 男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました 男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります 絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて…… この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです 各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております

記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される

マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。 そこで木の影で眠る幼女を見つけた。 自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。 実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。 ・初のファンタジー物です ・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います ・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯ どうか温かく見守ってください♪ ☆感謝☆ HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯ そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。 本当にありがとうございます!

処理中です...