上 下
33 / 237

第32話 アフガニスタン(3)

しおりを挟む
警報が鳴ってからすぐに兵士達が対応するまでには時間がそうかからなかった。

現在彼らはニューヨークについての事件を詳しく知らない。曖昧に伝え、今は任務に集中してもらうためだ。そして彼らは時期に本国へと帰還する。

もともとアフガニスタンは政権交代のイザコザと大統領の方針で米軍の撤退が進み始めていたのも理由の一つである。

M2重機関銃のとりつけられたハンヴィーが多数現場へと向かう。

まず最初に現場に到着したのは5台のハンヴィーとそれに乗っていた、もしくは走って来た25人程の兵士。全員砂漠の砂の色と同化できるような迷彩防護服とヘルメットを着ていた。

兵士達はそれぞれアサルトライフルのM4やM16などを装備していた。中にはM26手榴弾を持っている兵士もいる。

その頃には砂ぼこりは既に基地へ到着せんとばかりに近づいていた。

そして砂ぼこりは到着する。鉄製のフェンスに砂がザザッと襲いかかる。
そしてその砂はハンヴィーや兵士達にも襲いかかるが、ただの砂だ。腰から下の方までしか砂はなく、致命傷にはならないが、兵士達の視界は悪くなる。

10秒くらいだろうか。砂ぼこりが兵士達を襲ったのは。その間にも2台のM939 5tトラックがやって来て合計20人の兵士を下ろす。

ハンヴィーの機銃は砂ぼこりの中心に焦点を常に合わせる。

そして完全に砂ぼこりは止んだ。その間にも後ろからハンヴィーや兵士達が走ってこちらへやって来ている。

兵士達と鉄製のフェンスとの距離は10m。
距離はしっかりととっている。

砂ぼこりはもう襲ってこない。砂は完全に止んだのだ。そして上空を飛ぶコマンチの羽音しかしないことが兵士達に緊張感を与える。
兵士達は砂ぼこりの中心に照準を合わせ、狩りをするかのようにじっと待つ。

ブオ~。
生暖かい風が兵士達の足元を通り抜けて行く。

その時だ。突如フェンスの先の砂が舞い上がり、そこから何かが高さ3mはあるフェンスを飛び越える。兵士達は思わず目を瞑る。

そしてその何かはフェンスを飛び越え、基地の中へ入ると、ハンヴィーや兵士達に一気に駆け寄る。

その何かは黄土色のサソリ。だがただのサソリではなく、大きさは成人男性の胸くらいまであり、シマウマのような目を持っている。

兵士達はこの謎の生物に心底驚愕すると、本人の意思ではなく反射的に計8体のサソリ達に銃を向け、撃つ。

だがサソリ達の方が行動するのが一歩早く、サソリ達はハンヴィーや兵士達に対して、自身のハサミを向ける。するとハサミの中からは火の玉が現れ、それをハンヴィーや兵士達に投げつける。

着弾したと同時にその火の玉は花火みたいな爆発を起こし、地面のコンクリートを吹き飛ばす。

これにより現場の部隊は大混乱に陥る。
あちこちで火の玉が放たれ、そして着弾する。
M2重機関銃を撃っているハンヴィーは火の玉が着弾し、横転する。
兵士達は着弾の衝撃で地面に倒れる。

兵士達は距離をとりながらM4やM16を撃とうとするが、サソリのスピードは速く、すぐに距離を詰められる。

そして一匹のサソリがコンクリートの地面に両方のハサミを突き刺すと兵士達がいる場所にピンポイントで花火のような爆発が起きる。

のわぁぁぁ!

兵士達は声にならない叫びを上げ、M939
5tトラックは着弾した部分に黒い焦げをつけガタンと大きく揺れ、コンクリートは砕け散り辺りに散乱する。

コマンチのパイロットはその様子を夢かと疑っていた。コマンチから見える周りの景色は、こちらへ向かって来ていた兵士が驚愕し、既にこの場にいた兵士が退避している。そして周辺にはサソリが縦横無尽に駆け回り、あちこちに向かって火の玉を放っているという混沌とした景色だった。

そう、この日アフガニスタンの辺境の米軍基地は襲撃されたのだ。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

私のお父様とパパ様

ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。 婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。 大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。 ※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。 追記(2021/10/7) お茶会の後を追加します。 更に追記(2022/3/9) 連載として再開します。

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

【12/29にて公開終了】愛するつもりなぞないんでしょうから

真朱
恋愛
この国の姫は公爵令息と婚約していたが、隣国との和睦のため、一転して隣国の王子の許へ嫁ぐことになった。余計ないざこざを防ぐべく、姫の元婚約者の公爵令息は王命でさくっと婚姻させられることになり、その相手として白羽の矢が立ったのは辺境伯家の二女・ディアナだった。「可憐な姫の後が、脳筋な辺境伯んとこの娘って、公爵令息かわいそうに…。これはあれでしょ?『お前を愛するつもりはない!』ってやつでしょ?」  期待も遠慮も捨ててる新妻ディアナと、好青年の仮面をひっ剥がされていく旦那様ラキルスの、『明日はどっちだ』な夫婦のお話。    ※なんちゃって異世界です。なんでもあり、ご都合主義をご容赦ください。  ※新婚夫婦のお話ですが色っぽさゼロです。Rは物騒な方です。  ※ざまあのお話ではありません。軽い読み物とご理解いただけると幸いです。 ※コミカライズにより12/29にて公開を終了させていただきます。

冷たかった夫が別人のように豹変した

京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。 ざまぁ。ゆるゆる設定

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

処理中です...