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第25話 一時の休息
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2022年7月11日 アメリカ東部標準時
午後6時01分
アメリカ合衆国 コネチカット州
ニューヘブン中心部
____________________
「世界標準時の午後3時…つまりここだと午前10時か…」
ヒカルが独り言を言っている中、俺達はニューヨークからのバスを降り、ニューヘブンという街に来ていた。
「ここがニューヘブン…ニューヨークよりかは小さいけど大きな街だな」
「コネチカット州で一番大きな街だからな。そもそもコネチカット州があまり知られてないからな」
アナリスとヒカルがそんな会話をしている。
俺としてはもう慣れた街並みに等しいんだが、夕日をバックにしたその街並みは美しいの一言に尽きる。
隣ではカノンが俺と同じように街並みを眺めている。
俺は勇気を持ってカノン、第4王女と話してみることにした。
「えっと…王女様?」
「大丈夫ですよ。そんな敬うような言葉遣いじゃなくても」
おっと、これは最初からコミュニケーションをミスったらしいな。だがまぁ気を取り直して
「なんというかその、きれいですね」
あっ、しまった。これはまずい気がする。そんな直感がする。そして案の定
「えっと、街並みですか?はい。確かにきれい…ですね」
俺もカノンもぎこちなくなった。コミュ力が大事だということを痛いほど知らされる。
どうしよう…
「…私はこの世界に来て良かったと思ってます」
唐突にカノンが話を振る。そして彼女は続ける。
「え、なんで…です?」
「私は表向きには第4王女。位高き王の娘となっています。でもそれは表向きだけです。私は王から、そして兄弟から蔑まれてきました。皇族に女が生まれてくることは一族に破局をもたらすと…そんな言い伝えがあったからです。頼りの母は私を【王女】にすることで気がいっぱいでした。この鎧も剣も母は許してくれませんでした…」
カノンは一呼吸置く。何故俺にそのことを話すのだろうか。アナリスとヒカルはこの話を聞いてどう思っているのであろう。
「この世界に来たのも、私が1人城を抜け出したからです。かつての剣の修行場に隠しておいた鎧と剣で旅をしようと思ったんです…そして旅を始めようとした時、私はこの世界に来ました」
…こういう時は慰め、励ましの言葉を送るべきなのだろうか。正直王族との関係は俺にはまったくない。いわば他人事だ。
他人事だからこそ彼女にどういう言葉をかければいいか分からない。
だが俺が何か言う前にカノンが再び話し出す。
「なんだかごめんなさい。勝手に話をしてしまって、迷惑ですよね」
「え?いや別にそんなことはまったく思ってないですよ!?」
俺は慌ててカノンの言葉を否定する。
あぁ、こういう時ってどうすれば…
「あぁっと、失礼。俺的な感想としては…とにかく早くホテル行かね?なんで立ち話するんだよ…」
ヒカルが話に割り込んで来た。感想はともかくナイスタイミングだ。いやナイスなのか?ヒカルはなんというかめんどくさそうな顔をしている。
「そーそー。とりあえず疲れたからさぁ。早く行こ?」
この2人マイペースすぎないか…でも見る限り2人とも疲れていそうだ。
「…とにかく行こう」
「えぇ、そうですね」
話の締めとしては悪い気がした。
________30分後________
俺達はあのあと30分間歩いて街のホテルに来ていた。街の中心部にある茶色の4階建てくらいの建物は、ところどころに窓から明かりが漏れ出ている。
何はともあれホテルの中に入ってみる。ロビーは俺達の世界にもありそうな雰囲気を醸し出している。
茶色い木製のカウンターに、ヒカルが話に行く。
「えっと、4人です。部屋空いてますか?
…これほんとに通じんのかな」
「えっと4人ですね。ちょっと待ってください」
「うわ、通じた。翻訳の魔法すごいな…」
ヒカルはどうやらここで初めて翻訳の魔法を使用したようだ。
受付の係員は、鍵のかかっている部分を見る。
その間にヒカルが手招きをする。
「魔法ってすごいんだな……あとカノンの服装って大丈夫なのか?鎧は規制されない…よな?」
《アメリカのホテルでは服装規制があり、これに引っかかるとホテルに入れない》
「ヒカルが持ってるスマホで調べればいいじゃん」
「スマホになんでもあると思うなよ…」
アナリスとヒカルが、そんなやりとりをしている中、係員がヒカルに向かって話す。
「4人用の部屋はありませんので、2人用の部屋を2つにしますね」
「え?あぁ、はい。おーい付いて来て」
ヒカルはそう言うとロビーを抜け、エレベーターへと歩き出し、エレベーターの扉を開ける。
エレベーターの中に乗ってみる。これは初めて乗るものではあるが、もう驚きはしない。
ただ体が宙に浮くような変な感じがする。
チン!という音と共にエレベーターの扉がまた開く。
「302と303か…外国人向けのホテルだからドアマンとかベルマンとかいなくて助かる。俺とガイムは302。アナリスとカノンは303ね。鍵投げるぞぉ~」
「あいあーい。行こ、カノン」
ヒカルが投げた部屋の鍵をナイスキャッチしたアナリスはぶっきらぼうにそう言うととっととホテルの部屋に入っていく。カノンもそれに続く。
ヒカルもホテルの部屋のドアを開けていく。
ガチャッという音がすると、ドアが開く。
内装としては、大きなシングルベッドが2つまず最初に目に入る。あとは小さい縦長のテーブルと2つの椅子。そしてテレビと冷蔵庫。
「まぁ、値段と妥当の部屋だな。あぁ、なるほど、やっぱユニットバスか」
ヒカルは隣の部屋を開けながら言う。おそらく洗面所とかそういうのだろう。
「あぁぁぁ、なんだか超疲れたわ」
「その服装で寝たらベッド汚れるぞ」
ベッドに横になると分かる。超疲れた。
ニューヨークのワイバーンも頭から離れないし。
それとあと…
「お腹空いた…夕飯食べたい」
俺のかわりにヒカルが代用してくれた。そうお腹空いた。昼飯は何も食べてないというわけではないが(ポテチとかいうスナック菓子だけど)夕飯抜きはきつすぎる。
日本にいたときに知ったことだが1日3食は共通ということに感謝だ。生活習慣を変えずに済む。
「皆でなんか食べにいかね?あと服。いろいろと足りなすぎる」
「さんせーい。もちろんヒカルのおごりだよな?」
「なんだ?急に元気になったな。ガイムはもしや女の子嫌い?」
「そういうわけじゃないけど。あんま話したことないからなぁ」
「あぁ、そう。異世界人って男女仲良いらしいな。ラノベ見ただけだけど。つーか今週でいくら金使えばいいんだよ…」
そうこうしているうちにアナリス達が入ってくる。
「おーい男性陣。どっか行かね?お腹空いた」
「ん?あぁ分かった。つーかよ、俺もだけどこれここまで計画考えてなかったよな?」
「ヒカル?それどういうこと?」
「荷物持ってきてなさすぎ。何もないじゃん。俺のバッグの中あれだぞ。スマホ、財布3つ、モバイルバッテリーしかないぞ。よくこれだけで行こうと思ったよ」
「…それは私も思った」
アナリスは目を反らしながら言う。
「もばいるば…それって何ですの?」
そしてカノンも質問する。
その質問にヒカルは「あとで教える」とだけ言って続ける。
「まぁ、ご飯食べに行こうか。とりあえず俺腹減ったし」
「よし、OK。私は準備ばっちりだ。ガイム
は?」
「俺?別いいけど」
こうして俺達は夕飯を食べに行くことにした。
そしてホテルを出て、適当に食事処を探している道中
俺はアナリスに聞きたいことがあった。
「なぁ、アナリスさ。大丈夫なん?」
「え?何が?」
「ニューヨークだっけ?あそこで魔法使ってたから人に見られてないの?ほら人に見られるのまずいらしいし」
「あぁ、まずいよ。全員を口封じ(頭をたたいて記憶消去)はできるわけないし。ただ仕方ないね。だってあそこで魔法使わないともっとまずいし」
「そう。あとアナリスなんでこの世界の軍隊のこと黙ってたの?」
「え?言わないほうが緊張感味わえるじゃん。どうだった?」
どうだったも何も、泣きそうだった。アナリスに連れられてヒカル達とセントラルパークで会う道中で歩兵を見てたけどなんか雰囲気めっちゃ怖いし、変な車があるしで散々すぎる。
アナリスってやっぱおかしいんじゃないか。ヒカルと妙に気があってるし。ヒカルも多少おかしい(アナリス談)らしいし。
まさしく相思相愛(?)なのでは。
とまぁ、いろいろ考えたわけだが、とりあえずご飯が食べたい。
午後6時01分
アメリカ合衆国 コネチカット州
ニューヘブン中心部
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「世界標準時の午後3時…つまりここだと午前10時か…」
ヒカルが独り言を言っている中、俺達はニューヨークからのバスを降り、ニューヘブンという街に来ていた。
「ここがニューヘブン…ニューヨークよりかは小さいけど大きな街だな」
「コネチカット州で一番大きな街だからな。そもそもコネチカット州があまり知られてないからな」
アナリスとヒカルがそんな会話をしている。
俺としてはもう慣れた街並みに等しいんだが、夕日をバックにしたその街並みは美しいの一言に尽きる。
隣ではカノンが俺と同じように街並みを眺めている。
俺は勇気を持ってカノン、第4王女と話してみることにした。
「えっと…王女様?」
「大丈夫ですよ。そんな敬うような言葉遣いじゃなくても」
おっと、これは最初からコミュニケーションをミスったらしいな。だがまぁ気を取り直して
「なんというかその、きれいですね」
あっ、しまった。これはまずい気がする。そんな直感がする。そして案の定
「えっと、街並みですか?はい。確かにきれい…ですね」
俺もカノンもぎこちなくなった。コミュ力が大事だということを痛いほど知らされる。
どうしよう…
「…私はこの世界に来て良かったと思ってます」
唐突にカノンが話を振る。そして彼女は続ける。
「え、なんで…です?」
「私は表向きには第4王女。位高き王の娘となっています。でもそれは表向きだけです。私は王から、そして兄弟から蔑まれてきました。皇族に女が生まれてくることは一族に破局をもたらすと…そんな言い伝えがあったからです。頼りの母は私を【王女】にすることで気がいっぱいでした。この鎧も剣も母は許してくれませんでした…」
カノンは一呼吸置く。何故俺にそのことを話すのだろうか。アナリスとヒカルはこの話を聞いてどう思っているのであろう。
「この世界に来たのも、私が1人城を抜け出したからです。かつての剣の修行場に隠しておいた鎧と剣で旅をしようと思ったんです…そして旅を始めようとした時、私はこの世界に来ました」
…こういう時は慰め、励ましの言葉を送るべきなのだろうか。正直王族との関係は俺にはまったくない。いわば他人事だ。
他人事だからこそ彼女にどういう言葉をかければいいか分からない。
だが俺が何か言う前にカノンが再び話し出す。
「なんだかごめんなさい。勝手に話をしてしまって、迷惑ですよね」
「え?いや別にそんなことはまったく思ってないですよ!?」
俺は慌ててカノンの言葉を否定する。
あぁ、こういう時ってどうすれば…
「あぁっと、失礼。俺的な感想としては…とにかく早くホテル行かね?なんで立ち話するんだよ…」
ヒカルが話に割り込んで来た。感想はともかくナイスタイミングだ。いやナイスなのか?ヒカルはなんというかめんどくさそうな顔をしている。
「そーそー。とりあえず疲れたからさぁ。早く行こ?」
この2人マイペースすぎないか…でも見る限り2人とも疲れていそうだ。
「…とにかく行こう」
「えぇ、そうですね」
話の締めとしては悪い気がした。
________30分後________
俺達はあのあと30分間歩いて街のホテルに来ていた。街の中心部にある茶色の4階建てくらいの建物は、ところどころに窓から明かりが漏れ出ている。
何はともあれホテルの中に入ってみる。ロビーは俺達の世界にもありそうな雰囲気を醸し出している。
茶色い木製のカウンターに、ヒカルが話に行く。
「えっと、4人です。部屋空いてますか?
…これほんとに通じんのかな」
「えっと4人ですね。ちょっと待ってください」
「うわ、通じた。翻訳の魔法すごいな…」
ヒカルはどうやらここで初めて翻訳の魔法を使用したようだ。
受付の係員は、鍵のかかっている部分を見る。
その間にヒカルが手招きをする。
「魔法ってすごいんだな……あとカノンの服装って大丈夫なのか?鎧は規制されない…よな?」
《アメリカのホテルでは服装規制があり、これに引っかかるとホテルに入れない》
「ヒカルが持ってるスマホで調べればいいじゃん」
「スマホになんでもあると思うなよ…」
アナリスとヒカルが、そんなやりとりをしている中、係員がヒカルに向かって話す。
「4人用の部屋はありませんので、2人用の部屋を2つにしますね」
「え?あぁ、はい。おーい付いて来て」
ヒカルはそう言うとロビーを抜け、エレベーターへと歩き出し、エレベーターの扉を開ける。
エレベーターの中に乗ってみる。これは初めて乗るものではあるが、もう驚きはしない。
ただ体が宙に浮くような変な感じがする。
チン!という音と共にエレベーターの扉がまた開く。
「302と303か…外国人向けのホテルだからドアマンとかベルマンとかいなくて助かる。俺とガイムは302。アナリスとカノンは303ね。鍵投げるぞぉ~」
「あいあーい。行こ、カノン」
ヒカルが投げた部屋の鍵をナイスキャッチしたアナリスはぶっきらぼうにそう言うととっととホテルの部屋に入っていく。カノンもそれに続く。
ヒカルもホテルの部屋のドアを開けていく。
ガチャッという音がすると、ドアが開く。
内装としては、大きなシングルベッドが2つまず最初に目に入る。あとは小さい縦長のテーブルと2つの椅子。そしてテレビと冷蔵庫。
「まぁ、値段と妥当の部屋だな。あぁ、なるほど、やっぱユニットバスか」
ヒカルは隣の部屋を開けながら言う。おそらく洗面所とかそういうのだろう。
「あぁぁぁ、なんだか超疲れたわ」
「その服装で寝たらベッド汚れるぞ」
ベッドに横になると分かる。超疲れた。
ニューヨークのワイバーンも頭から離れないし。
それとあと…
「お腹空いた…夕飯食べたい」
俺のかわりにヒカルが代用してくれた。そうお腹空いた。昼飯は何も食べてないというわけではないが(ポテチとかいうスナック菓子だけど)夕飯抜きはきつすぎる。
日本にいたときに知ったことだが1日3食は共通ということに感謝だ。生活習慣を変えずに済む。
「皆でなんか食べにいかね?あと服。いろいろと足りなすぎる」
「さんせーい。もちろんヒカルのおごりだよな?」
「なんだ?急に元気になったな。ガイムはもしや女の子嫌い?」
「そういうわけじゃないけど。あんま話したことないからなぁ」
「あぁ、そう。異世界人って男女仲良いらしいな。ラノベ見ただけだけど。つーか今週でいくら金使えばいいんだよ…」
そうこうしているうちにアナリス達が入ってくる。
「おーい男性陣。どっか行かね?お腹空いた」
「ん?あぁ分かった。つーかよ、俺もだけどこれここまで計画考えてなかったよな?」
「ヒカル?それどういうこと?」
「荷物持ってきてなさすぎ。何もないじゃん。俺のバッグの中あれだぞ。スマホ、財布3つ、モバイルバッテリーしかないぞ。よくこれだけで行こうと思ったよ」
「…それは私も思った」
アナリスは目を反らしながら言う。
「もばいるば…それって何ですの?」
そしてカノンも質問する。
その質問にヒカルは「あとで教える」とだけ言って続ける。
「まぁ、ご飯食べに行こうか。とりあえず俺腹減ったし」
「よし、OK。私は準備ばっちりだ。ガイム
は?」
「俺?別いいけど」
こうして俺達は夕飯を食べに行くことにした。
そしてホテルを出て、適当に食事処を探している道中
俺はアナリスに聞きたいことがあった。
「なぁ、アナリスさ。大丈夫なん?」
「え?何が?」
「ニューヨークだっけ?あそこで魔法使ってたから人に見られてないの?ほら人に見られるのまずいらしいし」
「あぁ、まずいよ。全員を口封じ(頭をたたいて記憶消去)はできるわけないし。ただ仕方ないね。だってあそこで魔法使わないともっとまずいし」
「そう。あとアナリスなんでこの世界の軍隊のこと黙ってたの?」
「え?言わないほうが緊張感味わえるじゃん。どうだった?」
どうだったも何も、泣きそうだった。アナリスに連れられてヒカル達とセントラルパークで会う道中で歩兵を見てたけどなんか雰囲気めっちゃ怖いし、変な車があるしで散々すぎる。
アナリスってやっぱおかしいんじゃないか。ヒカルと妙に気があってるし。ヒカルも多少おかしい(アナリス談)らしいし。
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