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第20話 VSワイバーン in ニューヨーク(5)

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2022年7月11日 アメリカ東部標準時
午後3時25分
アメリカ合衆国 ニューヨーク州
ウォール街
____________________

アナリスは、銀髪少女と共にワイバーンと戦っていた。

魔王の幹部のワイバーン。並みのワイバーンと比べ大きさも強さも桁違いだ。

それを2人で倒すのには、相当な強さがないと駄目だ。

「よし、行くよ!名前分からない人!」

「準備はばっちりです」

両者は顔を合わせずに言う。

ワイバーンは炎を散らしながらこちらへと突進してくる。

「行って、私が止める」

アナリスは、[運動変化]の魔法で、ワイバーンの突進を止めようとする。

ワイバーンはコンクリートの道路にヒビを割りながらこちらへと来る。

そして、ワイバーンの足の動きがアナリスの目の前に来たとき止まる。

「今だ!やっちゃえ!」

アナリスはそう叫ぶと両足でビルに張り付いていた銀髪少女がワイバーンに向かって飛ぶ。

そしてその手に持った剣の先がワイバーンに当たろうとした時

ワイバーンはコンクリートの道路に一層のヒビを入れながら、後ろへと跳ぶ。

これにより銀髪少女は空中に投げ出されるようになった。
それを逃すまいとワイバーンは撤退した矢先に炎のブレスを吐いた。

しかし銀髪少女に近づいていった炎はかき消されてしまう。

だが、ワイバーンも負けてはおられず、炎の威力をもっと高めようと集中した時

アナリスがビルの隙間から現れる。アナリスはワイバーンが銀髪少女に気を引いているすきに、ビルの影に隠れて近づいていた。

「伏せ」

アナリスは短くそう言うと、ワイバーンの体は突如地面に叩きつけられる。

ワイバーンは体を起こそうとするが、[状態変化]の魔法で変化した尖ったコンクリート群がビルの中から突き破り、そのままワイバーンの頭を串刺しにする。

だが、ワイバーンは死ななかった。ギャァァァという絶叫に近い声を出し、まだ動ける手で辺りを薙ぎ払うと、再び立ち上がる。

「そんな、ここまでやっても…」

後ろには、銀髪少女がいつの間にかこちらへと来ていた。

「これはきついね…ねぇ名前の分からない人ってのも嫌だからさ、君の名前教えてくれない?」

アナリスはワイバーンの方を向きながらそう言うと、その少女もワイバーンの方を向きながら言う。

「…カノンです。自己紹介はこの辺でいいですか?」

「名前だけじゃあ自己紹介とは言わないけど、まぁそれどころじゃないし」

ワイバーンはこちらを見つめていた。
私達が話している間、特に何もしていない。
おそらく傷を癒やしているといったところだろう。

両者はまだ動かない。見つめあって硬直したままだ。ワイバーンの傷は深くまだ完全には治りきれていない。

炎のパチパチと燃える音があちこちからしている。辺りはいつかオレンジ色に染まりそうなくらい変化している。

「おい、こっちだ!いいから早く」

いきなり後ろから声をかけられる。そこにはヒカルがいた。手に黒い何かを持っている。

ヒカルは手に持っている物をワイバーンに向ける。
そしてパァーンという音がしたあとに、キシャアンという音が響く。
どうやらその道具を使ったらしい。

ワイバーンは、顔を振ると、口に炎を貯める。

「おい、何しに来たんだよ!?」

アナリスは驚いてヒカルに言う。
だが、ワイバーンはこの状況に待ってはくれず、今まで一番大きい火の玉を放つ。

咄嗟に銀髪少女ことカノンが、炎の玉に剣を向ける。そのおかげで炎の玉は、着弾すふことなく消えた。

「いいから!」

ヒカルの言われるがまま、アナリスとカノンは、ヒカルの方へと行く。ヒカルは彼らがこちらへ来るのと同時にビルの影へと動き出す。

「お前ら!どうにかあいつの動き止められないか?」

「止めればいいのね?」

アナリスは、コンクリートの道路に手を当てる。するとコンクリートの塊がそこからでき、それをワイバーンに向けて投げる。

それはワイバーンの顔に直撃し、ワイバーンは怯む。

その隙に一行は、ビルの中へと隠れる。

「一体なんだよ?何かあるのか?」

アナリスは多少苛つきながらそう言う。
唐突に現れていきなりこっち来いって言い出したからだ。

「もうすぐでここら一体に、軍が来る、空軍が」 

「空軍って?」

今度はカノンが聞く。

「空軍ってのは、空の軍隊だ。分かりやすく言うとね。今近くの空軍基地に動きが見られたらしい。Twitterにそうあった」

「空軍……ってことはここら一体が吹き飛ぶ?」

「あぁ、かもな。そうなる前に連れ出したってわけだ。あいつを縛っておくことは無理だが、あいつ飛べないしな。歩かせとってもニューヨークからは出られないだろ」

「いや、飛べるよ普通に」

「……は?アナリスそれどういうことだよ?。説明しろ」

ヒカルの声が荒くなる。

「私が魔法でずっと抑えつけてるから飛べないのであって普通なら飛んでる。だから本調子がだせないのよ」

「……マジか。でもそれならお前がずっと抑えつけとけばいい話で…」

「範囲がある。その魔法の範囲が。だからここから離れたら終わり」

アナリスの計算では、おそらくマンハッタン島から抜け出せば、抑えつけてる上位魔法[質量変化]の範囲外になるという。

「ところでガイムは?」

「あぁ、あいつなら多分地下鉄の人達を救助してる。それよりどうすんだ?この状況はまずいぞ。ここから抜け出せないとなると…
最悪アナリス1人を置いていくことになるが」

「私は別にそれでいいけど…てか待って。おかしくない?」

「どうしたんですか?」

カノンが私に真剣そうな表情で聞いてくる。

「なんか炎を吐いてなくないか?」

私がそう言うと、フェアリーが後を続ける。

「もしかして…炎を出し切ったんじゃないでしょうか?ワイバーンって確か、一定量炎を出すと、炎がしばらく出せなくなるはずです」

「つーことは、今は隙ありってことだな。よし私がガイムとワイバーンをなんとかするから、2人は今のうちにここから逃げちゃっていいよ」

「え?大丈夫ですか?あなた1人で?」

カノンが心配そうに私に聞いてくる。

「大丈夫大丈夫。私は賢者って言われてきたんだから。それじゃあよろしく」

アナリスは自信満々にそう言うと、ビルの中から抜け出す。

「よし、俺達は逃げようか…ところで君名前は?」

ヒカルは立ち上がると目の前の銀髪少女にそう聞いた。
















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