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ダーザ・オーサムというショタキャラ
ダーザ・オーサムというショタキャラ24
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マシェルは、トリエットが好き。
そう結論付けた私は、大きく安堵の溜め息を吐く。
マシェルが私を好きなのかもしれない。そう思った瞬間から、胸の奥に溜まっていた澱が消え去っていったような解放感に包まれていた。
本当は、分かっている。
それは信憑性が薄い、単なる自分に都合が良い考えに過ぎないということなんて。
だけど、私はマシェルの本当の気持ちを、ちゃんと聞いていないのだ。
ならば可能性の一つを、勝手に真実だと信じたとしても悪くは無いはずだ。
私は、片鱗を感じていたマシェルの想いを、無かったことにする。
全て無かったことにして、私の自意識過剰だとして、自己完結する。
もう、これでマシェルの行動に思い悩まなくてもいい。
そう思うと、自然に口元に笑みが浮かんだ。
だって、想いを寄せられるのは、怖い。
寄せられた想いに応えられずに、誰かを傷つけてしまうことは、とても怖い。
『--絶対に、許さないから……!』
不意に脳裏に浮かぶ言葉。
あれは、一体いつ、誰から言われた言葉だっただろう。
その言葉を放った声も、状況も、全然分からない。
前世だったか、今生のルクレアの過去だったか。
断片的に分散する記憶の中に埋没して、思い出せない。
--だけど、今でもただ一つ分かることがある。
その台詞を言われた時、私は誰かを、想いを寄せてくれる誰かを、確かに傷つけた。
想いに応えることが出来ないまま、相手の気持ちを傲慢に弄んだ。
あぁ、そうだ。あれは確か。確か、あれは……
「……へくっし」
浮かび上がった記憶は、自身の間抜けなくしゃみによって霧散する。
……あかん。鼻水垂れて来た。
これは、ルクレア・ボレアとしてあかん姿だ。
……まぁ、気がついたら周囲の他の一般生徒みんなフロアから逃げ出していないからいいけど……!
フロアに残されたのは、マシェルと、トリエット、そして私の三人だけ。
そしてフロア内には、ブリザードが吹き荒れて、ところどころ凍り付いている。
逃げ出した生徒たちは、実に賢明な判断をしたといえる。……私も逃げたい。
しかし、逃げ出そうにも、私の手は未だトリエットによって、がっちり握られている。
自分を慕ってくれるかわい子ちゃんを乱暴に振り払って逃げる勇気は私には無い。
「お姉様を不快にさせる、雑菌保持者が、気安くお姉様に話しかけないで下さいます?」
「人間の唾液に等しく雑菌が含まれているというのなら、シュガー嬢、貴女も雑菌保持者ということになるな。……ルクレアに近づかないでくれるか?」
……おおう。今、一層ブリザード強くなったよ。二人は興奮して熱くなっているから気が付かないみたいだけど、私は寒くて仕方ないよ。
てか、マシェル、どんだけ魔力暴走させて……。
視線を、魔力を纏うトリエットの手に移して、ようやく気が付く。
トリエットからもまた、感情が高ぶるあまり魔力暴走を起こして魔力を放出していたということに。
放出された魔力が、マシェルの放出した魔力と混ざって、現在の極寒の状況を作りだしているのだということに、今頃気が付いた。
……そうだ。今頃、思い出した。
トリエットの魔力属性は、「風」。
氷 + 風 = ブリザード
--今の状況、トリエットも原因なんじゃないかぁあああ!!! おい!!!
睨み合う、トリエットとマシェル。
時間を追うごとに低下していく室温。
寒さによる震えが増していく、可愛そうな私。
寒いよ……寒い……なんだかとっても眠いんだ。……温かいもふもふな忠犬、プリーズ。
……て、あかん。犬の体温もってしても、かの少年は悲劇的に凍死しちゃっているわ。…暖房機器を下さい。
……あぁ、もう!
誰でもいいから、この状況をなんとかしてくれ!
せめて、どっちかの気を逸らすとかしてさぁっ!
「--トリエットさん!」
私が天に祈った瞬間、どこからか聞こえた明朗な声が、フロアに響き渡った。
そう結論付けた私は、大きく安堵の溜め息を吐く。
マシェルが私を好きなのかもしれない。そう思った瞬間から、胸の奥に溜まっていた澱が消え去っていったような解放感に包まれていた。
本当は、分かっている。
それは信憑性が薄い、単なる自分に都合が良い考えに過ぎないということなんて。
だけど、私はマシェルの本当の気持ちを、ちゃんと聞いていないのだ。
ならば可能性の一つを、勝手に真実だと信じたとしても悪くは無いはずだ。
私は、片鱗を感じていたマシェルの想いを、無かったことにする。
全て無かったことにして、私の自意識過剰だとして、自己完結する。
もう、これでマシェルの行動に思い悩まなくてもいい。
そう思うと、自然に口元に笑みが浮かんだ。
だって、想いを寄せられるのは、怖い。
寄せられた想いに応えられずに、誰かを傷つけてしまうことは、とても怖い。
『--絶対に、許さないから……!』
不意に脳裏に浮かぶ言葉。
あれは、一体いつ、誰から言われた言葉だっただろう。
その言葉を放った声も、状況も、全然分からない。
前世だったか、今生のルクレアの過去だったか。
断片的に分散する記憶の中に埋没して、思い出せない。
--だけど、今でもただ一つ分かることがある。
その台詞を言われた時、私は誰かを、想いを寄せてくれる誰かを、確かに傷つけた。
想いに応えることが出来ないまま、相手の気持ちを傲慢に弄んだ。
あぁ、そうだ。あれは確か。確か、あれは……
「……へくっし」
浮かび上がった記憶は、自身の間抜けなくしゃみによって霧散する。
……あかん。鼻水垂れて来た。
これは、ルクレア・ボレアとしてあかん姿だ。
……まぁ、気がついたら周囲の他の一般生徒みんなフロアから逃げ出していないからいいけど……!
フロアに残されたのは、マシェルと、トリエット、そして私の三人だけ。
そしてフロア内には、ブリザードが吹き荒れて、ところどころ凍り付いている。
逃げ出した生徒たちは、実に賢明な判断をしたといえる。……私も逃げたい。
しかし、逃げ出そうにも、私の手は未だトリエットによって、がっちり握られている。
自分を慕ってくれるかわい子ちゃんを乱暴に振り払って逃げる勇気は私には無い。
「お姉様を不快にさせる、雑菌保持者が、気安くお姉様に話しかけないで下さいます?」
「人間の唾液に等しく雑菌が含まれているというのなら、シュガー嬢、貴女も雑菌保持者ということになるな。……ルクレアに近づかないでくれるか?」
……おおう。今、一層ブリザード強くなったよ。二人は興奮して熱くなっているから気が付かないみたいだけど、私は寒くて仕方ないよ。
てか、マシェル、どんだけ魔力暴走させて……。
視線を、魔力を纏うトリエットの手に移して、ようやく気が付く。
トリエットからもまた、感情が高ぶるあまり魔力暴走を起こして魔力を放出していたということに。
放出された魔力が、マシェルの放出した魔力と混ざって、現在の極寒の状況を作りだしているのだということに、今頃気が付いた。
……そうだ。今頃、思い出した。
トリエットの魔力属性は、「風」。
氷 + 風 = ブリザード
--今の状況、トリエットも原因なんじゃないかぁあああ!!! おい!!!
睨み合う、トリエットとマシェル。
時間を追うごとに低下していく室温。
寒さによる震えが増していく、可愛そうな私。
寒いよ……寒い……なんだかとっても眠いんだ。……温かいもふもふな忠犬、プリーズ。
……て、あかん。犬の体温もってしても、かの少年は悲劇的に凍死しちゃっているわ。…暖房機器を下さい。
……あぁ、もう!
誰でもいいから、この状況をなんとかしてくれ!
せめて、どっちかの気を逸らすとかしてさぁっ!
「--トリエットさん!」
私が天に祈った瞬間、どこからか聞こえた明朗な声が、フロアに響き渡った。
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