上 下
70 / 191
ダーザ・オーサムというショタキャラ

ダーザ・オーサムというショタキャラ15

しおりを挟む
「嫉妬してんだろ。ご主人様とるかもしれねぇ奴に」

「いや、ないない。熨斗つけてさしあげたいくらいだわ」

 間髪置かずに、否定させて頂きます。

 ねーわー。
 実にねーわぁー。
 こんな鬼畜女装野郎のことで嫉妬とか、ないない。
 私のポリシーから、契約がある以上は従うけど、解放してくれるんなら速攻で飛び付きますよ? その為なら、代わりの下僕及び人身御供、必死で探すよ?
てか、探してるよ?

「……あだっ! ちょ、髪引っ張らないで! ちぎれる! キューティクル傷む!」

「……黙れ、下僕。てめぇ、がムカつくこというのが悪ぃ」

 横 暴  !


「ムカつく発言されたくなかったら、もっと私に優しくしてくださーい! ぎぶみーラブ! 慈しみの心、ぷりーず!」

「あぁん? 十分優しくしてやってんだろーが。俺的には破格の扱いしてんだぞ」

「どこがですか! ならまず、体罰やめて! 女の子に暴力、良くない!」

「てめぇは女じゃねぇ。下僕だ。飼い犬だ。犬の躾は体に教え込むのが一番だろう」

 人間であることまで否定するだとか、どんだけ!?

 うちひしがれる私に、デイビッドはふんと鼻を鳴らすと、指を突きつけて死刑宣告を放った。

「……取り合えず代わりの下僕見つけてこねぇ限り、てめぇは一生俺の下僕だからな。覚悟しておけよ」


 思わず、よよと足元に手をついて項垂れる。

 ……あぁ、こんな鬼畜なご主人様に虐げられて一生送るなんて、私ってばなんてかわいそう……なんて薄幸の美少女……。


「なんだ、急に黙り込んで。俺に一生仕えられることが、光栄過ぎて言葉もでねぇのか?」

「……悪夢だ。地獄だ。拷問だ」

「……ほぉ。ご主人様にんな生意気な口きくのは、この口か? あぁん?」

「いはひいはひいはひ!」

 ちょ、私のぷりちー白ほっぺが、再び悪魔の手に……!!!
 痛い、痛い! ちょ、それ以上もう伸びないからぁ! 千切れてしまうからぁ!

「……なんや、音する思うて来てみたら。ルクレア様来てはったんか」

 突然開いた側方の扉から、キエラが現れる。部屋着なのか、スウェットを思わせる非常にラフな格好だ。
 キエラはちょっと黙り込んで、最初にデイビッドに、続いてほっぺを引っ張られて悶える私に、それぞれ視線を送ってから、人差し指で自らの頬をぽりと掻いた。

「……なんか自分ら、滅茶苦茶仲えぇな」


 ――その認識は、激しく間違っていると思うっっ!!!!




 平日の放課後。間近に迫ったテストに向けて、必死に学習する生徒たちの中で、一人悠々と読書にいそしむ少年がいた。

 少年の名は、ダーザ・オーサム。

 天才児と声高に誉めさえられる彼には、テスト前の学習など不要であった。テスト前に焦らずとも、普段の学習だけで簡単に上位の成績が取れる。
 少年にとってはテストの成績よりも、今夢中になっている恋愛小説の続きの方がよほど大事だった。

 果たして、小説のヒーローは、ヒロインに愛を受け入れてもらえるのだろうか。
 大人しくて内気な主人公は、どこかあの人にも似た、毒舌で好き嫌いが激しいヒロインに、認めてもらえるのだろうか。
 まるで自らの恋の行方を占うかのようなストーリー展開に、鼓動が高鳴り、自然、ページをめくる手が早くなる。

 夢中で文字を負う少年に、忍び寄る一つの影。
 影は、少年のすぐ隣の席に腰を降ろすと、読書に集中するあまり、影の存在すら気づいていないダーザの耳に口元を寄せた。

「……ダーザ・オーサムくん?」

 愉しい時間の邪魔をされたことに不愉快そうに眉を顰めて顔をあげたダーザだが、影の顔をみた瞬間、顔面を蒼白にして、持っていた本を取り落とした。

 ひ、と小さい悲鳴が喉の奥から洩れる。

「少し話があるのだけど、付き合ってくれるかしら?」

 影こと、デイビッドは、そんなダーザの反応に満足げな笑みを浮かべながら、強引にその手を取った。



 ……そして、そんな彼らを本棚の片隅でひっそり観察する、私。

 いーど。いーど。ナイス、デイビッド!

 まずは、二人きりで話をするところから始めなくては。


 私は自身の唇を舐めると、にいと笑って一人、拳を握った。


「……ダーザ編特別ミッション【愛と憎しみは紙一重】スタート!」

 さぁ。いっちょダーザを、デイビッドに夢中にさせたろーじゃないかい。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

痩せすぎ貧乳令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 とあるお屋敷へ呼ばれて行くと、そこには細い細い風に飛ばされそうなお嬢様がいた。 お嬢様の悩みは…。。。 さぁ、お嬢様。 私のゴッドハンドで世界を変えますよ? ********************** 転生侍女シリーズ第三弾。 『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』 『醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』 の続編です。 続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。 前作も読んでいただけるともっと嬉しいです!

だってお義姉様が

砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。 ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると…… 他サイトでも掲載中。

悪役令嬢が死んだ後

ぐう
恋愛
王立学園で殺人事件が起きた。 被害者は公爵令嬢 加害者は男爵令嬢 男爵令嬢は王立学園で多くの高位貴族令息を侍らせていたと言う。 公爵令嬢は婚約者の第二王子に常に邪険にされていた。 殺害理由はなんなのか? 視察に訪れていた第一王子の目の前で事件は起きた。第一王子が事件を調査する目的は? *一話に流血・残虐な表現が有ります。話はわかる様になっていますのでお嫌いな方は二話からお読み下さい。

家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。

木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるエルミナ・サディードは、両親や兄弟から虐げられて育ってきた。 その結果、彼女の性格は最悪なものとなり、主人公であるメリーナを虐め抜くような悪役令嬢となったのである。 そんなエルミナに生まれ変わった私は困惑していた。 なぜなら、ゲームの中で明かされた彼女の過去とは異なり、両親も兄弟も私のことを溺愛していたからである。 私は、確かに彼女と同じ姿をしていた。 しかも、人生の中で出会う人々もゲームの中と同じだ。 それなのに、私の扱いだけはまったく違う。 どうやら、私が転生したこの世界は、ゲームと少しだけずれているようだ。 当然のことながら、そんな環境で歪むはずはなく、私はただの公爵令嬢として育つのだった。

転生悪役令嬢は冒険者になればいいと気が付いた

よーこ
恋愛
物心ついた頃から前世の記憶持ちの悪役令嬢ベルティーア。 国の第一王子との婚約式の時、ここが乙女ゲームの世界だと気が付いた。 自分はメイン攻略対象にくっつく悪役令嬢キャラだった。 はい、詰んだ。 将来は貴族籍を剥奪されて国外追放決定です。 よし、だったら魔法があるこのファンタジーな世界を満喫しよう。 国外に追放されたら冒険者になって生きるぞヒャッホー!

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

【完結】攻略を諦めたら騎士様に溺愛されました。悪役でも幸せになれますか?

うり北 うりこ
恋愛
メイリーンは、大好きな乙女ゲームに転生をした。しかも、ヒロインだ。これは、推しの王子様との恋愛も夢じゃない! そう意気込んで学園に入学してみれば、王子様は悪役令嬢のローズリンゼットに夢中。しかも、悪役令嬢はおかめのお面をつけている。 これは、巷で流行りの悪役令嬢が主人公、ヒロインが悪役展開なのでは? 命一番なので、攻略を諦めたら騎士様の溺愛が待っていた。

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

処理中です...