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ダーザ・オーサムというショタキャラ

ダーザ・オーサムというショタキャラ5

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「……はぁ」

 昼休みの図書館イベントを終了し、午後の講義を終了した私は思わずため息を吐いた。
 ……やはりどう考えても完全にマシェルルート入ってしまってるよね……。あぁ、どうしよう。
 なんかものすげぇ落ち着かないんだが。

 誰かに想いを寄せられるということは、もっといい気分だと思っていた。
 優越感たっぷりで、「いやん、私ってばまじリア充じゃね? いい女じゃね?」と鼻の穴を膨らませることだと思っていた。
 だけど、実際体験してみて分かった。私、そんな簡単に割り切れるには、喪女期間が長すぎる。そして誰かに、特に好きでもない誰かに想いを寄せられる事態、完全にキャパオーバーで処理できない。荷が重い。

 ……なんだろう。このすげぇ罪悪感。
 別にさ、告白されたわけじゃないんだよ? ただマシェルが私のこと好きかもって、それだけなんだよ?

 なのに、同じだけの想いを返せない自分が、超悪人みたいに感じて仕方ないんだが。

 ……あぁ、だから少女漫画のヒロインって大抵鈍感に描かれてんだな。明らかのフラグも、なんでこれで見過ごしちゃうん? 馬鹿じゃね? ……って思ってたけど、いちいち脇キャラのフラグにヤキモキしてたら、ヒーローとの恋愛進まないもんな。逆ハー展開とかだったら、マジ大変だもんな。

 ……あぁ、今、切実に鈍感系ヒロインになりたい……っ!
 それか、モテモテ系女王様思考になりたい……っ!

 さもなくば、マシェルのフラグ今からでもぶっ潰して無かったことにしたい。……あれ、でもそれって幻滅されちゃうってことだよね。せっかく想いを寄せてもらっているのに、嫌われちゃうってことだよね。

『お前を見掛けたら、私はお前に話しかけにいく。だから、お前もそのつもりでいろ――ルクレア』

 脳裏に昼に言われたマシェルの言葉が浮かび、思わず赤面する。

 どうしよう。今までのマシェルだったら、嫌われても全然平気だったのに、あのセリフ聞いちゃったら嫌われたくないと思ってしまう……っ!

 あれ、でも私別にマシェルに恋に落ちたとかそういうわけではないよな? え、これ、「私はあなた好きじゃないけど、あなたは私を好きでいてね」とかいうビッチ思考? え、私けして自分は性格いいと思っていなかったけど、流石にそれひどくね?

 ……でも、やっぱりマシェルと私ってどう考えても合わないよな。付き合うとか、正直考えられないし……。

 あぁ、もう、全て無かったことにしたい!面倒くさい!

 頭の中で思考がぐるぐるぐる回る。正直このせいで、午後の講義まともに耳に入ってこなかった。……あかん。テストも近いのに。切り替えなきゃ。
 分かっているのに、気が付けば思考回路はマシェルのことを考えてしまう。
 ……なんか知恵熱出そう。

「……おねぇ……ルクレア様。気分が悪いのですか?ずっと表情が優れませんけど」

 不意に掛けられた声に、我に返った。
 顔をあげるとそこには心配そうに覗きこむ、我が心のオアシスこと砂糖菓子ちゃん。
 私は慌てて「ルクレア・ボレア」の顔を貼りつける。

「……いえ、何でもありませんわ」

 しかし私の言葉に、トリエットの眉毛はへにゃんとハの字に垂れる。

 ……あぁ、私の砂糖菓子よ。そんな悲しげな顔はしないでおくれ。

「何でもないようには、とても、見えません……ルクレア様。私には言えないようなことですか……?」

「……いえ、そういうわけではなくって……」

「もし、悩みがあるなら、どうか私にお話し下さい。何か、お姉さまのお役に立てるかもしれません」

 ……どうでもいいが、今完全にお姉さまって言ったよ。トリエットちゃん。もう密かになんて呼んでるかバレバレだから、いっそ統一してくれ。

 ……しかし、さてどうするかね。
 脳内には、ピコンとゲームの選択肢が浮かんでいる。

 相談する ←
 相談しない

 はてはて、この選択次第で、私のマシェルルートの展開は変わるんだろうか。既にゲームから逸脱した展開であり、そしてこれはあくまで現実だから、これがきっかけでどうなるかなんて見当もつかない。

 だが、しかし。

 このまま思い悩んでいては、私が目指す「ルクレア・ボレア」像が崩壊してしまう恐れがある。実際、図書館イベント時には色々崩壊して素の私になっていた。これは、いかん。

 ……ぐちぐち悩んでいてもしゃああんめぇ。
 えぇい、ままよ。

「――トリエット。貴女は、何とも思っていなかった異性に、愛を告げられたことはあるかしら」

 トリエットちゃんに、相談してまえ……っ!
(でも、想いを寄せられた程度で悩んでいるとは思われたくないから、その辺は盛っておこう。そうしよう)
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