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もう一人の転生者1

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「いや……その、王様に手を出す気とか全くないんで」

「……え?」

 え……って。なんでそんな驚くの。

「身分差やばいですし、そもそも今日初対面ですし。その前に既婚者に手を出すわけないじゃないですか。……王様だって私に関心0でしたから、変な心配しないでください」

「嘘つかないで! あんなに格好よくてお金持ちで、醒めているように見えてその実、情熱的で。けれどちょぴっと意地っぱりで、かわいい人を、貴女のような逆ハー狙い女が身分差とか既婚者とか気にしてターゲットにしないわけないじゃない!!!」

 ひでぇ信用のなさというか。逆ベクトルに変な信用されてるというか。
 てか、さらっとのろけてないかい? この人。

 仮に身分が同等で、既婚者じゃなかったとしても……正直あの初対面で恋に落ちろって言う方が難しいんだけどな。

「ターゲットも何も……私、王様のこと何も知らないので」

「ゲームをプレイしたでしょ!?」

「プレイしてないんです」 

「……………へ?」

 素っ頓狂な声をあげて固まるマリアさんを、どうか信じてくださいという思いをこめて、まっすぐ見つめる。

「ここがゲームの世界だってことは何となくわかるんですけど……私前世でゲームとか全然したことなかったので、王様のことはもちろん、逆ハー?云々の意味もわからなくて」

 私の言葉にマリアさんはあんぐりと口を開けた。

「え…………マジで?」

「(あ、前世っぽい言葉出た)マジです」

「ハート赤くしまくってるのに?」

「よくわからないですけど、なんか普通にしてたら、勝手に赤くなりました」

 次の瞬間、マリアさんはすさまじいスピードで地面に突っ伏した。

 え、ちょ!?

「ま、マリアさん!?」

「--まさか、天然逆ハー体質のパンピー様とは知らず、失礼致しました!!!」

 ど、土下座しおった!?

「変な疑いをかけてしまい申し訳ありません! 貴女はただ何も知らずに、天然のまま周囲を落としまくっていただけだったのですね! 性悪扱いをしたことは心から謝罪致します!」

「ちょ、王妃様、やめてください!」

「私めは王妃の皮をかぶった、ただのしがない乙女ゲーオタクですので、どうかマリアとお気軽にお呼びください。こんなひどい態度を取っておいてずうずうしいお願いなのは百も承知ですが、どうかどうか陛下には近づかないでいただけないでしょうか。ゲーム知識を使って無双しただけの私のような陰キャオタクじゃ、逆立ちしても天然逆ハーヒロイン様には敵いません。でも私は陛下を愛してるのです。陛下も私の過去も本質も全てを知った上で私を受け入れてくださったのです。来年には子どもも生まれそうです。どうか今さら私たちを引き裂かないでください」

「近づかない、近づきませんから!!」
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