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セルドアイベント?22

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 私の言葉に、目を見開いたまま硬直していた姉さんは、しばらくの沈黙の後唇を震わせた。

「……どうして……どうして、今の流れで私を大好きだなんて言えるの?」

 腕は姉さんの背中に回したまま、そっと身を離して姉さんの顔を覗き込む。
 姉さんは、置いてかれた少女のような表情で、私を見ていた。

「今の話がリッカの本心なら……私のしたことは、貴女にとって大きなお世話にもほどがあるじゃない……貴女の望みを打ち砕いた相手に、何でそんなことを言えるの?」

「だって……それも全部、私のことを思ってしてくれただけでしょ?」  

「っ……違うわ!」

 姉さんはくしゃりと顔を歪めて、叫んだ。

「……貴女の為じゃなく、私の為よ! 私が、不甲斐ない自分の罪悪感を消したから、貴女は本心では養コカトリス場の跡を継ぎたくないって決めつけて、無理やり貴女の進路を奪ったの! 貴女が傷つく姿を見たくなかったから!」

 姉さんはぼろぼろ涙を流しながら、しゃくりあげながら、痛い程に私の体を抱き締めた。

「っ知っていたわ! 本当は、これが私のエゴだなんて、気づいてた! 貴女が本当に本当に、コカトリスのことも、家の仕事を手伝うことも好きかもしれないってことも、本当は心のどこかで気づいてたわ!」

「姉さん……」

「でも嫌だったの! こんなに……こんなに小さな体で、リッカがいつ負傷するか分からない危険な仕事をし続けるのを、見たくなかったの……! だから、リッカの幸せは、この養コカトリス場を出ることなんだって思おうとしたの!」

 ごめんなさい
 ごめんなさい
 ごめんなさい

 何度も何度も謝罪の言葉を口にして、私の胸に顔を埋めながら泣く姉さんの体を、抱き締める。

 優しくて、綺麗な人。
 大好きな、私の姉さん。 

 そんな人を、こんなにも傷つけてしまったことに、罪悪感を抱かないかと言えば嘘になる。

 でも、また謝罪の言葉を口にするのは、間違ってる気がして。

「……姉さんは自分の為だっていうけど、それでも私のことを思ってくれたことには変わりないよ。私の心配をしてくれてたのでしょ?」  

 こつんと、姉さんの額に自分の額を合わせて、めいいっぱいの思いを口にする。

「ありがとう。姉さん。……やっぱり私は、姉さんのこと大好きだよ」

 私を愛し、思ってくれている姉さんに、めいいっぱいの感謝の言葉を。
 
 
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