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セルドアイベント?15

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 気がつくと、懐かしい鶏舎に立っていた。
 一瞬実家のコカトリス舎に来たかと勘違いしたけど、足元で動き回る小さな鶏たちが、ここが前世の世界であることを教えてくれた。

「……すごい、本当に戻って来た……」

 あたりを見渡しても、セルドアの姿はない。けれど不思議と魔術を失敗したとは思わなかった。
 何ていうのだろう……セルドアの気配が、体全体を包んでいるというか。
 きっと今、セルドアはあの世界から、私を見守ってくれてる。何故どかそう、確信できた。

「あ、あれは……」

 あの後ろ姿。それに、ちらっと見えた横顔。
 間違いない……父さんだ。
 梨花だった私から死んでから、もしかしてこっちの世界では全然時が経ってないのかな。

 懐かしくて、涙が滲んできた。

 なんて、声をかければ良いんだろう。
 今の姿で父さん、私のこと気づいてくれるかな。不審人物と思われないかな。……そもそも私の姿が見えるんだろうか。

「--父さんの馬鹿!!」

 ……って、え? え?

「私が、ここを継ぎたくないなんて、どうして決めつけるの? 私の幸せを、父さんの基準で勝手に決めないでよ! 私はここで鶏の世話をするのが、すごくすごく好きなのに!」

 何で父さんの前に私が……加藤梨花が、立っているの?

「っそれは、お前が外の世界を知らないからっ……」

「外の世界を知った父さんは、それでもここを継ぐことを選んだよね? 自分の選択を否定するわけ?」 

「それは……俺が長男だから」

「それじゃあ、私は長女で跡取り娘だよ! 何で自分がしたことを娘にさせてくれないわけ? おかしいでしょう!」

 まるでパラレルワールドに迷いこんだような気分だった。
 あの時私が我慢して言えなかった言葉を、目の前の私は父さんにぶつけている。

 ……いや、父さんじゃない。

 この人は、もしかしなくても。

「父さんがなんと言おうと、私はこの家を継ぐからね! もう決めたの!」

「梨花子!!」

 そのまま走り去って行ってしまった少女を、しばらく呆然と見送ってから、その人はため息を吐いて胸ポケットから写真を取りだした。
 
 ……この写真、知ってる。
 事故で死ぬ、少し前の誕生日。
 お前も、少しは夜遊び覚えるといいって、いきなり車で連れ回された時に撮った奴だ。
 正直呆れたし、かなり迷惑だったけど、でも全力で誕生日を祝おうとしてくれたのは嬉しくて。
 「次実家へ行く時は、もっといいプレゼント持って来てやるから」ってでっかいぬいぐるみくれて……今思えばあのプレゼントって進路の自由のつもりだったんだろうけど……思わず笑ってしまった時、不意打ちで撮られた写真。

「もしかして……お前も同じ気持ちだったんかな。梨花」

 老けて髪の色も落ち着いて、父さんにそっくりになったけど間違いない。

「……兄、ちゃん」
 
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