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ハルクイベント20

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「……嫌がらせ、か。ああ、そうだな。大した嫌がらせだ。さすがはガキのオレだ。なかなか性格が悪い。オレの痛いところを的確についてくる」

「は、ハルクー? 大丈夫ー?」

「……ああ、腹が立つ。仕返ししたくても、ガキのオレは、オレん中にしかいない。これじゃあ、オレばっかり、やられっぱなしじゃないか」

 額から手を離し、ゆらりと立ち上がったハルクの姿に、思わず体が跳ねた。

 --目が、目が、すわってらっしゃる……!

「は、ハルクさん……?」

「……ふざけるなよ。くそっ……」

 ……なぜ、そこで私に近づいて来るのでしょう。
 何故か、怒りの矛先が子どもハルクではなくて、私に向いている気がするのですが、気のせいでしょうか。

「っ痛いいだいいだい……っ! 何故私は今、顎の辺り掴まれてハルクさんの方にむかされているのでしょうか」

「うるさい。お前は黙ってろ」

 理 不 尽!

 抗議しようと口を開いた瞬間、ハルクの顔が視界いっぱいに飛び込んできた。

「--お前も、少しは困ればいいんだ」

 唇の、すぐ脇。
 掠めそうなくらい近い所に柔らかい感触がした。

「え………」 

 一瞬、時間が止まった気がした。
 ゆっくり離れていくハルクの顔を呆然とただ眺める。

「……なに、今の」

 ハルクはふんと鼻を鳴らして、舌を出した。
 子どものハルクはけして浮かべないような、憎たらしい大人の表情で。

「……『嫌がらせ』に、決まってるだろ」

「なっ……」 

「……これに懲りたら、せいぜいオレを意識すればいいんだ。オレはお前よりずっと年上の、成人した男なんだから」

 --じゃないと、お前、本当に後悔することになるかもしれないぞ。

 そう囁くハルクの声が、何というか--ひどく「大人」で。

 思わずドキリと心臓が跳ねた。

「それってどういう……」

「--リッカー。おきたらいないとか、ひどいよ!」 

「--……すまん。ベルを鳴らしても反応がなかったから、また勝手に」
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