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ハルクイベント16
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だって、あの時ハルクは言ったから。
『馬鹿なことを聞くな。チビガキ。後悔なんかするはずないだろ。ーー後悔なんかするくらいなら、最初から植物学者を目指したりしない』
眩しいくらい、はっきりと。眼差しに強い意志を宿して。
『あの日、オレは親父とじいさんに言ったんだ。『植物学者を目指すことは、神話を否定することになるかもしれないが、リハニーア教の本質的な意義を汚すものではない』と。『リハニーア教とは違う視点で植物を追求することで、自分は宗教とは別の方向から人を救ってみせる』と宣言したオレの言葉を、親父は戯れ言だと吐き捨てたが、じいさんは受け入れてくれたよ』
『あの時の誓いは、今も変わらずオレの胸にある。……そしてオレの研究は、少なからず人間が生きていく上で役に立っているという自負もな。後悔なんぞ、してたまるか』
「……それは、本当に正しい選択なのでしょうか」
寸分変わらない姿なのに、ハルクはあの時はなかった迷いを眼差しに宿して、目を伏せる。
「誰かを……家族を傷つけることになってでも、自分の選択を突き進むことは、本当に?」
幼い精神のハルクの口から出る言葉は、まさに私が胸に抱える葛藤と同じ。
だから、私はそれが正しいだなんて、言ってあげられない。
……けれど。
「正しいか間違っているかなんか分からないけど……私は『後悔しない』覚悟を胸に宿して、自分の道を選んだ大人のハルクを、眩しいと思うよ。尊敬、していて……すごく、好きだな」
選択肢を選びとれないままに逃げている私が言えるのは、ただそれだけだ。
私はハルクを好きで……そんなハルクの友人になれたことを誇らしいと思う。
その気持ちだけは、間違ってないと胸を張って言えるから。
『馬鹿なことを聞くな。チビガキ。後悔なんかするはずないだろ。ーー後悔なんかするくらいなら、最初から植物学者を目指したりしない』
眩しいくらい、はっきりと。眼差しに強い意志を宿して。
『あの日、オレは親父とじいさんに言ったんだ。『植物学者を目指すことは、神話を否定することになるかもしれないが、リハニーア教の本質的な意義を汚すものではない』と。『リハニーア教とは違う視点で植物を追求することで、自分は宗教とは別の方向から人を救ってみせる』と宣言したオレの言葉を、親父は戯れ言だと吐き捨てたが、じいさんは受け入れてくれたよ』
『あの時の誓いは、今も変わらずオレの胸にある。……そしてオレの研究は、少なからず人間が生きていく上で役に立っているという自負もな。後悔なんぞ、してたまるか』
「……それは、本当に正しい選択なのでしょうか」
寸分変わらない姿なのに、ハルクはあの時はなかった迷いを眼差しに宿して、目を伏せる。
「誰かを……家族を傷つけることになってでも、自分の選択を突き進むことは、本当に?」
幼い精神のハルクの口から出る言葉は、まさに私が胸に抱える葛藤と同じ。
だから、私はそれが正しいだなんて、言ってあげられない。
……けれど。
「正しいか間違っているかなんか分からないけど……私は『後悔しない』覚悟を胸に宿して、自分の道を選んだ大人のハルクを、眩しいと思うよ。尊敬、していて……すごく、好きだな」
選択肢を選びとれないままに逃げている私が言えるのは、ただそれだけだ。
私はハルクを好きで……そんなハルクの友人になれたことを誇らしいと思う。
その気持ちだけは、間違ってないと胸を張って言えるから。
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