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ハルクイベント11

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 ハルク(精神子どもver)は少し考えたあと、眉をハの字に垂らした。

「お茶をごちそうになった上で、こんなことを頼むのは恐縮ですが、マンドラゴラの叫びの効果が切れるまで暫くここでお世話にならせて頂けないでしょうか。大人の僕と違って今の僕には生活能力がありません。何せ家事等は全て使用人に任せて、司教になる為の勉強ばかりして来たもので。大人の僕の研究資料を見る限り、恐らく効果は数日中に切れますので」

「あ、はい。それは喜んで」

 ……元はと言えば、ハルクがこうなったのは私をかばったからだし。そのくらいはもちろん、責任取らせていただきますよ。

 私の言葉にハルクはパアっと顔を輝かせた。

「ありがとうございます! お姉さん、お名前は?」

「あ、リッカです」

「リッカさんですね。僕がやれることなら何でもお手伝いしますので、どうかよろしくお願いします!」

 そう言ってぺこりと頭を下げる姿は、どう見ても礼儀正しいショタにしか見えなくて。

 ……これ、下手したら子どもバージョンのハルクのが、今より精神年齢高くない? 何がどうしてああなったし。

「……リッカさん?」

「……ああ、ごめん。ごめん。つい」

 思わず頭を撫でてしまった私は、多分悪くない。



「……はー。マンドラゴラの叫び声による、精神退行かあ。面白いね。そんなこともあるんだね」

 夕方。いつものように尋ねて来たパックさんは、夕飯のカレーを口に運びながら、興味深そうに様子の違うハルクを眺めてため息を吐いた。

「まあ、ハルクが品種改良した種だし、そう長く効果は継続しないとは思うけど……それにしても、今までのマンドラゴラの叫び声の効果とは違い過ぎてびっくりするね」

「そうなんですよ! 僕としてはやっぱりその辺りは環境要因の方が強いのかな、って思います。土壌が特殊なのか、育てたリッカさんが特殊なのか現段階では判別できませんが」
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