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パックイベント1

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「リッカちゃんー?」

 夕方、いつものように家にやって来たパックさんに呼びかけられて、ハッと我に返る。
 ……まずい、完全に意識飛んでた。

「……ごめんなさい。パックさん。完全に意識飛んでました」

「僕こそ、いくらチャイムしても返事がなかったからって勝手に中入ってごめんねー。もし、中で倒れてたりしたらって心配だったんだ」

「い、いえ!パックさんは何も悪くないです!」

 チャイムの音なんか、全然気がつかなかった。
 それくらい、豹変したルートさんがあまりに衝撃的で。

 ……ねえ、あれ、本当にルートさんなんだよね?
 実は双子の弟でしたー……なんてオチがあったり……するわけないか。うん、分かってる。
 ……でも、なんかまだ信じられないんだよな。うん。

「またなんか考え込んでいるところ申し訳ないんだけど……なんか、焦げくさい気がしない?」

「え……あ、シチュー!」

 今日はお菓子作りなんかする余裕なかったから、パックさんにメッセージ送って夕飯一緒に食べることにして、簡単なシチューとサラダ作ってたんだけど、シチューを火にかけっぱなしだったのをすっかり忘れていた。
 慌ててキッチンに駆け込むが、時は既に遅し。
 弱火でとろとろ煮込んでいたから被害は少なかったけど、それでも底の方が焦げついてしまっていた。

「……食べれなくはないけど、全体的に焦げくさくなっちゃった」

 自分が食べる分には許容範囲ではあるけれど、とても人様に食べさせられるようなものじゃない。
 ……また一から作りなおすしかないかなあ。これじゃあ。

「あらら。やっぱり焦げちゃってた?」

 私を追って、ひょいと鍋をのぞき込むパックさんにとても居たたまれない気持ちになる。
 ……うう、せっかく夕飯に来てくれたのに申し訳ない。

「……すみません。今から作り直します」 

「ええ、焦げついたの底だけでしょ? いいよ。勿体ない」

「でも全体的に焦げくさい感じで……」

 パックさんは私の言葉に少しだけ考え込んだあと、ちょっといたずらっぽい表情で笑った。

「……ねえ、リッカちゃん。チーズと、パスタある? マカロニとかショートパスタならありがたいんだけど」
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