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ルートイベント16

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 そう言って、ルートさんは自分の分のご飯を口に運んだ。

 「……相変わらず美味いな。そう気づけたのは、恥ずかしながら最近の話だがな」

「? どういう意味ですか」

 こんな美味しいご飯を毎日口にしているはずのルートさんが、いったい何を言いだすんだ。
 目を瞬かせる私に、ルートさんは苦笑いを浮かべるように顔を少しだけ歪めた。
 
「……リッカと朝食を共にするようになるまでは、俺は食に関してはひどくおざなりだったからな。ドラゴンに関する知識の習得に夢中になるあまり、せっかく用意してもらった食事を抜くこともしょっちゅうだった」

 ……うわあ。なんて、もったいない。
 私の適当料理と違って、お金も手間もめちゃくちゃかかってるだろうに。

「幼少期からずっとそうだったからな。自分の為に料理を準備してもらって、提供されるのをいつの間にか当たり前のように思っていたんだ。陰で料理人がどれ程労力を割いているかにまで、想像が至らなかったんだ。……だが」

「だが?」

「俺の為に毎朝朝食を準備してくれるリッカの様子を間近で見ていたら、考えが改めさせられたんだ。リッカ同様に、屋敷の料理人も俺の為にいつも食事を用意してくれたんだと気づいたら、それ以降用意してくれた料理をおざなりにできなくなった」

 ……私の、適当おざなり朝ご飯で? え、なんで? そんなに労力かけてないよ。生卵かけご飯の時とか普通にあったし。
 ……………あ、そうか。家が狭くて、台所作業の様子が丸見えだからか。でっかいお屋敷だと、食べる所と作る所が離れているから、料理している用意とか見えないもんなー。だからこそ、ボンボンルートさんの目には、私の用意する朝ご飯が新鮮に写ったと。

 うーん。複雑。喜んでいいのやら、ルートさんの屋敷の料理人さんに申し訳ないやら。


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