上 下
227 / 336

ルートイベント4

しおりを挟む
 そう言ってラドはしばらく黙り込むと、さらにぎゅっと強く裾を握った。(ああ、皺になる……まあ、服も支給品なんで良いんだけど)

「……ぼくも、いこっかな」

「無理だよ。禁止されてるでしょ?」 

「でも……」

「でも?」

「……………ルート、むっつりだとおもう。りっか、あぶない」 

「っぶ!!」

 思わず激しく噴き出しそうになって、慌てて笑いを飲み込んだ。

 ……むっつり! 確かにルートさん、むっつりスケベっぽい雰囲気あるけどさ!

「大丈夫。大丈夫。あの人は女の子の興味<<<【越えられない壁】<<<ドラゴン愛な人だから。ラドが心配するようなことは、何もないって」

「でもルート……さいきん、りっか、じっとみてる。きもちわるい」

 相変わらず、ルートさんには特別辛辣だね。されていることはストーカーに近いから仕方ないかもしれないけど。

「心配しないでよ。ルートさんは、確かにドラゴンに関しては変態じみてるけど、れっきとした貴族出身の王宮騎士なんだから。ご飯をごちそうになるだけで、それ以上の意味はないってば」

 …………そう言って、不審げに顔をしかめるラドを言い含めたわけだけど。



「ルートの家で食事!? そんなことを了承して、無理やり手篭めにされでもしたら、どうするんですか! 今からでも遅くないから、すぐ断ってください」

 予想はしてたけど……案の定シスコンこじらせなセルドアの反応の方がさらに面倒くさかった。
 前世の兄ちゃんの経験則からして、こうなるのが目に見えてたからあんまりセルドアに言いたくなかったんだけど、よりにもよって誘われたのが昼だもんなあ。毎日昼になると嬉々としてうちに来るセルドアに(魔術師長ってそんなに暇なんだろうか……)言わないわけにもいくまい。後が怖い。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。

木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるエルミナ・サディードは、両親や兄弟から虐げられて育ってきた。 その結果、彼女の性格は最悪なものとなり、主人公であるメリーナを虐め抜くような悪役令嬢となったのである。 そんなエルミナに生まれ変わった私は困惑していた。 なぜなら、ゲームの中で明かされた彼女の過去とは異なり、両親も兄弟も私のことを溺愛していたからである。 私は、確かに彼女と同じ姿をしていた。 しかも、人生の中で出会う人々もゲームの中と同じだ。 それなのに、私の扱いだけはまったく違う。 どうやら、私が転生したこの世界は、ゲームと少しだけずれているようだ。 当然のことながら、そんな環境で歪むはずはなく、私はただの公爵令嬢として育つのだった。

完 あの、なんのことでしょうか。

水鳥楓椛
恋愛
 私、シェリル・ラ・マルゴットはとっても胃が弱わく、前世共々ストレスに対する耐性が壊滅的。  よって、三大公爵家唯一の息女でありながら、王太子の婚約者から外されていた。  それなのに………、 「シェリル・ラ・マルゴット!卑しく僕に噛み付く悪女め!!今この瞬間を以て、貴様との婚約を破棄しゅるっ!!」  王立学園の卒業パーティー、赤の他人、否、仕えるべき未来の主君、王太子アルゴノート・フォン・メッテルリヒは壁際で従者と共にお花になっていた私を舞台の中央に無理矢理連れてた挙句、誤り満載の言葉遣いかつ最後の最後で舌を噛むというなんとも残念な婚約破棄を叩きつけてきた。 「あの………、なんのことでしょうか?」  あまりにも素っ頓狂なことを叫ぶ幼馴染に素直にびっくりしながら、私は斜め後ろに控える従者に声をかける。 「私、彼と婚約していたの?」  私の疑問に、従者は首を横に振った。 (うぅー、胃がいたい)  前世から胃が弱い私は、精神年齢3歳の幼馴染を必死に諭す。 (だって私、王妃にはゼッタイになりたくないもの)

悪役令嬢はお断りです

あみにあ
恋愛
あの日、初めて王子を見た瞬間、私は全てを思い出した。 この世界が前世で大好きだった小説と類似している事実を————。 その小説は王子と侍女との切ない恋物語。 そして私はというと……小説に登場する悪役令嬢だった。 侍女に執拗な虐めを繰り返し、最後は断罪されてしまう哀れな令嬢。 このまま進めば断罪コースは確定。 寒い牢屋で孤独に過ごすなんて、そんなの嫌だ。 何とかしないと。 でもせっかく大好きだった小説のストーリー……王子から離れ見られないのは悲しい。 そう思い飛び出した言葉が、王子の護衛騎士へ志願することだった。 剣も持ったことのない温室育ちの令嬢が 女の騎士がいないこの世界で、初の女騎士になるべく奮闘していきます。 そんな小説の世界に転生した令嬢の恋物語。 ●表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_) ●毎日21時更新(サクサク進みます) ●全四部構成:133話完結+おまけ(2021年4月2日 21時完結)  (第一章16話完結/第二章44話完結/第三章78話完結/第四章133話で完結)。

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)

私の婚約者は6人目の攻略対象者でした

みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
王立学園の入学式。主人公のクラウディアは婚約者と共に講堂に向かっていた。 すると「きゃあ!」と、私達の行く手を阻むように、髪色がピンクの女生徒が転けた。『バターン』って効果音が聞こえてきそうな見事な転け方で。 そういえば前世、異世界を舞台にした物語のヒロインはピンク色が定番だった。 確か…入学式の日に学園で迷って攻略対象者に助けられたり、攻略対象者とぶつかって転けてしまったところを手を貸してもらったり…っていうのが定番の出会いイベントよね。 って……えっ!? ここってもしかして乙女ゲームの世界なの!?  ヒロイン登場に驚きつつも、婚約者と共に無意識に攻略対象者のフラグを折っていたクラウディア。 そんなクラウディアが幸せになる話。 ※本編完結済※番外編更新中

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした

風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。 一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。 平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません! というか、婚約者にされそうです!

悪役令嬢に転生した私は断罪ルートを回避するためにお兄様と婚約します

平山和人
恋愛
私こと、クロエ・コーネリアは、15歳の誕生日に前世の記憶を思い出した。クロエは全てのルートでヒロインの恋路を邪魔する悪役令嬢として登場する。 どの攻略対象ルートでも容赦なく断罪されて、国外追放や奴隷墜ちなどの惨めで悲惨な末路を辿る運命にある。しかも、ギロチン送りになる第一王子ルートに転生してしまった。 このままではまずいと、私は頭をフル回転させて考えた結果、ある考えが浮かんだ。悪役令嬢はヒロインの恋のライバルだ。ならば物理的にヒロインのライバルになり得ない立場になれば、私は断罪ルートから回避できるのではないだろうか。 そのために私はお兄様の部屋へと向かった。 お兄様は、実は私の従兄で、本当の兄ではない。ならば婚約できるはずだ。 お兄様は私の申し出を承諾し、婚約することになったのだが、私は気づいていなかった。お兄様がとんでもなく意地悪で腹黒いことを。

処理中です...