転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

人型ラド対ルートさん

　まさに地獄に仏とは、このこと。
　人が悪いだなんて思ってごめんよ！　ルートさん！　服まで想定して持って来てくれるだなんて貴方は神か！

「－－それじゃあ、ルートさん。私コカトリスの世話をしてくるんで、ラドに服を着させてあげてくださあああーい」

　ルートさんの出現で、力が緩んだラドの腕の中からずさっとスライドする勢いで抜けだし、そのまま全てをルートさんに託してダッシュする。

　とりあえず、真っ裸回避成功！
　ルートさんに任せたら、またあとでラドが拗ねる未来は見えているけど、仕方ないよね！　こればっかりは！



　半分魂が抜けた状態で、トリスの世話を終えて（あまりに気もそぞろ過ぎて、うっかり嘴で殺られるとこだった……あぶねえあぶねえ）遊牧もさせてやることがなくなったので、嫌々住居へと戻る。

「……りっか！！」

　戻るなり、案の定半泣きのラドが私にべったり抱きついてきた。
　……よかった。服は着ている。

「ルートさん、ありがとうございます。服を着させてくれたんですね」

「いや、これくらい朝飯前だ。それに、人型のドラゴンがどのような形態をしているか、隅々まで観察できて実に有意義な時間だった」

　うっとりと語るルートさんと、私に抱きついて震えるラド。　
　……頭のてっぺんから、足の先に至るまで、じっくりそれこそ舐めるように観察されたんだね。分かるよ。形態変わろうが、ルートさんのドラゴン愛はぶれないな。

「……さて、次は人型状態での各種サイズと、体重を……」

「……と、その前に、と」　

　このままだったら、ルートさんがどんどんフェチズム暴走させて、以前のようにラドが拗ねまくりそうなので、ここらで一度収束させておこう。後が怖い。

「朝ごはんにしましょうか。……ラドが大好きな、ホットケーキにしてあげるから」　

　……けして朝ごはんに逃げて、現実逃避続行してるわけじゃないよ！　うん、多分！