転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

口がすべった

　心底羨ましそうに呟くルートさん。
　だが、今はそれより、私の現状よく見てくれ。正直わりと限界で、足とかプルプルしてるんですけど。ちょっと気を抜けば、プチッと行くギリギリ加減なんですけど。……頼むから、助けろ。

「……ラド。ステイ、ステイ」

「きゅー？」

「可愛い顔して首をかしげても、これ以上は無理！　いい加減、離れなさい！」

　不承不承という雰囲気ありありで体重をかけるのをやめたラドの腹の下から、息も絶え絶えに脱出する。
　……あー。死ぬかと思った。てか、やっぱりいい加減潮時だよな。

「……まあ、でもこれ以上大きくなったら一緒に生活するのは難しいでしょうから、さすがにドラゴン舎の方移り住んでもらいますよ」　　

「っぴぎゃあ!?」

「…………しょうがないでしょう。ラド。自分のサイズ考えなさい」

　あー……でも、ずっと人間の部屋の中で生活して来たラドには、今さらあのワラだらけのドラゴン舎で生活するのは難しいかな。やっぱり、ワラで寝るよりベッドの方が快適だろうし。お風呂も、今さら水浴びってのはきっと嫌だろうし。

「ルートさん。ドラゴン舎に、ドラゴンが寝れるサイズのベッド置いたり、風呂を置いたりすることは可能ですか？」

「ああ、それは勿論。ドラゴンの育成事業は、国にとって最重要事業だからな。ドラゴンが快適に過ごす為に必要な費用ならば、いくらでも予算は出るぞ」

「だって、さ。ラド。よかったね。これでドラゴン舎に移動しても、快適に過ごせる保障はされたよ」

　私の言葉に涙目でぶんぶんと首を横に振って、体重をかけないようにすり寄るラド。
　……やっぱり、私いないと駄目か。ラドが孵化してからはずっとママ代わりだったもんなあ。
　小さくため息をはいて、その頬をそっと撫でてやる。

「……このくらいの大きさでも、人間だったら一緒に生活できるんだけどなあ」