転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

もう、結婚したらいいじゃないかな

　……ああ、そうか。ハルクはほぼ勘当状態で家を出たから。
　
　そう思ったら、何だか少しだけ胸がつきんと痛んだ。

　体の調子が悪くなると、前世も今世も、家族総出で心配してくれて何かと世話を焼いてくれるのが当たり前で。
　いつだって私は、優しい家族に看病してもらって、甘やかされていた。
　自らの望みを貫くということは、そういう温もりをも捨てることなのだな、と改めて実感させられて。

「……ハルク、その……」

「…………三年前に、うっかり実験中にマンドラゴラの叫びを聞いて死にかけたのを、パックに面倒みてもらって以来だな。こんな経験は」

　……って、家族との思いで違うんかーい。

　思っていたのと違う言葉に、思わずずっこけそうになった。私の無駄なしんみりシリアスモードは、どうすればいいんだ。
　てか、君、本当パックさんに世話になりまくりだよね、改めて。

「……どうした。リッカ。微妙な顔をして」

「（……あ、珍しく名前で呼んだ）……いや、パックさんって良い人だな、って改めて思って」

　その、瞬間。
　まさに、その瞬間だった。
　
「……お前、なかなか見る目あるじゃないか。そうなんだよ。あいつは世話焼きで鬱陶しいところもあるが……本当、いいやつなんだ」

　ハ　ー　ト　の　色　が　緑　に　変　わ　っ　た。

「……ラブラブかよ。君たち」

「うん？　なんか言ったか？」

「いやいや、なんでも」

　パックさんのハートが黄色に変わるタイミングがハルクを褒めた時で、ハルクのハートの色が変わるタイミングがパックさんを褒めた時って……君らお互い大好き過ぎじゃない？　よくわからないけど、恋愛要素もあるゲームの攻略キャラがそんな風に、ライバル？キャラ褒められて喜んでいいの？　
　……もうさ、私のこととかどうでもいいから、二人で結婚しちゃえばいいんじゃないかな。私なんかより、よっぽど相性良いと思うよ。うん。