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不法侵入やむなし

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→ハルクの家に入る
 そのまま帰る

 …………なんかまた、選択肢出てきたけど。普通に考えて、このまま勝手に家入ったら不法侵入だよね。
 ゲームの世界なら、そうやって我が物顔で家主の許可を取らずに歩き回るのも普通かもだけど、一応これ、現実だし。慎む深さが美徳な元日本人としては、勝手に入るわけにはいかないよね。

「……仕方ない。また、出直して……っ!」

 ……わお。タイミングを謀ったかのように、食器が割れるみたいなガシャーンって音と、何かが倒れるようなドサッて音がしたぞ。このまま帰るのも、それはそれで後味悪くなるような音が。
 まさか、私が家に来るのを待ってたわけじゃあるまいな。

「……………」

→ハルクの家に入る
 そのまま帰る

 浮かんでいる選択肢をじっと睨み付けるが、当然ながら正しい答えなんか分かるはずがない。

 ーーええい! ままよ!

「……勝手に家に入るからね! ハルク!」

→ハルクの家に入る

 ………だって、もしハルクの身に何かあったとしたら、見捨てられないじゃん。不法侵入で怒られたなら、謝れば済むだけだしさ。

 ハルクがいないか、きょろきょろと辺りを見渡しながら、勝手に家の中を進んでいく。

「……ハルク? いないの?」

 最初の時に通された客間らしき場所に入るが、そこにもハルクの陰はない。

「……う……うぅ……」

「っハルク?」

 しかし、その奥の部屋からうめき声のようなものが聞こえて来たので、慌ててノブに手をかけた。

「っハルク、大丈夫!?」

 たくさんの乾燥させた植物やら、種やらが棚いっぱいに並ぶその部屋の真ん中で、ハルクはうつぶせに倒れこんでいた。
 傍らには、割れたすり鉢と、散乱する謎の粉末と半分押しつぶされた草。……薬でも作ろうとしていたのだろうか。
 慌てて駈けよって額に手を当てると、案の定すごく熱かった。

「すごい熱あるじゃん! ちょ、ハルク、意識、意識は大丈夫!?」

「うん……チビガキ? ……なんで、ここに……」

「よっし、意識はあったあ! とりあえず、ベッド、ベッド連れてくから!」

 どうやらここは、ハルクの居住スペースも兼ねてるらしく、ベッドはすぐそこにあった。

 ……うん、小柄なハルクなら、私でも全然いける。農筋舐めるな!

「……ふんぬっ!」

「っっっ!?」

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