転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

空飛ぶひよこ

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白い布

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「はあ? いきなり何を……」

 呆れたように私を見たハルクは、次の瞬間ぎょっと目を剥いた。


「おまっ、チビガキ、何急に泣いてるんだ!」

 言われてはじめて、涙が頬に伝っていることに気がつき慌てて拭った。

 ……まずい、今日はもう完全に涙腺が弱くなっている。

 だけど、勝手にこぼれはじめた涙は、拭ったくらいじゃ止まってはくれなかった。

 ーーすごいな。ハルクは。
 家族とやりたいことを天秤に掛けて、ちゃんと自分が進む道を選べたんだ。
 家族と真っ直ぐぶつかることが、できたんだ。

 迷うことなく、後悔なんかするはずがないと言いきる姿が眩しくて、羨ましいと思う。

 私なんか、中途半端で迷ってばっかりだ。
 何が本当に正しいのか分からないままに。  


「………っーー!!!」

 不意にがんとぶつかるような音がして、驚いて顔を上げると、片手を押さえて悶絶してるハルクの姿があった。

「っこのクソ結界が……! おい、チビガキ。今すぐこっちに来い! 結界から一歩こっち側に出て来い!」

 どうやら今度は思いきり手をぶつけてしまったらしいハルクに促され、何だかよく分からないままに結界から一歩外に踏み出す。  

 ……あ、これ、もしかしたら結界入れない腹いせに、結界の外で拘束されるフラグだったりする? ハルクなら、あり得ない話でもないな。

「……すみません。やっぱり私……ぶっ」

 次の瞬間、顔面に白い布が押しつけられていた。

 ま、麻酔薬散布済みの布か? それともクロロホルムか?

 思わず馬鹿なことを考えてしまったが、そのまま眠気が訪れることはなく、ただひたすら目のあたりをごしごしと擦られた。

「…………」  

 ………これ、もしかしなくても、ハンカチで涙を拭ってくれてたりする?

「………………涙は、止まったか」  

「あ……はい。……ありがとうございます?」

 
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