転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

空飛ぶひよこ

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まぶしいな

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 リハニーア教は、植物の知識を教義にしているが、尊ぶのはあくまで実学。大事なのは特定の植物が生きる上で役に立つという結果だけで、その過程を考えることはしない。
 何故、その植物が役に立つのかは追求することなく、代わりにただ母なる植物と、女神リハニーアにただひたすら感謝を捧げる。それがリハニーア教においては当然のことだった。

 けれど、ハルクはそれでは満足できなかったのだという。

「それ以上の知識を追求するのは、神話を否定することになると分かっていた。神話を否定することは、すなわち女神リハニーアと母なる植物を否定することでもある。……それでもオレは、知りたかった。知りたいと思う気持ちを捨てられなかった。たとえ、その結果、家を捨てることになったとしてもな」

「……家族は怒らなかったのですか?」

 私の問いを、ハルクは鼻で笑いとばした。

「怒ったに決まってるだろ。特に親父からは、生まれてはじめて殴られた。当時既に神官長だったじいさんが取りなしてくれたことで、ニーフェイの姓を捨てることまでは強制されなかったが、ほとんど勘当されているも同然だ。実際家を出てから、一度も家族には会っていない」

「…………後悔は、している?」

「馬鹿なことを聞くな。チビガキ。後悔なんかするはずないだろ。ーー後悔なんかするくらいなら、最初から植物学者を目指したりしない」

 そう言ってハルクは、強い瞳で私を見据えた。

「あの日、オレは親父とじいさんに言ったんだ。『植物学者を目指すことは、神話を否定することになるかもしれないが、リハニーア教の本質的な意義を汚すものではない』と。『リハニーア教とは違う視点で植物を追求することで、自分は宗教とは別の方向から人を救ってみせる』と宣言したオレの言葉を、親父は戯れ言だと吐き捨てたが、じいさんは受け入れてくれたよ」

「…………」

「あの時の誓いは、今も変わらずオレの胸にある。……そしてオレの研究は、少なからず人間が生きていく上で役に立っているという自負もな。後悔なんぞ、してたまるか」

 ーーああ。
 
 なんだか、とても。

「………まぶしい、な」

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